2026年2月27日(金)~2月28日(土)
テアトロコント vol.77 渋谷コントセンター月例公演(2026.2)
主催公演
公演詳細
継承されるスピリットと圧倒的な実力
エシャレットの会。聞きなれない名だと思ったら、ココリコ田中直樹さん、ザ・ギース尾関高文さん、ラブレターズ塚本直毅さんという、腕っこきのコント師が結集したユニットと聞き、一も二もなく駆け付けました。見逃したら、生涯、悔やまれると思い…。結論から言うと、その決断は大正解でした。
物語は塚本さんがとある家を訪ねるところから始まります。何らかのお礼か、お詫びに来た様子。現れた住人は大怪我をし、包帯姿が痛々しい、二人の長身オジサン。尾関さんと田中さんです。一体、どういうことなのか?説明台詞が殆どなく、リアルな会話のみで進むので、観客は物語の背景を想像し、注意深く鑑賞しなければなりません。コレがまず、秀逸。観客を作品に集中させるテクニック。作・演出を手掛けた塚本さんの面目躍如といったところでしょうか。
3人の会話に耳を傾けると、塚本さんの子供が道路に飛び出し、それを助けようとして、田中さんと尾関さんが大怪我を負ったという事の経緯が浮かび上がってきます。塚本さんがお礼とお詫びをしたい気持ちはよく分かります。ところが、田中さんと尾関さんの二人は、責任は自分たちにあると言わんばかりに、終始にこやかに対応し、塚本さんの心遣いをやんわりと拒み続けるのです。タイトルに目をやると『優しい家』。その度を超えた優しさに塚本さんは困惑し、何か裏があるのではと勘繰り始めます。結局、その狂気じみた優しさの違和感は最後まで明確に提示されず、観客の想像に委ねられます。カンヌでパルムドールを受賞する、良質な映画のように。
単に笑いを追求するだけでなく、ちょっとした日常のズレとそこに生じる不思議な空気感と不条理を描く。そんなコントにおぼろげな既視感があると思ったら、塚本さんと尾関さんが所属するASH&Dコーポレーションの御大、シティボーイズが纏う空気と酷似していることに気づきました。単なる作風ではなく、コント師のスピリットが時代を超えて継承されていることに感動し、胸が熱くなりました。
塚本さんの台本もさることながら、この作品の質を圧倒的に高めていた、もう一つの要素についても言及しなければなりません。それは、ココリコ田中さんの演技力。テレビコントや映画でも、その才能は既に高く評価されていますが、生で触れると、次元の違いを痛感。そして、強く思いました。もっと多くの舞台に立って、大勢の観客を魅了してほしい。願わくば、エシャレットの会の定期公演で。(市川幸宏)
コミカルないじわるが、「やだな」をたわみに変えるとき
もめんと、金の国、エシャレットの会。この日の3組は、とりわけその「作品」のかたちがコトンとくっきりしているような、何だか真ん中のような3組でした。もめんともエシャレットの会も本当に素晴らしかったのだけど(包帯ぐるぐる巻きの田中さんとんでもなかった)、特に長く観させてもらっている金の国について書かせてもらいます。
テアトロコントで金の国のことを書かせてもらうのは、これが三度目になります。2022年末の公演では“褒められるコントは、人間の格好悪さやままならなさを可愛く見せてくれる。そう仮定した時に、桃沢さんは「別に可愛くない」ことに終始するという残酷さを選んだのかなと思った”と、2023年の秋の公演では“二人は2023年も、その道を虎視眈々と進んでいる”“小さな「やだな」を取っ捕まえて向き合って、コントになるまでとことん煮詰める”“この道がこのまま切り拓かれていって、金の国にしか出来ないことだらけの世界がいつか必ず来る”と、それぞれ書かせてもらいました。
それから今日に至るまで、金の国のすさまじいネタに何度も出会い感動したり(キングオブう大のあのネタとてつもないですよね)、「恭平」としてのおにぎりさんにちょっとハマったり、その傍らでおにぎりさんはXENOになりそしてまたおにぎりさんに戻ったり、と、めくるめく日々がありました(?)。
だけどやっぱり、金の国の根本はずっと変わっていない気がします。常に「やだな」と向き合い続けていて、今回の4本もまさにそんなネタでした。「野球」や「芸能人」を悪意たっぷりのジャスチャーで示す『打ち合わせ』には桃沢さんのコミカルないじわるが散りばめられているし、『カレー屋』にも同じく、ステレオタイプとしての野球部の姿がまんま描かれている。そして演じているのかそのままなのか、野球部をやっている時のおにぎりさんは一際乗っている。コントやお笑い、あるいは演劇が、日常に近いものからの切り取りである必要なんて別にないのだけど、金の国が「やだな」を笑いにしてくれるたび、私の生活には少しのたわみが生まれる気がします。そして久々に観た『新幹線』。隣の席の人のお弁当を落としちゃうお話なのですが、桃沢さんの走る演技が上手すぎる。別のネタにある階段を駆け降りる演技にも言えることなのですが、そういう必死なシーンのリアリティがとびきり高いからこそ、金の国の「やだな」の純度も高く、水を刺されることなく伝わってくるのだと感じました。
さあ、2026年の金の国は、どんな「やだな」を捕まえてきてくれるのだろう。そして春が来ればあっという間に暖かくなり、今年もあっという間にコントの季節が始まるのでしょうか。春の空気といっしょに、こころにいっぱいコントを吸い込める場所を作っておかないといけないですね。(ごとうはな)

