2024年6月29日(土)~6月30日(日)
テアトロコント vol.68 渋谷コントセンター月例公演(2024.6)
主催公演
公演詳細
エンターテイナーサエキとサエキを信頼する二人からなる3人組えびしゃ
【えびしゃ】
【キャラクター選択】RPGをプレイする男性2人の声に合わせて、3人組が動くという、音ネタの派生形のようなネタである。強そうな2名(大根・中村)のキャラクターに比べて、明らかにサエキのキャラが弱そうで・・、という話である。あるあるネタでもあり、動きで笑わせるネタでもある。現代的かつ短い時間ですぐに笑える。SNSとの親和性も高そうである。
【にらめっこ選手権】にらめっこの大会決勝で、サエキ演じる審判が、個性的で、試合どころではないという一つのシチュエーションから、アドリブも入っているのでは、という自然なやり取りで細かく笑いを取っていく。面白そうな設定を作り、あとはアドリブ感でつなぐという、シットコムのような状況であった。審判の勢いが大事であり、サエキはまさにはまり役で、上手に役に入っていた。
【けん玉同好会】けん玉同好会内で部内恋愛が発生。法廷で裁判官が使用するガベルにけん玉を見立てて、裁判長(ササキ)、検察(中村)が部内恋愛をした疑惑がある大根を責める。大根は内容ではなくけん玉の使い方に突っ込みを入れる展開は非常に面白かった。
【エンドロール】事実を基にした洋画のエンドロール風。映像と3人組がミックスされたネタである。奇跡の優勝を果たしたバスケットボール部のその後、というエンドロールでサエキだけ進路が前途多難である、という話である。発想が見事だと思った反面、「サエキをイジる」というのが、えびしゃの不文律のようになっていて、他の2人組はフリのみに徹しているのが、やや物足りなくも感じた。
【威嚇】暴力団同士の抗争が起き、先方のアジトに乗り込むサエキと大根。しかし、サエキはリンゴを握りつぶそうとしては上手くいかず、ひたすらかじる、というネタであった。私は最も好みであった。理由として、サエキだけではなく、大根も今回はボケ側に回っていた。やはりサエキだけより、一見まともそうな人間がボケに回る方が、可笑しいと思った。
【銃の密売】中村の発音が「入れ」か「帰れ」か分からないという一本でネタが成立することが見事。若さゆえの発想の柔軟性を感じた。
全てのコントを通じて、サエキの大声やおかしみがある雰囲気を前面に出して笑いを取っていた。学生時代の「いじられキャラ」と「いじりが上手い二人」の3人組、という印象を持った。パターンが一緒なので、分かりやすい反面、大根、中村の個性が際立つネタも是非観たいと感じた。(あらっぺ)
思い思いに、舞台を自分たちのものに
テアトロコントではいつも、各ユニットの30分の終わりにユニット名と作品名が映されます。その際、モニターの仕様上、右半分だけちょっと下にズレて映る。vol.68で2日間演じた中野劇団は、その「ズレ」までもを作品の一部に変えてしまったように見えました。
どこの街にもありそうなバー、そこから舞台のまったく変わらない30分。突飛な言葉は飛び交わない。出てくる人も決して派手じゃないし、むしろちょっと冴えないほど。だけど、もしかするとちょっと冴えないからこそ、何だかなにかは起こりそう。途中、こんなセリフがありました。「こっちはおかしいのは状況ですけど、そっちは(おかしいのは)あなたですから」。そう、人間ってただ地道に生きてるだけなのに、不思議なくらい変なことが起こる。そういうことの角っこをきれいに再現したような30分でした。何か、物語ってこういうことでいいんだなって、例えるなら肉じゃが•••?いや肉じゃがですらない、もっとシンプルに「お芋とひき肉を醤油で煮込んだら結局一番美味しいね」みたいな、そういう極みのような作品でした。
さて、冒頭の「ズレ」の話。『結婚の報告』というこの作品、上演後のモニターには、『告』の一文字だけが一段ズレて、落ちて映っていました。私にはそれがたまらなく可笑しかった。タイトル自体が、何だかちょっとズコッとコケているように見えたのです。だってほんとにそういう作品だから。東京での公演はなかなかないそうで、出会えてとてもうれしかったです。
ガクヅケ。まずは率直な気持ち。久々にガクヅケのコントをたくさん観られてめっっっちゃ楽しかった!!!こんなに晴れやかな気持ちになるなんて、正直思いませんでした。とにかく舞台で暴れ狂って、割れんばかりの大きい声で叫びまくるガクヅケ。(もしかして本当に怒ってるのか•••?)といつだって少し不安にさせてくるガクヅケ。いつも通りちゃんとヤバいガクヅケに、なぜだか泣けてきてしまいました。全力の3本はどれも最高だったけれど、『闘い』という掛け算ババアのコントが愛おしくて大好きです。掛け算ババアはどうして、夥しい数の掛け算を浴びせてくるんだろう。どうして正解してほしくて、どうして間違えてほしいんだろう。そこに理由なんて絶対ないんだけど、そういう理由のないことを考えてるのはたまらなく楽しい。この世界には、ガクヅケの狂気だけがくれる感動と元気があるのです。帰り道、ガクヅケのお陰で心がスカッと軽くなっている自分に気付いて、驚きました。
えびしゃ。ツギクル芸人グランプリ翌日、ウイニング・テアトロコント。おめでとうございます!
優勝を勝ち取った2本『キャラクター選択』『銃の密売』をはじめ、6本のコントを通して、えびしゃには一貫した魅力を見つけたように思います。「面白いことを見つけて、それをそのイメージ通りに実現できる的確さ」です。先の2本はもちろん、たとえば『けん玉同好会』では、裁判の小道具としてせっかくうってつけのけん玉を、裁判長が全くうまく使ってくれないもどかしさ。『エンドロール』では、Radioheadの鬱屈さと生徒のゆくえの相性がぴったりでした。たしかにあのエンドロールには、Creep以外考えられない。だけど、かと思ったら『にらめっこ選手権』ではとにかく3人がコントを楽しんでいて、だからついこっちまで楽しくなってきてしまう。やっぱりえびしゃはすごいです。まだまだ若くて、2人じゃなくて3人で、そして何より力があって。えびしゃのいろんな強さが、板をも味方につけているように感じました。(ごとうはな)
さりげなくぶち込んだ恐怖の笑い。
テアトロコントの醍醐味と言えば、演劇人とコント師の化学反応。作劇と演出の差異を楽しむことにあります。勿論、それだけではありませんが。日頃、出演者の多いお笑いライブを主戦場とするコント師は、限られた持ち時間に合わせ、ネタの多くが短尺になりがち。彼らが持ち時間30分のテアトロコントに出演する時、そうしたネタを組み合わせるケースが多いのは必然と言ってもいいでしょう。ところが、持ち時間が長いからこそ、普段はできない長尺ネタにチャレンジすることもできるのです。そして、この難局に果敢に挑み、テアトロコントの歴史に鋭い爪痕を残したコント師が、結成10年目を迎えた、そいつどいつです。
工場のレーンで流れ作業に従事する二人の工員。次々と流れてくるティフロンと呼ばれる謎の物体を一度、分解し、組み立て直し、検品する。作業は単純そのもので、一個につき数秒で完了。それをただ繰り返すだけ。厳しいノルマがあるわけでなく、給料は保証されている。質問。あなただったら、この仕事、やりますか?やりませんか?
ある時、松本竹馬さん演じる一人の工員がふと、疑問を抱きます。自分は一体、何をしているのか?そもそも、ティフロンとは何なのか?何かを造るための部品なのか?そして、分解し、組み立て直すことに一体、何の意味があるのか?
そこまでではないにしても、皆さんも同じようなことを感じたことがあるかもしれません。自分がやっていることに果たして、意味はあるのだろうか?と。もし、全く無意味なことをしていることに気づいたら…。全てを投げ出したくなっても、決して不思議ではありません。
そんな竹馬さんをもう一人の工員、市川刺身さんが強い口調でたしなめます。与えられた仕事をやるだけでいい。自分たちは社会の歯車になれているんだ。意味なんて考えるなと。
これは後ろからハンマーで殴られたかのような衝撃でした。自分の価値観と全く異なる言葉を投げかけられたからです。果たして、竹馬さんが取った行動は…?実はここから意外な展開となり、笑いの渦が巻き起こります。でも、自分の心に深く刺さったのは、先に述べた刺身さんの言葉でした。意味なんて考えてはいけない。それはある意味、笑いの本質とも言えます。ナンセンスこそ最高の笑いとの考えもあるからです。一方で、この上なく強烈なブラックユーモアとも取れます。人間から思考を奪い取り、社会の歯車にすることで、統治しやすい世の中にする。為政者の思いが透けて見え、得も言われぬ恐怖を感じさせた、そいつどいつ。恐るべきコント師。(市川幸宏)
夏は一瞬。
《1》【えびしゃ】<コント師枠>男3人組/『キャラクター選択』他、計6作品/★★☆☆☆
ゲーム音声「キャラクターを選択してくれ!」。新作格闘ゲームを買った男二人が、キャラクター選択画面の決め台詞やポーズのカッコよさに痺れながら、キャラクターを選ぶ演目『キャラクター選択』。ゲームキャラよろしく定期的に揺れ続けていたりと、着想のアイデアがキャッチーで、これからどうなるんだろう?とワクワクしたところで終わってしまうように感じたのが少し物足りなかったので、二転三転する作品もぜひ見てみたい。演目『にらめっこ選手権』の暑苦しい審判、演目『キャラクター選択』のはずれゲームキャラなどを演じるサエキさんのキャラクター力で引っ張っていきたい感じは伝わったが、個人的にはそこまでうまくのれなかった気もする。
《2》【中野劇団】<演劇人枠>男女4名/『結婚の報告』一作品/★★★☆☆/
男1「今度結婚する彼女、再婚なんですけど…彼女の息子と僕、“大学の同期”だったんです。」。男2「…そんなに離れてるんですか!?」行きつけのバーの常連に結婚話を伝えたところで、事の真相を伝えるため待ち合わせていた結婚相手の息子でもあり友人がやってくる。緊張ともどかしさの詰まった時間が始まる。一方聞き役と思われたもう一人の常連も同じく再婚し、待ち合わせやってきた元奥さんに、再婚の披露宴スピーチ依頼をするという前代未聞の時間が、交互に展開される。話の展開もわかりやすく、ほどよく共感しやすく、最後まで飽きずに楽しめた。元奥さんのスピーチに一目ぼれして結婚したという元旦那のエピソードの熱が面白く、この一見普通そうに見える元奥さんからどんな話術が飛び出すのか想像したのが、一番のワクワクポイントだった。女性のスピーチが面白いってあまり聞かない分希少価値が高いと思うので、ポイント高いのもわかる気がする。
《3》【サスペンダーズ】<コント師枠>出演者:男2人組/★★★★☆/『仲良し3人組』他、計4作
品。男1「までもさ…東京出て、何年か働いて思うけど、三人でいっつもくだらないことしてたあの時間が、宝物だったんだなって思うよ。で、どうなのナツミとは?」男2「そのことなんだけど…俺とナツミで話し合って…その…仲良し三人組だったみたいにするのをやめてほしい。あとナツミと結婚する」。東京に出てから、仲良し三人組だったよな感が強く出してくることのに耐えられなくなった友人は、微妙に距離を取ろうとするが、男1「こっちに帰ってきたときくらい…!行き過ぎた思い出補正でイルミネートした過去にダイブさせてくれよ!」と必死に食らいつく演目『仲良し3人組』。一発の破壊的フレーズが凄まじく、やるせない悲しみが花火のように打ちあがり、高らかに散っていく姿を眺めながら、そのはかなさを笑う時間を楽しませてもらった。
【総評】今回も見た帰りにベジ郎に入ろうとしたら、“冷やし野菜炒め”なるメニューが始まっていた。勇気がなくて頼めなかったが、テアトロコントも期間限定の土日開催。次回は金土の模様。夏は一瞬。冷やし野菜炒めも一瞬。土日開催も一瞬?好奇心を忘れずに、冷やし野菜炒めを頼んでいこう。今回も多くの学びを頂いた、企画・運営・出演者の皆様に心より感謝致します。(モリタユウイチ)

