渋谷コントセンター

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2016年1月22日(金)~1月23日(土)

テアトロコント vol.4 渋谷コントセンター月例公演(2016.1)

主催公演

公演詳細

テアトロコント、次のステージ
テアトロコントはどうしてもコント師が不利に置かれる。コントと演劇のボーダーを探るための実験場であるのかもしれないが、お客さんは基本、ただただ単純に笑いに来ている。しかも、客層も演劇ファンが多い事からも、よりコント師に対してはハードルが上がってしまう。そして、コント師と演劇人の笑いへのアプローチ方法もこれまた次元が全然違ってくるであろう事から、刺激が足らない事が多い。これまでテアトロコントを観てきた中で、一番手がボケとツッコミがはっきり分かりやすいコント師、二・三番手が演劇人、四番手が演劇寄りのコント師という構図がイベントとしては一番観やすいだろうとは思うのだが、そうなると一番手のコント師が全てのフリの役割でしかないという問題が起こってしまう。そして今回もそれをどうしてもそれを感じてしまった。誤解無く言うと、一番手のさらば青春の光は面白かった。キングオブコント四年連続決勝進出する実力派であるし、テレビでもよく観るコント師だ。しかも一本目は長いフリを効かせたコント、三本目はマッサージ器具を開発した真面目な職人が「大人の玩具として使わないでくれ」と哀願し続けるコントとほぼテレビで見る事の出来ないネタであり、普通に面白く笑えた。だが、どうしても普通に笑えるものがフリでしか成り得ないライブイベントになりつつある事が段々と問題になってきているとも同時に思うのである。
二番手はナカゴー。『テアトロコントvol.1』で初めて観てからほぼ全公演観るぐらいファンになってしまった私だが、今回は1月上旬に行われたナカゴー特別劇場の再演。これまで観てきた中では分かりやすいキャラ設定とコミカルな動き、俳優陣もミュージカル的振る舞いで、しつこさやノイジーさは普段よりは薄め。何度か観る中で慣れてしまったのか、物足りなさみたいなのは正直ある。だがそれでも「このハーモニカ吹きは、一体どういうつもりでこの場を喋っているのだろうか。そして、この場違いなハーモニカ吹きが独壇場で喋っている時、周りの人達は何を思っているのだろうか」という、歪な空気になった時の妙な緊張感は、『暴れ馬』においては他の話よりも顕著に思える。そしてそこからの大人たちのプロレスごっこの高揚感は気持ちが良い。殴られ役の演技が皆猛烈に上手いという事含めずっと笑えた。
三番手は東葛スポーツ。『テアトロコントvol.2』で初めて観てからほぼ全公演観るぐらいファンになってしまった私だが、今回はスクリーンで映画マッシュアップを先に流し、その後ほぼ同等の動きや台詞を舞台上の役者が演じる構成の見せ方だったので、元ネタありきで作られた演劇だという事は分かりやすく伝わったのではないかと思う。とはいえ、内容は全然易しくなく、寧ろ分かりやすくなった分、毒々しさも伝わりやすかったのではないか。『愛、アムール』と『ファニーゲーム』を掛け合わせたら『ワタミの介護』になる発想は本当刺々しい。そして、この演劇を作るため、ネットから渡邊美樹社長が『がっちりマンデー!!』に出演してる回を探している主宰の金山氏を想像すると、単純に笑える。
四番手はチョップリン。初回からテアトロコントを観てきたが、これまで出演されたコント師の中で群を抜いて一番面白かった。ナカゴー、東葛スポーツと演劇人からは曲者しか出演していない事から見て、これまで以上にコント師が不利になる取り合わせだと思ったが、全部チョップリンが覆してくれた。ローソン、セブンイレブン、JRを敵とするような絶対にテレビでは観られない毒々しいコントの数々。東葛スポーツの介護演劇からの奇跡としか思えない流れから繰り出されたコント『ひぃじいちゃん』。『ひぃじいちゃん』は見せ方ワンパターンだからこそのハマり具合だったであろう。演劇側のねじれた左脳構造に対抗出来るのは直球な右脳表現なのかもしれない。(倉岡慎吾)

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