2025年1月24日(金)~1月25日(土)
テアトロコント vol.72 渋谷コントセンター月例公演(2025.1)
主催公演
公演詳細
おもしろいと思うこと、おもしろくないと思うこと。
もめんととヤッホイ。結成はそれぞれ2021年・2023年、どちらもルーキーのコンビです。この2組は別日の出演でしたが、共通する強い情熱と、対して、対照的な作風を感じました。
もめんと。往年のテレビコントを彷彿とさせるような、たとえば小話のようなしつらえ。ある種“お茶の間”コントとも言えるかもしれません。ちょこかまと音が鳴るような、チャーミングな表情と動き。そしてよく通る2人の声が印象的でした。コントってどうしても「誰もが見たことのあるシチュエーションを、そのユニット独自の視点でどう切り取るか」の戦いになってしまう気もしていて、でもだからこそ、もめんとのつぶらな目線と、「ああ、そういう会話をおもしろいって思うんだなあ」がよく分かる4本のネタ。春風と呼ぶにはまだ早い、だけど確かに暖かさもあるような冬の風。何だか、そんな30分間でした。前回出演されたテアトロコントは悔しくも見逃してしまっていて、あとから演目だけ拝見しました。すべてのコントのタイトルが、時間!とても驚いたことをよく覚えています。かっこいい!そういう箱型コメディ感というか、ワンシチュエーション感というか、もめんとはきっと、劇場そのものがとっても似合う2人なんだと思います。
ヤッホイ。ヤッホイのギラギラ、すごかった。“お茶の間”コントとあえて対比するなら、“ストリート”コント、“路上”コントかもしれません。「自分たちはここをおもしろいと思ってるんです!」をもうとことん主張していて、その力強さと、ぽそぽそ喋る小さな声とが相まって、カリスマ的な魅力が感じられました。特に印象的だったのは、やっぱり『鮨』。玉置浩二の名曲『田園』に合わせて、鮨ネタの漢字が書かれたフリップをひたすら埋めていくコントです(言葉で伝えるのはなかなか難しいネタですね)。以前キングオブコントの予選でも拝見したのですが、何度観ても色褪せない狂気。もしお茶の間が見たら、果たしていったい何人が共感(というか、理解)できるかは分からなくて、だけど私はそこから、ヤッホイの2人が信じる「おもしろい」と、そこに賭ける気持ちを受け取りました。
作者がおもしろいと思うこと、観客がおもしろいと思うこと、そもそも人がおもしろいと思うこと、そしてあるいは、おもしろくないと思うこと。ものを作っていくうえで、絶対に無視できないことです。だけどこんな時代では、どんなものを作っても、誰かに何かを言われてしまう。そんな時に信じられるのは当たり前にひとつで、自分がおもしろいと思うこと。言葉にすればするほど当然だけど、当然なことをいま一度胸に刻みたくなる、1月のテアトロコントでした。(ごとうはな)
あり得なくはない歪んだ日常と、笑いのために誇張された一場面。
コンビニ帰り、停めといたバイクが車にぶつけられ、かなりドイヒーな状態になっている。ショックで座り込むか、激昂し、周囲に当たり散らすか?演劇団体「桃尻犬」の代表で作・演出を務める野田慈伸さんが演じる被害者はそのどちらでもなく、我が目を疑い、現実を受け入れられない状況を過不足なく実にリアルに演じていました。加害者となったドライバーを演じるのは、テアトロコントでも、映画やドラマでも一度、目にしたら忘れられない強烈な印象を観客に与える、前原瑞樹さん。被害者のもとに歩み寄るも、素直に詫びを入れないので、野田さんもイライラを募らせます。こうした状況に出くわすことは決して珍しいことではないでしょう。比較的性格が穏やかな人なら、野田さんにすんなりと感情移入できるはずです。物語があらぬ方向へ動き出すのは片桐美穂さんの登場シーンから。実は彼女、被害者の妹であり、加害者の恋人。事故を起こした車に同乗していたことも明かされます。思わず「来た!来た!来た!」と心の中で叫んでしまうコント的展開に観客の誰もがガッツポーズをしたことでしょう。二人が結婚する予定だということを聞かされた日にゃ、野田さんはもう戸惑いを隠せずにはいられません。結婚すれば身内になる。ハタと気づいた前原さんは事故を警察に告げず、内々で済まそうと考えます。彼女の片桐さんも賛同しますが、無論、野田さんは承服しません。但し、ここでも声を荒げることなく、自己を抑制し続けます。このリアルさはまさにコントと演劇のボーダー。野田さんの高い演技力がこの展開のおかしさをより一層、際立たせていたことは言うまでもありません。
進化し続ける桃尻犬の後に登場したのが、結成5年目のスパイシーガーリック。最初のネタは奇しくも車つながり!片山智勝さん演じる先輩が運転する車の助手席には後輩のジョンさん。遅刻して反省する素振りは見せるものの、頼まれて買ってきたおにぎりは、片山さんのがツナマヨで、自分だけ高いヤツ。その後、ドリンクでも差を付けていたことが発覚。反省の様子が1ミリも感じられない展開がこれでもかと続きます。笑いのポイントを一つ決め、それを増幅させていく、コントにありがちなスタイルです。この日にやった4本全てのネタがそうでした。先程の桃尻犬とは全くタイプが違い、コンテストに出たら審査員に「展開が欲しい」と絶対言われるはずですが、このベタを貫く姿勢にはむしろ大きな拍手を送りたい。この日、笑いの量では間違いなく、スパイシーガーリックがダントツだったことがそれを証明しています。(市川幸宏)

