2024年10月25日(金)~10月26日(土)
テアトロコント vol.71 渋谷コントセンター月例公演(2024.10)
主催公演
公演詳細
『面影』の深読み
誰かの作品を、別の誰かの作品にたとえることほど野暮なことはありません。だけどその野暮を分かったうえで、今回のテアトロコントでの、特別な気持ちのことを書いてみたいです。私だけの、勝手な思い過ごしかも知れないけれど。
喜劇結社バキュン!ズ。大阪の劇団。今回がはじめての東京公演とのことで、私もはじめての観劇でした。タイトルは『面影』。当日パンフレットには「深読みするな」と、「『あ〜面白かった』それだけでいい」と書かれていました。ちょっと華美なお名前とそのコメントが相まって、にぎやかでハチャメチャな作風なのかしら?と思いながら、センチメンタルズが終わったあとの3分のインターミッションを過ごしていました。
今回のテアトロコントは、10/25(金)26(土)の2日間でした。そして翌27(日)には、鎌田順也さんの舞台作品上映会がありました。昨年夏に亡くなった、ナカゴーとほりぶんの鎌田さんです。
私は、喜劇結社バキュン!ズに、鎌田さんの『面影』を強く感じました。鎌田さんの『面影』を感じて感じて、そう気付いてからはずっと、涙が止まりませんでした。誰かの作品を、別の誰かの作品にたとえることほど野暮なことはありません。野暮で、そしてこの上なく失礼だと思います。それでも。「『なにやってるんだ』的なアイディアと、『どうしてくれるんだ』的な構成で人々を魅了する(ENBUゼミナールの鎌田さんプロフィールから)」こと。女性が話の中心にいるけれど、女性的な役割は絶対に背負わせず、ただその役そのもののおかしさで作品を作りきっていること。そういう作品だけが持てる、強いて言葉にするのなら、底抜けの、“晴れ”。鎌田さんの作品からずっともらっていたあれを、少なくとも私は、喜劇結社バキュン!ズからももらったのでした。
「鎌田くんの作品を見に行く前の、行く道中の心持ちが他の誰のそれを見に行く時とも違っていて、それがまた大好きでした」。引用ばかりで恐縮ですが、鎌田さんが亡くなられたときの、喜安浩平さんのツイートです。あまりにもそのとおりだなと思って、今でもよく覚えています。喜劇結社バキュン!ズを知っている状態での「行き」はまだ経験していないけれど、観た帰り道の心持ちは、他の誰の作品を見た帰り道とも違っていました。はやく、「行き」をしたいなあ。
最後にひとつだけおことわりで、この話は、スプーン曲げ子さんと鎌田順也さんの作風が似てるねっていうことでは決してないです。愚論だ、邪推だと感じられる方がいたらごめんなさい。ナカゴーやほりぶんが観られなくても、喜劇結社バキュン!ズがいるよ。センチメンタルズだってダウ90000だっているよ。テアトロコントがそう言ってくれたように思った。ただ、これが伝えたかったです。(ごとうはな)
ウケると判断できない
2024年10月25日(金)、お客さんが満員のテアトロコントで思ったことは、本来は客席が6~7割くらい埋まった状態で見たいということであった。満員だと「笑ってあげよう」という意識が会場を包んでしまい、どんなボケもウケてしまう。いわゆる「会場があったかい」というやつ。「これってどういうおもしろさだっけ?」と味わう間もなく会場がウケてしまう。毎回勝手に「おもしろい」と認定されてしまうような感覚。とくに批評モニターで参加している身からすると、「これはこういうおもしろさである」という判断がどうもつきにくい。客ウケがノイズになってしまう。ナンセンスな言葉のやり取りを30分に引き延ばした演劇コントが「なぜおもしろいのか?」を考える間もなく、会場が脊髄反射でウケ続けてしまって、結果的にノリ切れないまま終わってしまう。あのときの取り残された感じは嫌だった。もちろん、ほかのお笑いライブはそれでいいのだが、『コントと演劇のボーダー』を掲げるテアトロコントにおいては、「客がウケているからいい」というわかりやすい指標ではなく、たとえば客ウケはそんなになくても「脳がおもしろい」と思う状態。それはどういう理屈で作られたものなのかをこちらが勝手に解釈して「なるほど」と思うこと。または理屈を超えた、常軌を逸したもので死んでしまうかと思うくらい笑ってしまうこと。そういうものを求めていることを改めて思った。客ウケの数や大きさで見てしまったら、人気者が一番強いに決まってるから。演者側の「笑い声を沢山聞けて、ほっとしています」というポストを見たとき、「それは違うんだけどな~」と思ってしまった。笑い声なんかでほっとしないでほしい。(カンノアキオ)
「お絵描き邪魔バトル」の破壊力。
《1》【ぎょねこ】<コント師枠>男3人組/『野次』他、計5作品+幕間映像/★★★★☆
客「もっと面白いことやれ!」舞台上の芸人に野次を飛ばす爺さん客に対し、芸人「じゃあお前がやってみろ」という返しをしたら、真に受けた爺さんが本当に小屋を押さえて上演する演目『野次』。三人コントというだけで幅が広がってワイワイ感が生まれ、親しみやすかった。また幕間映像で流れた「お絵描き邪魔バトル」がどの本編よりも面白くて、ずっと笑ってしまっていた。コントライブとしてそれでいいのか若干の疑問はあるが、1アイテムしか描けないルールの中、「お墓参り」の絵を完成させたい側と、それを邪魔しようとする対決で、互いに絵を描いていくというシンプルなルールが、予想外な展開になっていくのが飽きなかった。
《2》【喜劇結社バキュン!ズ】<演劇人枠>出演:男女6人/『面影』1作品/★★☆☆☆
2年間、墓参りをさぼっていた父のお墓の前にやってきた娘が、墓の前には群がる無職女性の溜まり場になっていたことに振り回される演目『面影』。娘「父とはどのような関係で?」女性「面影を感じる関係…」。着物にヘルメットした女性がゴザを敷いて眠っていたり、その姉妹などが、持病のヘルニアや荒唐無稽なことをひたすら喋っているの様に墓参りの娘が一つ一つツッコミを入れていく姿を楽しむスタイル。自分には合わなかったのか、真顔で見てしまったが、墓の前に無職女性が集まるという非日常性はいいような気がする。そこでお祭りとか何かしらの展開があったら楽しみやすいような気もするが、大したことを起こさないのがこだわりのような気もするから難しい。
《3》【うるとらブギーズ】<コント師枠>男2人組/『SOT』他、計4作品/★★★★☆
SOT「プラスチック型爆弾か…。犯人に心当たりはありますか?」刑事「7年前に検挙した犯人です」。SOT…特殊事件お楽しみ会対策本部の人間と、閉じこめられたビル脱出をクイズや歌を歌いながら“楽しむ”演目『SOT』。他演目も全て刑事が出演する展開が、転換不要となりスムーズだった。
【総評】今回も貴重な学びを頂いた企画運営・スタッフ・出演者の皆様に心から感謝致します。(モリタユウイチ)
うるとらスペシャルなイリュージョニスト
コントには大きく分けて2つの種類があります。日常の1コマを切り取った、あるあるタイプと非日常のあり得ない設定や突拍子もないキャラクターを登場させる、ないないタイプと。前者の場合、主に会話のズレが中心となり、そこから大きく飛躍するのはなかなか困難なのですが、それを易々とやってのけるコント師がいます。結成15年、八木崇さんと佐々木崇博さんからなるコンビ、うるとらブギーズです。キングオブコントでも好成績を収めている彼らが目指すのは、バカバカしいコント。今回のテアトロコントでも、目標を貫く姿勢が横溢していました。
事件を追う特殊部隊、コントとしては珍しくない設定です。でも、部隊のネーミングに「お楽しみ会」という謎の文言が。犯人を捜索するプロセスに佐々木さんがハンカチ落としなど様々なお楽しみ会要素を盛り込むと、八木さんが困惑しながらも一緒に楽しみ、その場を異次元の世界に変えてしまう、ぶっ飛んだコント。作・演出を担当する八木さんの発想力も並外れていますが、芸歴を重ね、コント師としての技量と共にオジサン度も高まり、いい具合に仕上がってきた2人がやるからこそ、バカバカしさも際立ちます。年をとるのも悪くないことの証です。
1本1本のコントは独立していながらも、30分のトータルは警察もので貫かれています。こうした構成ができるのはテアトロコントならでは。彼らも意気に感じての応答でしょう。続く作品は同僚の何気ない会話を軸とした、どうということのない設定ですが、一人は喋り出すと何故か、いつも中途半端なところで会話を止める、続きが気になるのにそれを言わないがため、もう一人が激しく苛立つというコント。あるあるかと思いきや、日常から大きく逸脱する、ないないタイプの1本です。
ラストの題材は犯人に撃たれた刑事が苦痛に顔を歪めながらスローモーションで倒れていくという刑事ドラマにありがちな1シーン。ところが、フィーチャーするのは横にいる同僚。普通なら、顔が青ざめ、撃たれた仲間を救出しようと必死に駆け寄るところですが、同僚の八木さんはスローモーションで何もしない。それどころか、薄ら笑いを浮かべているので、佐々木さんがブチ切れるというコント。これもまた、異次元への大いなる飛躍と言えるでしょう。
彼らが織りなす、突き抜けた世界観は立川談志師匠が言うところのイリュージョンにも通じています。凡庸な毎日から抜け出したい人は今すぐ、うるとらブギーズに出会うべき。(市川幸宏)
日常から丁寧に笑いを生み出す、3人組ぎょねこ
【ぎょねこ】
【学校の七不思議】
校長、教頭、生徒、学校の朝礼を舞台とする。生徒が学校の七不思議を噂しており静かにならない。朝礼の話を聞かない雑談を壇上の教師が諌めるかと思いきや、実際に学校の七不思議を検証するという展開になる。この裏切りは見事であった。重ねて、学校の七不思議がいくつか本当だったというのも秀逸であった。普遍的な題材を用いて、新鮮な角度を付け加えて、見事に仕立てていた。
【ドッペルゲンガー】
テレビ番組でドッペルゲンガーの検証が行われる。ドッペルゲンガーは同じ場所に2人並ぶとどちらかが消えると言われる中で、明らかに同一人物と思われる人間が、入れ代わり立ち代わり登場し、「どちらかが一緒に並ばないと無意味」と突っ込む視聴者役、司会役、ドッペルゲンガー役のコントであった。設定が秀逸であるため、非常に笑いも起きており、ドタバタコメディー感も楽しめた。
【野次】
浅草でシニア層にネタをする若手芸人、茶々を入れるシニア、とドラマやバラエティーのトークなどでよくみる光景で、若手芸人が最初は茶々を流していたものの、とうとう「代わりに舞台に立ってみよ」と詰め寄る。そこでひるまず「では公民館で後日」と条件を提示するシニア。後日公民館でのネタバトルが行われ、知り合いのシニアを連れてきてネタをするという話である。定番の設定を用いた裏切りが見事。また、終始予定調和にならず、起伏に富んでいた展開が素晴らしい。いかにも若手芸人が客につかまったという前半の様子もうまく表現されていた。
【ママさんハンドベルクラブ】
ママさんが3人組でハンドベルの出し物をする。そこでハンドベルを忘れてしまった一人を責めるママさん。2曲目を覚えてこなかったママさんも含め、後半見ごたえのある応酬であった。ハンドベルでの演奏に狂気じみた執着をみせるママさんがツボに入り、非常に声を上げて笑った。本コントが私は一番好みであった。連帯責任であるがゆるい雰囲気を持つハンドベルと、熱心さ、個人を責める行為のアンバランスさが非常に表現されていた。
【円周率】
円周率の覚え方をテーマに3人組がドタバタしたやり取りで笑わせる。芸人としての力の確かさを示すコントであり、力量の高さがよく伝わった。
全てのコントを通じて、器用かつ分かりやすいクオリティの高いコントが見られて、非常に満足であった。私は、狂気を一番感じた『ママさんハンドベルクラブ』が気に入ったが、人によって一番好きなコントが分かれると思う。それほどコントの種類が豊富な新時代の旗手と思う。(あらっぺ)

