渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2019年 4月12日(金)~16日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

4月15日(月)20:00~22:00 雷門小助六 柳家小八 春風亭昇々 柳家花緑

「渋谷らくご」花緑シリーズ!2019春

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

初心者向け:柳家花緑師匠が登場する月曜日、渋谷らくごならではのメンバーを揃え、最初から最後まで見どころたっぷりの落語会となりました。マクラや噺の引き出しの多い職人 小助六師匠、まくらなしで古典に挑む王道 小八師匠、奮闘する二つ目 昇々さん。硬軟織り交ぜての番組の最後を飾るのは、柳家花緑師匠!忘れられない夜になりそうです。

▽雷門小助六 かみなりもん こすけろく
17歳で入門、芸歴20年目、2013年5月真打ち昇進。インスタグラムをやっているが、ほとんどの写真が猫、とにかく猫を可愛がっている。先月、酔って帰り猫にちょっかいをだしていたら、反撃をうけて手が傷だらけになった。

▽柳家小八 やなぎや こはち
25歳で柳家喜多八に入門、芸歴16年目、2017年3月真打ち昇進。最近IQOSからプルームテックに変えた。ファッションにこだわっていて、コートの裏地が派手。帽子もおしゃれ。高座前はモンスターを飲んで集中する。意外に大食い。

▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。楽屋で仲間を驚かせるためパンツ一枚になることがある。酔っ払うと不思議なメールを送信してしまい、周りを困らせてしまう。おしゃれボーダーシャツを着がち。

▽柳家花緑 やなぎや かろく
15歳で祖父である五代目柳家小さんに入門、22歳で真打昇進、戦後最年少で真打ち昇進を果たす。芸歴33年目。なんでも挑戦を続けおもしろがる、最高の努力家でもある。ぴあアプリで連載していた「私の落語人生」がとても面白い。弟子の台所おさん師匠よりも年下という面白い師弟関係。

レビュー

文:月夜乃うさぎTwitter:@tukiusagisann 猫とレトロな喫茶店が好きです

雷門小助六(かみなりもん こすけろく)-禁酒番屋
柳家小八(やなぎや こはち)-お菊の皿
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)-天災
柳家花緑(やなぎや かろく)-謎のビットコイン/火焔太鼓

 今月は平成最後の4月で最後の春。演者さんや客席の方から春らしい装いが目立つ。前説のサンキュータツオさんも春らしいジャケットでオシャレ感を漂わせていて、売れている芸人さんらしい華を感じる。ご出演の落語家さんも、トリの花緑師匠をはじめ華のある落語家さんばかり4人が登場した。4月1日は新年号「令和」が発表された。令和は万葉集の梅の花32首の序文から採用されたとのことで、新年号まで春らしさを感じる。

雷門小助六師匠「禁酒番屋」

  • 雷門小助六師匠

    雷門小助六師匠

 小助六師匠は、楽しそうなお酒の席のお話をされる。花見や酒盛りが終わった時期に新緑のような着物とは、なんて粋なのだろうか。猫好きにとっては、小助六師匠の同居猫ちゃんの話題も聞くのが楽しみだが、今回も1匹の猫ちゃんが話題に登場した。しなやかな手を客席に見せながら、猫ちゃんとじゃれた手の引っ掻き傷の話を武勇伝とする小助六師匠がたまらなく可愛らしく面白い。
 「禁酒番屋」はタイトル通り禁酒が話題だ。古き良き映画「ゴットファーザー」のシリーズは、禁酒法時代に、マフィアが暗躍するのだが、「禁酒番屋」はその江戸落語版とも言ったら過言だろうか。ただ暗躍するのはアルパチーノ扮するマフィアではなく庶民の酒屋さんで、殺人も銃撃戦も起こらず、禁酒法(禁酒のおふれ)という出来事を笑いとばす所が落語の良さだと思う。酒屋さんは色々とお酒の密輸をしようとするが、すぐ見抜かれるが怒られて逃げ帰って済むのも落語らしさを感じる。 小助六師匠、本当にお酒を美味しそうに呑むしぐさがリアルでお酒の会社からCMが来てもおかしくないのだが、同時に名前が出てきたカステラも美味しそうで、卵をたっぷり使ったカステラが食べたくなる。

柳家小八師匠「お菊の皿」

  • 柳家小八師匠

    柳家小八師匠

 小学生の頃に、ルブランの「アルセーヌルパン」、ポーの「黒猫」などの怖い本が流行った。しかし「四谷怪談」や「番町皿屋敷」は、特に流行らなくても、気が付いたら自分も同級生も、親も先生も誰もが知っている身近な幽霊噺だった。「お菊の皿」は「番町皿屋敷」を明るくユーモラスにした古典落語である。特に小八師匠は、声の調子を調整してご隠居さんとして「番町皿屋敷」の全貌を語る箇所がおもしろい。お蔭で前半のお菊さんの「1枚、2枚、3枚」とお皿を数えている所がぞっとするほど怖い。滑稽な幽霊としてキャラが立っているお菊さんも後半は見られるものの、前半の本寸法の古典落語らしい語りが小八師匠らしくて最高だ。寄席演芸で怪談というと「怪談の正雀師匠」や「怪談の松鯉先生」が夏の風物詩のようになっているが、小八師匠の「お菊の皿」も、別なタイプの夏の怪談噺として、今後何度も拝聴したい一席だ。

春風亭昇々さん「天災」

  • 春風亭昇々さん

    春風亭昇々さん

 上品なグレーの着物に、黒い羽織で高座に登場した春風亭昇々さん。昔の少女漫画の主人公のようにキラキラした瞳で会場を見て話しだす。この古典落語だと思えないような昇々さんと昇々さんの古典落語にハマる人が何年か前より続出している。しかし、ハマる側もハマられる側も、予想外で、時として「天災」に遭ったような気分の場合もあるかと聞く機会もある。若手の落語ブームを軽薄と捉えてしまう側と楽しむ側は賛否両論らしい。    昇々さんは、まさしく最近の若手落語家ブームの渦中を生きている落語家さんで、新作のような古典落語も昇々さんの持ち味だ。
先日BS放送で「ノストラダムスの大予言」という本が驚異的に売れた背景についての放送で、落語ブーム同様、ノストラダムスの大予言ブームへの対応が興味深かった。「予想外に売れてしまった」と天災に遭ったかのような出版社側の戸惑いや、1999年に災害が降って来るとノストラダムスに予言された街の「風評被害」など、あらゆる対応が取材された。そのとき、街の人たちの反応を見ていて、予想外のことを怒っているより、楽しんでイベントにして解決策にしたなどでやりすごした良さも取材された。落語でも、昇々さんという型にはまらない才能を、まずは拝聴できることに感謝して、楽しもうと「天災」を拝聴しながら改めて思う。

柳家花緑師匠「ピットコイン・火焔太鼓」

  • 柳家花緑師匠

    柳家花緑師匠

 トリは今風のスタイリッシュな外見と軽妙な声の花緑師匠。さっそくご自分より先にあがった後輩落語家さんたちをイジる様子は、オモチャを与えられた少年のようだ。
 新作落語もお得意なようで、「ピットコイン」は短いながらも客席を沸かせる。たのしい。
軽さを心地よく感じられる。次の火焔太鼓は夫婦の恐れや喜びを滑稽にリズミカルに表現される。花緑師匠はお弟子さんの多い師匠なのだが、こんなに面白い師匠なら、弟子入り希望が大勢なのもうなづける。楽しかったので、是非、花緑師匠独演会や一門会にもお邪魔してみたい。皆様にも出逢ってほしい花緑師匠の2席でした。

【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」4/15 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ
写真の無断転載・無断利用を禁じます。