渋谷らくごプレビュー&レビュー
2016年 12月9日(金)~13日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
アーカイブ
- 2023年10月
- 2023年09月
- 2023年08月
- 2023年07月
- 2023年06月
- 2023年05月
- 2023年04月
- 2023年03月
- 2023年02月
- 2023年01月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年09月
- 2022年08月
- 2022年07月
- 2022年06月
- 2022年05月
- 2022年04月
- 2022年03月
- 2022年02月
- 2022年01月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年09月
- 2021年08月
- 2021年07月
- 2021年06月
- 2021年05月
- 2021年04月
- 2021年03月
- 2021年02月
- 2021年01月
- 2020年12月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年09月
- 2020年08月
- 2020年07月
- 2020年06月
- 2020年05月
- 2020年04月
- 2020年03月
- 2020年02月
- 2020年01月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年09月
- 2019年08月
- 2019年07月
- 2019年06月
- 2019年05月
- 2019年04月
- 2019年03月
- 2019年02月
- 2019年01月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年09月
- 2018年08月
- 2018年07月
- 2018年06月
- 2018年05月
- 2018年04月
- 2018年03月
- 2018年02月
- 2018年01月
- 2017年12月
- 2017年11月
- 2017年10月
- 2017年09月
- 2017年08月
- 2017年07月
- 2017年06月
- 2017年05月
- 2017年04月
- 2017年03月
- 2017年02月
- 2017年01月
- 2016年12月
- 2016年11月
- 2016年10月
- 2016年09月
- 2016年08月
- 2016年07月
- 2016年06月
- 2016年05月
- 2016年04月
- 2016年03月
- 2016年02月
- 2016年01月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年09月
- 2015年08月
- 2015年07月
- 2015年06月
- 2015年05月
- 2015年04月
プレビュー
二つ目の落語家3人に、浪曲の玉川奈々福さんが登場。渋谷らくごでしかあり得ない番組です。
落語が気になっているという若い男女のみなさん。
落語とたわむれる男、春風亭昇々さん。抱腹絶倒、喜怒哀楽、身体のすべてのツボを刺激する、一筋縄ではいかない才能。
今年、さまざまなドラマを見せてくれた昇々さんが、いよいよトリ公演を迎えます。
▽入船亭小辰
いりふねてい こたつ
24歳で入門、現在入門9年目、2012年11月二つ目昇進。
冷蔵庫とクーラーのない部屋で前座時代を過ごす。私服の雰囲気が師匠である扇辰師匠の感じに似ているとの噂。
▽柳亭小痴楽 りゅうてい こちらく
16歳で入門、芸歴12年目、2009年11月二つ目昇進。落語芸術協会の二つ目からなる人気ユニット「成金」メンバー。
Macのノートブックを買うも上手く使いこなせず。打ち上げではお酒を飲んですぐ寝るらしい。ただいまWOWOW動画では、小痴楽さんのシブラクインタビュー公開中。落語と真剣に取り組むようになったきっかけ、落語以外の趣味など赤裸々に話している。
▽玉川奈々福 たまがわ ななふく
1995年曲師(三味線)として入門、芸歴22年目。浪曲師としては2001年より活動。2012年日本浪曲協会理事に就任。
「シブラクの唸るおねえさん」。奈々福さんの浪曲をみて、「浪曲をもっと聴きたい」と思う人が多数。いま新人の曲師の沢村美舟さんを絶賛修行中。
▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。
Youtubeでアバンギャルド昇々として動画を配信中。狂気が溢れている。節目節目でしっかりと着物を新調する。12月に発売される「成金本」では、CGアートが発表されるとのこと。
レビュー
入船亭小辰(いりふねてい こたつ)-鰍沢
柳亭小痴楽(りゅうてい こちらく)-付き馬
玉川奈々福(たまがわ ななふく)/沢村美舟(さわむら みふね)-赤垣源蔵徳利の別れ
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)-べっぴんさん?
破壊と創造のアート落語
アート系のイベントが増え、美術鑑賞が身近で気軽になったような気がします。知識が無くても楽しめるし、楽しんでるうちに自然と詳しくなっていく過程もまた楽しい。最近の落語ブームもそれに近いかと思います。教科書に載ってる画家の作品を肩肘張って見たところで、そんなに面白くないですが、気楽に頭を柔らかく見ると同じ絵なのに色々発見があったり想像が膨らみます。伝統芸能と意気込むより、まずは気楽に触れてみるのにぴったりなのが渋谷らくご。気楽だけど、巨匠の作品級が勢揃いでした。
入船亭小辰×モネ「睡蓮」
-
入船亭小辰さん
『鰍沢』
瀬戸内海のアートで有名な直島にある地中美術館で衝撃を受けたのが、モネの睡蓮でした。とにかく行くまでに時間がかかる。気が遠くなるほどにかかる。ようやく睡蓮の展示室に辿り着く頃には、恋でもしてんじゃないか級の心のざわめき具合でした。落語は通常何の噺をするか分からないので、観たいのになかなか巡り会えない噺があるんです。「鰍沢」はそんな噺のひとつ。ようやく巡り会えた感たるや、地中美術館の睡蓮の如し。
今日の出演、普通の人は私1人とマクラで言ってましたが、んな訳ない。遅刻をした小痴楽さんが上がりづらい雰囲気をつくると言って始めたのが「鰍沢」。サスペンスホラーです。噺の舞台となる雪山の中の極寒の情景がそのままに、空気で肌がピリッと痛くなる感覚に襲われました。ごくごく平凡な噺家さんならこんな噺を一発目にしないだろうし、したとしても”寒さ”の意味は絶対違う。デジタル技術要らずの体感型4D落語と言ってしまおう。
自然光を利用しているモネの展示室では、天候や時間でも見える印象は変わるので、抽象的な絵なのに本物の睡蓮の庭にいるような感覚に陥り、池や緑の匂いがしてきそうです。「鰍沢」はモネの展示室で感じた、感覚を補完しながら五感全部で楽しむ感覚を思い出しました。
柳亭小痴楽×ビートたけし・ヤノベケンジ「アンガー・フロム・ザ・ボトム」
-
柳亭小痴楽さん
『付き馬』
小豆島の坂手港から急坂を登り、息が切れてきた頃に突如古井戸から現れる怪物アート「アンガー・フロム・ザ・ボトム」。2013年の瀬戸内国際芸術祭で造られた作品です。井戸から現れては水を吐く無邪気な怪物は、今では社に守られ、美井戸神社として祀られています。遊び心と神々しさと恐ろしさと周りの景色の素晴らしさとが、絶妙に融合した作品です。
小痴楽さんの落語は、私の中で不思議ランキング最上位です。ハイスピードなマクラで言いたい事をガンガン喋りまくる姿は、まさにモンスター。かなりな江戸調の古典落語で心地良いのに、雰囲気はとても現代的。でもその現代的な部分は全く江戸の雰囲気は壊さない。不思議。
「付き馬」は金が無いのに吉原で豪遊する噺ですが、この主人公ほんとダメ人間でどうしょうもない。でも、小痴楽さん演じる主人公は許せる。ダメっぷり許せる。腹黒く悪い企みはあるものの、五月の鯉の吹き流しといった具合にハラワタが無さそうだから許せるのか。とにかく、小痴楽さんの無邪気な雰囲気が妙に合うんです。愛すべきモンスターっぷりはまさに美井戸神社の御神体でした。
玉川奈々福/沢村美舟×ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」
-
玉川奈々福さん・沢村美舟さん
『赤垣源蔵 徳利の別れ』
ルーブル美術館は心震える作品が多すぎて、よくルーブル熱なる病に冒されます。ルーブル熱を悪化させてでも見るべき作品が、この「民衆を導く自由の女神」。生々しい戦いに向かう風の中で輝く女神が印象的です。華やかな時代かと思ってたロマン派の時代も、案外民衆の戦いは続いていて決して安定してなかったようです。
仇討ちに立ち上がった四十七士の姿がこの絵に重なりました。目的も立場も違いますが、使命に立ち上がる勇敢な姿は共通です。迫力たっぷりに物語を歌いあげる奈々福さんの姿は、まさにトリコロールの旗を掲げながら突き進む、四十七士を率いる自由の女神。歌声の迫力が自由の女神の前進力を表現してるようで、その前進力がより一層仇討ち後に待っている別れ(=死)を際立たせ、モヤモヤした感情を残しました。この儚さに悲しくなるわりに、つい忠臣蔵って言われると心踊る矛盾…。
奈々福さんはかっこいいイメージばかりありましたが、奉公人の女の子を演じる姿が可愛いのなんの。かっこよくて可愛いだなんて最強すぎて、もはやただの反則です。
春風亭昇々×ダリ「聖アントニウスの誘惑」
-
春風亭昇々さん
『べっぴんさん?』
キリンのような細長い脚の「宇宙象」。ふにゃふにゃの時計と並んで絵画や彫刻で目にする機会の多いモチーフです。ダリの作品には非日常と日常が混在しています。シュルレアリスム。この絵の前で、あぁこうゆう品種の象いるよね…と妙に納得した記憶があります。
昇々さんの落語は現実、それもかなり平凡な日常が舞台になってますが、現実味を帯びない不思議さがあります。べっぴんさんが”誰”なのか分からない。色々ヒントが散らばっているのに、一向にべっぴんさんが”誰”なのか分からない。奇跡なまでに分からない。とにかくべっぴんさんが“誰”だか分からないというのがこの噺。シュルレアリスムよりは断然現実寄りですが、変人が普通の顔をして落語のストーリーに登場するので、一見普通の日常風景ですか、その中に脚の細くて長い象が何食わぬ顔で生息してる感覚です。あぁこうゆう品種の象いるよね…ってダリの絵の前で感じたそのままです。
昇々さんの血走った目がダリのと重なることがあります。絵画だけでなく多方面で作品を残しているダリのように、昇々さんの作品も落語だけでなく多岐にわたります。そして、今まで理解したような気でいたダダイズムって、こうゆうことかと合点。近〜現代美術がちょっと理解できた気がします。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」12/10 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ