渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2022年 9月9日(金)~14日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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9月11日(日)17:00~19:00 柳亭市童 橘家文蔵 玉川太福 立川吉笑

「渋谷らくご」立川吉笑トリ公演:演芸の深淵

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プレビュー

 二つ目の市童さん、渋谷らくごの柱のひとり文蔵師匠と、古典どっぷりの前半から、浪曲の太福先生、オール自作の創作の吉笑さんへと創作の流れに。演芸の奥深さをこの2時間で体感できる公演です。
 オール実力派。トリックスター吉笑さんのスリリングな高座でぜひ元気になってください。

▽柳亭市童 りゅうてい いちどう 落語協会
18歳で入門、芸歴12年目、2015年5月二つ目昇進。インスタグラムにラーメンの写真を積極的にアップする。この夏は、ミュージカル「ミス・サイゴン」を観劇して涙した。先日、西友でスーツを買った。カルビーの「ぽてコタン」がマイブーム。

▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう 落語協会
24歳で入門、芸歴35年目、2001年真打昇進。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。最近つくった料理は「ナスとトウモロコシの夏野菜のお味噌汁」。コンビニに行くとお菓子をついつい買ってしまう、先日は「焼きプリン」を買った。

▽玉川太福 たまがわ だいふく 日本浪曲協会/落語芸術協会
1979年8月2日、2007年3月入門。サウナが大好きで、日本中に行きたいサウナがある。銭湯に行ってストレスを発散する。崎陽軒のシウマイ弁当の魚が変わったことにすぐ気がついた。娘さんが朝起きて描いた絵をツイッターにアップしている。

▽立川吉笑 たてかわ きっしょう 落語立川流
26歳で入門、現在芸歴12年目、2012年4月二つ目昇進。「渋谷らくご大賞2021」&「創作大賞 2021」初のW受賞者。とにかく我慢して痩せるダイエットをおこなっている。先日、「海と日本プロジェクト×サザエさん」というイベントでサザエさんの前で落語をやった。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@toyono2010 (ともちん。シンガポール育ち、帰国子女。落語、漫画、読書、映画が大好き!)

柳亭市童(りゅうてい いちどう)-蒟蒻問答
橘家文蔵(たちばなや ぶんぞう)-転宅
玉川太福(たまがわ だいふく)/玉川みね子(たまがわ みねこ)-祐子のスマホ
立川吉笑(たてかわ きっしょう)-妲妃のお百

今日はナインイレブン。平和について考える日。
どうか、平和な世界で落語を楽しめますように!
今日は「オール実力派」の会とのことで、素晴らしいお噺を聴かせて下さる演者さん達にも感謝です。

柳亭市童(りゅうてい いちどう)「蒟蒻問答」

  • 柳亭市童さん

ひょうきんで可愛いらしいイメージの市童さん。スカイブルーの羽織にグレーのお着物で登場、大人っぽくて素敵!そんな市童さんにぴったりな、渋い親分さんが登場です。
今日のお噺の舞台は江戸ではなく上州、今の群馬県安中市です。
蒟蒻屋の六兵衛さんは、元江戸の大親分。面倒見の良い六兵衛さんは、彼を頼って来た八五郎に仕事を世話します。が、その仕事とは、近所の荒れたお寺のニセ住職を務めること!ところがある日、本物の僧侶が問答チャレンジにやって来るというピンチ到来。さて、どう乗り越えたでしょうか?
途中で「いろはにほへと〜」とニセのお経を唱える場面がありますが、良い声!さすがYoutubeでラップを披露しているだけあります。結末は勘違いコントのようで笑えました!

橘家文蔵(たちばなや ぶんぞう)「転宅」

  • 橘家文蔵師匠

文蔵師匠の、飲食の演技と女性の演技が大好き!今日のお噺「転宅」では、その両方が楽しめました。登場するのは、色っぽくてズル賢〜いお妾さん、最高に魅力的なキャラ!家に入ってきたドロボーを誘惑して、夫婦になる約束をしてしまう魔性の女です。その上、色仕掛けで言いくるめ、逆にドロボーからお金も奪ってしまいます。
「ねぇ〜ん、おまいさん〜」と迫る場面など、強面の文蔵師匠が本当に可愛いらしい女性に見えてきてしまうので驚き!
また、ドロボーが家にあった料理を飲み食いしてしまう場面がありますが、お刺身はお刺身に、芋は芋に、何を食べているのかハッキリわかるのが凄い!そして、これがとても美味しそう。演技を見ているだけで、お腹が鳴ってしまいました。

玉川太福(たまがわ だいふく)「祐子のスマホ」

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠(

今日はレジェンドが登場、今年100歳になられる現役曲師・玉川祐子師匠の物語です(エリザベス女王より長生き!)。実は渋谷らくごで生まれた創作浪曲、祐子師匠とのエピソードを連続で作品にしているとのこと。太福さんのハイテンションな演技からして、印象深くパワフルな女性のようですね。
さて、今回も驚きのエピソード!
100歳近くで、スマホ購入を決意。支払いは48回払い(とりあえず、あと4年!)「登録している連絡先は、ほとんど亡くなっているからデータ移行は不要」と言い放つ場面には、大笑いしてしまいました。
85歳で現役米連邦最高裁判事だったルース・ベイダー・ギングスバーグ女史についてのドキュメンタリー映画「RGB」を思い起こしました。パワフルなだけでなく、ちょっとユーモラス。こういう明るくダイナミックな方が長生きされるのですね。
映画・ドラマ化された祐子師匠物語も、是非観てみたい(←原作-玉川太福さん)。偉大な女性のお話は大好きです!

立川吉笑(たてかわ きっしょう)「妲妃のお百」

  • 立川吉笑さん

最近「サザエさん」と共演するなど大活躍の吉笑さん。
痩せて味覚が鋭くなったとのことで、ブドウ(チリ産レッドグローブを皮ごと)と牛乳を同時に口にするとカルピスの味がすることに気付いた、とか。ホント⁉︎
今日のお噺は、まさかの古典!まさかの怪談!
妲妃(だっき)とは中国に実在した王妃で、歴史に残る悪女の名前だそうです。お百も、人を落とし入れ、邪魔になると殺害してしまう冷血漢。残酷な殺しの場面には、震撼としてしました。講談の「宗悦殺し」のような陰惨で不穏な雰囲気。こんな吉笑さん、初めて!
噺家さんって、色々な顔を持っているのですね。いつもの楽しい創作落語も大好きですが、こういうダークなお噺も良いーじゃないですかー!ますます好きになりましたよ、吉笑さーん。