2023年6月23日(金)~6月26日(月)
浪曲映画祭─情念の美学2023 完結篇
映画12作品、浪曲8口演 ⦿6月1日(木)13時より販売開始!
映画ミーツ浪曲=「浪曲映画」の再発見
1929年映画は無声からトーキーになったことで、演出の大転換を迫られる。
多くの時代劇は人形浄瑠璃や歌舞伎のように、義太夫が節と語りで物語を回す日本の伝統的な演劇形式を踏襲、義太夫に代わる役割を浪曲や琵琶語りに託した映画─浪曲トーキー、琵琶トーキーなるものが登場する。
1928年のラジオの全国放送化、SPレコードの本格普及で大ブレイクした、寿々木米若の浪曲「佐渡情話」に目を付けた日活が、浪曲「佐渡情話」(1934年)を映画化して大成功を収める。
それを契機に各社は、あたかも今日の映画界がベストセラー小説やマンガを映画化するように、浪曲口演付きや、浪曲・講談演目を脚本とした映画を次々と製作、山中貞雄、成瀬巳喜男、中川信夫、森一生、斎藤寅次郎、三隅研次、加藤泰らも含め、マキノ雅弘の『次郎長三国志』を頂点として、その傾向は浪曲人気が衰える一九五〇年代まで続いた。
浪曲は大衆芸能の王者として終戦後まで君臨するが、浪曲の物語に通底する義理人情、通俗的で情緒的な価値観は、近代的自我を目指した知識人、夏目漱石、芥川龍之介、永井荷風らに忌み嫌われ、文芸の世界では「浪花節」という言葉が否定的なレッテルとして最近まで頻繁に使われていた。
しかし従軍画家を務めたことで戦争協力を問い詰められ、フランスから終生帰国することのなかった藤田嗣治が、テープレコーダーに声で残した遺言のなかで、しばしば浪曲の節に乗せて語るほどに、浪曲は日本人に浸み込んでいた。
ラジオによって隆盛を極めた浪曲人気はTVの登場で急速に衰退する。だが浪曲師・国友忠が「二葉百合子、三波春夫、村田英雄という人たちは、浪曲の自在性を生かし、それぞれ見事に独自の節調を作り上げて成功した、現代の浪曲家だ」と書いているように、浪曲は変容しつつも日本人のDNAを受け継いできた。
私たちのDNAを探り当てる旅も、今回が完結篇となる。
浪曲師=天中軒雲月、広沢菊春、東家孝太郎、玉川太福、国本はる乃、天中軒景友、富士綾那、玉川奈々福、
曲師=広沢美舟、沢村まみ、玉川みね子
トークゲスト=川上アチカ(映画監督)、港家小そめ(浪曲師)
チケット、6月1日(木)13時より販売開始!!
「浪曲映画─情念の美学2023」会場=ユーロライブ
主催=ユーロスペース 企画=ユーロスペース+シネマ5 企画監修=玉川奈々福
映画提供=国立映画アーカイブ 東映 KADOKAWA 松竹 日活 東風 神戸映画資料館 協力=国立映画アーカイブ マツダ映画社
■ローカルツアーは今年も企画中
◎料金 ➀映画+浪曲 一般 2400円 学生‣会員 2000円 高校生1200円
➁映画のみ 一般 1400円 学生‣会員 1200円 高校生 800円
③「絶唱浪曲ストーリー」一般 1800円 学生‣会員 1200円 高校生 800円
⦿回数券 10000円──➀を2000円、➁を1000円でご覧いただけます(③は対象外)。6月10日より3階ユーロスペース受付にて発売。
6月23日(金) 映画と浪曲師 | |
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13:00 開映 | 「東海道は兇状旅(いそぎたび)」監督=久松静児 主演=藤田進、相馬千恵子、羅門光三郎、東武蔵・・・・〽天中軒雲月「安兵衛婿り」曲師=広沢美舟 |
15:30 開映 | 「新越後情話」監督=石山稔 主演=羽島敏子 宗方規子 逢初夢子、寿々木米若 〽広沢菊春「姿三四郎」曲師=広沢美舟 |
18:00 開映 | 「絶唱浪曲ストーリー」監督=川上アチカ 主演= 港家小そめ 港家小柳 玉川祐子 沢村豊子 トーク=川上アチカ、港家小そめ |
6月24日(土) 天保水滸伝を味わう | |
12:00 開映 | 「月の出の決闘」監督=丸根賛太郎 主演=阪東妻三郎(天堂小彌太)、青山杉作(大原幽学)・・・・〽東家孝太郎「紋三郎の秀」曲師=沢村まみ |
14:30 開映 | 「血斗水滸伝 怒濤の対決」監督=佐々木康 主演=市川右太衛門、中村錦之助、大川橋蔵 ・・・・〽玉川太福「天保水滸伝笹 川の花会」曲師=玉川みね子 |
17:30 開映 | 「天保水滸伝」監督=山本薩夫 主演=平幹二朗、丘ルリ子、香山美子、高橋悦史 |
6月25日(日) 三波春夫 生誕百年 | |
12:00 開映 | 「旅笠道中」監督=佐々木康 主演=川橋蔵、千原しのぶ、三波春夫 ・・・・・〽国本はる乃「忠治関宿」曲師=広沢美舟 |
14:30 開映 | 「雲右ヱ門とその妻」監督=安田公義 主演=三波春夫、浦路洋子、月丘夢路、石黒達也 ・・・・〽天中軒景友「大前田英五郎 島抜け」曲師=広沢美舟 |
16:55 開始 | トーク「三波春夫とは何者だったのか」玉川奈々福 聞き手 田井肇、堀越謙三(無料) |
18:00 開映 | 「大利根無情」監督=的井邦雄 主演=田村高廣、三波春夫(平手造酒)、近衛十四郎 |
6月26日(月) フィナーレ──浪曲映画特選 | |
13:00 開映 | 「世紀は笑ふ」監督=マキノ雅弘 主演=杉狂児、轟夕起子、広沢虎造 ・・・・〽富士綾那「"お楽しみ"」曲師=広沢美舟 |
15:40 開映 | 「新佐渡情話」監督=清瀬英次郎 主演=黒川弥太郎、花井蘭子 |
17:25 開始 | トーク「追悼 山根貞男」玉川奈々福、田井肇、堀越謙三(無料) |
18:10 開映 | 「実録 忠臣蔵」監督= 牧野省三 主演= 尾上松之助、巴うの子(口演)・・・ 〽玉川奈々福「金魚夢幻」曲師=広沢美舟 |
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天中軒雲月 てんちゅうけん・うんげつ
岐阜県郡上市八幡町出身。1968年四代目天中軒雲月に入門して月子を名乗る。1974年岐阜県郡上八幡にて「名披露目年明け披露」、1981年名古屋・御園座にて「東西顔見世豪華浪曲名人大会」幹部昇進披露。2008年五代目天中軒雲月を襲名。現在(一社)日本浪曲協会理事。師匠ゆずりの「赤穂義士銘々伝 安兵衛婿入り」ほか、忠臣蔵の外伝、「佐倉義民伝」「決戦巌流島」などを手掛ける。
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玉川奈々福 たまがわ・ななふく
奈川県横浜市出身。1995年二代目玉川福太郎に曲師(浪曲三味線)として入門。2001年より浪曲師としても活動。2006年奈々福で名披露目。さまざまな浪曲イベントをプロデュースする他、自作の新作や長編浪曲も手掛け、他ジャンルとの交流も多岐にわたって行う。(一社)日本浪曲協会理事。2018年度文化庁文化交流使として、中欧、中央アジア七か国で公演を行った。第11回伊丹十三賞受賞。 -
玉川太福 たまがわ・だいふく
新潟県新潟市出身。2007年、二代目玉川福太郎に入門して太福を名乗る。同年11月、浅草木馬亭にて初舞台。2013年、浅草木馬亭にて名披露目。2015年 第一回渋谷らくご創作大賞、2017年 第72回文化庁芸術祭 大衆芸能部門 新人賞受賞。年間50公演を超える独演会を開催し、浪曲定席木馬亭をはじめ、落語の定席にも出演。古典の名作を継承する一方、さまざまな自作新作も手掛ける。 -
国本はる乃 くにもと・はるの
お前はピアノって顔より三味線って顔だな」筑波市にいる父の友人の言葉がきっかけとなり九才で浪曲と出会う。太棹の三味線が掴めずまずお歌から、と騙され台本を貰い半年で成田山新勝寺奉納演芸会で初舞台。高校を卒業と同時に浪曲協会の門を叩き正式にプロとして活動開始。 -
東家孝太郎 あずまや・こうたろう
トゥバ共和国の倍音唱法「ホーメイ」や口琴などを用いた民俗音楽家としての活動を経た後、ホーメイと発声の酷似している浪曲に魅せられ、二代東家浦太郎の浪曲教室に通う。2011年正式に東家浦太郎一門に弟子入り。2015年年季明け。浪曲の魅力は倍音にあり、との信条から「浅草倍音フェス!」などを企画する。 -
富士綾那 ふじ・あやな
五代目東家三楽門下。2013年入門。勉強会を最低でも年に一度はやらねばと思っている。椎橋綾那(本名)として役者の活動も行う。最近の出演はチェルフィッチュ、宮部純子(五反田団)とのユニット・シガール姉妹など。オフィススリーアイズ所属。
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さらに浪曲映画祭初登場!
⦿広沢菊春(ひろさわ きくはる)
北海道出身。中学2年頃に浪曲を知り、その後二代目広沢菊春の落語浪曲に魅せられる。2011年、澤孝子に入門し勇人を名乗り、同年初舞台。2015年、年明け披露。2022年、大師匠である広沢菊春の名跡を三代目として襲名、それを機に曲師である妻も広沢美舟に改名した。二代目広沢菊春や澤孝子の演目を継承する一方、広沢派・梅中軒派・岡本派・早川派の廃絶した演目を復曲中。
⦿天中軒景友(てんちゅうけん かげとも)
高校在学中にシナリオライターの学校に通い物語制作を学ぶ。19歳より10年間、スペインでギター奏者として活動した後、ファーストアルバム「GARNATA」の発売と共に帰国。2008年、ロックバンドTUBEの楽曲「Paradiso」プロモーション時にサポートメンバーとして参加。ドコモFoma904iのCM内にてギター演奏。テレビアニメ「あたしんち」テーマソングCD「情熱の赤いバラ」カップリング曲のアレンジとギター演奏を担当。篠笛奏者、鯉沼廣行および狩野泰一のアルバムに楽曲提供。2017年、浪曲師・五代目天中軒雲月に入門。2021年、国立演芸場にて年季明け披露。現在は各地の歴史・説話を基に浪曲台本の制作と実演を全国で実施中。
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曲師の方々
玉川みね子 たまがわ・みねこ
酒田市出身。二代目玉川福太郎との結婚を機に、1976年に山本太一に入門。1978年木馬亭で初舞台。以後は福太郎の弟子・玉川太福をはじめ多くの演者と共演、TV・ラジオにも出演している。
広沢美舟 ひろさわ・みふね
1989年生れ、千葉県は佐倉市出身。義太夫から三味線に興味を持ち、木馬亭に通ううち浪花節に魅せられる。2015年に日本浪曲協会主催の三味線教室に通い、同年6月曲師沢村豊子に入門。翌年4月木馬亭にて初舞台。
沢村まみ さわむらまみ
神奈川県相模原市出身。歌舞伎や落語、講談など様々な芸に触れるなかで浪曲に出会い、『浪曲は人間の叫びだ』と感じ衝撃を受ける。浪曲を彩る師匠のお三味線の音色に惚れ、曲師を志すことを決意、2019年3月、沢村豊子に入門。翌年6月、木馬亭に初舞台。