渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2022年 10月14日(金)~19日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

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10月15日(土)17:00~19:00 立川笑二 橘家圓太郎 立川談洲 玉川太福

「渋谷らくご」唸る太福、吠える圓太郎

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プレビュー

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 浪曲の可能性を広げまくる太福先生のトリ公演。
やさしい笑顔で怖い内面の笑二さんの落語は一聴の価値あり! 吠える圓太郎師匠、大胆かつ緻密な落語にお客さんも思わずうなるにちがいありません。唯一線の細そうな談洲さんですが、アイデア抜群、だれでも楽しめる落語に必ずピンとくるはず。
エンターテイナーが揃った本公演、聴かなきゃぜったい損! 太福先生で笑って、明るい週末にいたしましょう!

▽立川笑二 たてかわ しょうじ 落語立川流
20歳で入門、芸歴11年目、2014年6月に二つ目昇進。2019年と2020年の「渋谷らくご大賞 おもしろい二つ目賞」受賞。先日着物姿でコンビニに入ってみたが、すこし恥ずかしかった。実家の冷蔵庫にハンドタオルが入ってあった。

▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう 落語協会
19歳で入門、芸歴41年目、1997年3月真打昇進。怒りん坊なキャラクターで、オヤジの小言マシーンぶりは渋谷らくごでも爆笑を生んでいる。先日娘さんに餃子をつくってもらった。毎朝5時と9時に2回、イヌの散歩をする。イヌが日陰を好んで歩くので、

▽立川談洲 たてかわ だんす 落語立川流
2017年1月入門、現在5年目、2019年12月二つ目昇進。ヒップホップ基本技能指導資格を取得している。最近、「羽生結弦」さんから立て続けに迷惑メールが送られてくる。立川笑二さんとディズニーランドにいく約束をしている。

▽玉川太福 たまがわ だいふく 日本浪曲協会/落語芸術協会
1979年8月2日、2007年3月入門。サウナが大好きで、日本中に行きたいサウナがある。銭湯に行ってストレスを発散する。崎陽軒のシウマイ弁当の魚が変わったことにすぐ気がついた。地方へ旅に行くときに携帯電話の充電器を忘れてしまう。

レビュー

文:森高恵史(渋谷の大学に通う大学生。落語だけでなく、文学・歴史・能楽・映画なども好き。卒論執筆に追われる日々…)

立川笑二-つる
橘家圓太郎-算段の平兵衛
立川談洲-あくび指南
玉川太福/玉川みね子-男はつらいよ第二十三作 翔んでる寅次郎

立川笑二「つる」

  • 立川笑二さん

この前、実家に帰った笑二さん。実家の冷蔵庫にはお父さんの宝物?であるハンドタオルが入っていたというマクラから本編へ。
隠居のところにやって来た八っつぁんであるが、いつもと違ってどこか元気がない。隠居が訳を尋ねれば、たばこ屋の娘であるみっちゃんに面白い話を披露したが失敗してしまったと言う。隠居はどんな話なのかと尋ねたが、まったく話が伝わってこない。そう、この八っつぁんという男はアホなのである。隠居は八っつぁんに面白い話として、鶴の話をする。隠居は「昔は鶴とは言わず、首長鳥と言った」「昔、唐土(もろこし)の彼方から首長鳥の雄が一羽、”つーー”と飛んで来て止まった。そこへ、首長鳥の雌が”るーー”と飛んで来て、これも止まった。このことからつる(鶴)と呼ぶようになった」と言う。この話を気に入った八っつぁんは、みっちゃんを喜ばせようと披露しに行くが…という噺です。
やさしい笑顔の笑二さんと八っつぁんの個性が見事に合わさったのが印象的でした。

橘家圓太郎「算段の平兵衛」

  • 橘家圓太郎師匠

とある村の庄屋はお花という妾がいたが、妻はこの事を知り、お花を村から追い出すよう迫られる。流石に村から追い出すのは忍びないと感じた庄屋は、「算段の平兵衛」と呼ばれる様々な問題の仲裁を生業としている男にお花を嫁がせた。平兵衛は博打で金を使い果たし、生活に行き詰まるようになる。平兵衛は妻に美人局をさせ、庄屋から金をゆすろうと計画する。計画は首尾よく成功するかと思われたが、平兵衛が庄屋の前に現れたところで庄屋は驚いて死んでしまう。困った平兵衛の立てた算段とは…
この噺は「くすぐり」と呼ばれる演者がギャグなどを用いて笑わせる部分が非常に少ない。また、噺の内容も利己主義的な登場人物たちが、死体という名の責任を押し付け合う、人間の負の側面が全面に出ている。これを演者は陰惨に感じさせず演じる必要があり、演者の技量が求められる演目である。 しかし、ここはベテランの圓太郎師匠、サスペンスな内容ながらも要所に入る「くすぐり」の笑いが良いアクセントになって、落語の世界に引き込まれてしまった。

立川談洲「あくび指南」

  • 立川談洲さん

ある日、男は友人に会う、友人はこれから習い事に行くところらしい。男は友人に一緒に来ないかと誘われる。この友人はこれまで色々な習い事をしてきたが、どれも続かない。男は友人に何を習いに行くのかと聞けば、友人は「あくび」を習いに行くと言う。男は興味本位で友人について見学に行くことになった。そんなわけで、先生の家につき「あくび」の稽古が始まる…
談洲さんのテンポの良い喋りと噺の中で演じられる「あくび」の抑揚が印象的でした。サゲまで小気味よく噺が進み、短く感じるほど聞き心地が良く、私もあくびはいつまでも出そうになかったです。

玉川太福 玉川みね子「男はつらいよ第二十三作 翔んでる寅次郎」

  • 玉川太福さん

トリの太福先生!あの名作映画「男はつらいよ」です。
人物が多数登場し、場所や場面の移り変わりが多く、それらを映像と音声で表現する映画を浪曲で再現できるのか?!そのような心配はご無用。太福先生の迫力のある声や豊かな表情で、渥美清演じる寅さんや桃井かおり演じる入江ひとみなど様々な人物を登場させます。また、みね子師匠の三味線が加わることで、物語にリズムが生まれ、テンポ良く場所や場面が移り変わります。人の声と三味線の伴奏のみで映画を再現させた、太福先生とみね子師匠お2人の技術の高さに驚きました。浪曲の新たな可能性を感じた演目でした。

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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