渋谷らくごプレビュー&レビュー
2022年 11月11日(金)~16日(水)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
本公演はオンライン配信視聴を行います。オンライン配信チケット ご購入はこちらから
劇場での観覧は当日券を窓口でお求めください。(前売券の販売は現在行っておりません。)
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◎トークゲスト:玉袋筋太郎さん
落語の世界の愉快犯。個性と落語のにらめっこを続け、お客さんを常に楽しませるエンターテイナーたちの競演です。
なかでも今日は、落語会の組長 橘家文蔵師匠がトリをとる、絶対にお客さんを満足させる真打が登場します。
そして前方には、穏やかではない雰囲気を醸し出す二つ目が三人。甘噛み王の伸べえさんのくせになる語り、善良な悪人 笑二さん、叫ぶ噺家の会 青森さん。個性と情熱のほとばしる様子をぜひご覧いただきたい!
トークゲストに玉袋筋太郎さんをお迎えし、みなさんと一緒に落語を愉快に楽しみます。
▽桂伸べえ かつら しんべえ 落語芸術協会
23歳で入門、2017年6月二つ目昇進。落語を覚えながら寝る。1番好きな飲み物はほうじ茶で、2番目に好きな飲み物が黒豆茶。写真に写りたがらない。最近SNSをリセットした。
▽立川笑二 たてかわ しょうじ 落語立川流
20歳で入門、芸歴11年目、2014年6月に二つ目昇進。2019年と2020年の「渋谷らくご大賞 おもしろい二つ目賞」受賞。お母さんが骨折してしまったので最近ライン通話をしている、1回の通話で40分ほどしゃべる。新作が出るたびに映画「貞子」をみている。
▽三遊亭青森 さんゆうてい あおもり 落語協会
23歳で入門、現在入門8年目、2019年2月二つ目昇進。Youtubeやtwitch.tvでゲーム配信をしている。先日ヤクルト1000を飲んだところ、早朝に目が覚める。アニメで「カイジ」に影響をうけ、焼き鳥をビールで流し込んだ。
▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう 落語協会
24歳で入門、芸歴35年目、2001年真打昇進。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。最近つくった料理は「トマトベースのカレーベース」、隠し味はカニ缶とサバ缶。週末になると包丁を研ぐのが習慣。
レビュー
桂伸べえ-権助魚
立川笑二-抜け雀
三遊亭青森-手紙無筆
橘家文蔵-文七元結
今月は8周年記念御礼興行。この日曜日の14時の回では玉袋筋太郎さんがゲストだった。大人になってから落語を聴き始めたとおっしゃる玉袋さんだが、ハードディスクの6TBのうち4TBを使っているという。芸人はやはり芸へのこだわりがすごいと感嘆しながらオープニングトークを聞いた。
桂伸べえさん「権助魚」
2時間半並んで入った町中華(それって町中華?)の実話をまくらに、「権助魚」の噺に突入。おかみさんと旦那を手玉に取り、漁夫の利を得ようとする小僧がお調子者でおかしい。そして驚いたのは、他所に女を作った旦那のあとをつけるように小僧に言いつけるおかみさんの、粘り気のある口調が、伸べえさんの話し方にぴったりだったこと。おかみさんのやきもちを隠しきれない粘質性が、少しおっとりと湿度がある伸べえさんの口調から滲み出ていておかしかった。
癖があるって素敵だ。
立川笑二さん「抜け雀」
のちに無一文と判明する、黒紋付きに羽織袴姿の男のキャラクターが強烈だ。腹が空いたのを誤魔化すように蟻の行列を眺めながら、声をかけてきた宿屋の親父に「蟻は良い」と言ってバッタリと倒れる。武士は食わねど高楊枝の度が過ぎている。そして20日も泊めてからようやく無一文と判明、代わりに絵を描いてやろうというその男に、「鷹揚に育てられると畜生になるのか?」と吐く宿屋の親父も、無一文の男のあくの強さでは負けていない。その上、息子の絵が評判になっていることを聞きつけた、父親の御用絵師が出てきた日には目も当てられない。
「抜け雀」の話で、ここまで全員の性格を疑うのは初めてだ。人間臭いにも程がある。ほっこりしたいい話、のかけらなど微塵もない。父と子の和解はどこへ行った?!
だから笑二さんの噺には中毒性がある。
三遊亭青森さん「手紙無筆」
今回は、なんと古典を使ったAIとの合作とのこと。古典でお馴染みの台詞を打ち込み、AIとラリーしながら作っていくらしい。確かに将棋もAIで練習するのが普通というし、AIで作られた歌詞や俳句も見たことがある。落語にもついにそういう時代がきたんですね、と思いながら拝聴した。「俺もこれが面白いかわからない」、時代の先端を行く者は常にそういう宿命を負うのでしょう、頑張れ!
普通の落語と違いを感じたのは、登場人物の内面を語る台詞があること。つまり誰かの発した言葉でも簡潔な状況説明の台詞でもなくて、顔を上下(かみしも)に振らずに登場人物が自分の内心を吐露する台詞がある点だった。ああいう内心の独白を落語として消化(もしくは昇華)して演じるのは難しそうだ。でも、十分に初代AI落語会会長(?)の片鱗を青森さんに見た一席だった。
橘家文蔵師匠「文七元結」
家の貧しさを案じた娘のお久が吉原の大店「佐野槌」に行ったらしい。訳もわからず娘を迎えに行く父親の長兵衛だが、この男は天下一品の腕を持つ左官の親方ながら、賭け事をやめられなくて一家が窮しているのだ。諭す佐野槌の女将と、言い訳と詫びが交錯する長兵衛の、やりとりのテンポが心地いい。 しかし古典でも細部は演者によって異なる。文七元結で違いが強く出るのは、橋から身投げ寸前の若者を引き止め、若者が無くした店の売上50両を、長兵衛が佐野槌から借りてきた50両で埋め合わせてやる場面かもしれない。目の前で自殺しようとする見ず知らずの若者に、大事な娘をかたに取られて得た50両を渡せるのか。今回文蔵師匠は、長兵衛に自分の悪行を振り返ってその罪滅ぼしかのような台詞を言わせていた(実際には償うのは娘なのですが…と思うのは野暮か)。
あー、そうきたか!、他ではどう演じていたっけ?と考える、落語に限らず古典を味わう一つの楽しみだと思う。今回は個性のありすぎる三人の若手演者と、古典直球の文蔵師匠の、コントラストの激しい回だった。
みんなちがってみんないい。
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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