渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2020年 8月14日(金)~18日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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8月17日(月)18:00~19:00 柳亭市童 入船亭扇里

「ふたりらくご」二つ目×真打 聴き耳落語会

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プレビュー

 聞き耳とは「よく聴こうとして耳を澄ます」こと。この二人は一歩一歩、自分のペースで自分の落語を築き上げているサグラダ・ファミリア型の落語家です。過度にサービスしない、なんなら笑わせようという気もそんなにない。だからこそ、彼らの落語には「本気」の人たちが出てきて、心の底からジワジワ楽しめるのです。
 笑わなくてもいい、ただじっくりと聴いて広がる想像の世界に身を委ねてほしい。配信の時代にマッチした会でもあります。

▽柳亭市童 りゅうてい いちどう
18歳で入門、芸歴10年目、2015年5月二つ目昇進。最近、公式ウェブサイトができた。ダイエットをしようと、ランニング用品を買い揃えたが、初日に膝を痛めてしまった。先日PARCO劇場での「大地」をみて感動した。先日、「もののけ姫」を映画館でみて感動した。

▽入船亭扇里 いりふねてい せんり
19歳で入門、芸歴25年目、2010年真打ち昇進。食べられない時期は競馬で稼いでいた。熱狂的なベイスターズファン。髪の毛を短くしても、寝癖がつく。大蒜を食べると倒れてしまう。最近は麺を茹でる時は、フライパンをつかう。

レビュー

文:あさみTwitter:@asm177 ライター。落語初心者。夏期休暇はhuluで動画三昧。

柳亭市童(りゅうてい いちどう)-寝床
入船亭扇里(いりふねてい せんり)-質屋蔵

連日の猛暑。加えて今年はマスクもつけているため暑さは倍増です。そんな季節でも、自宅の涼しい部屋でオンライン視聴できるのは良いですね。特に今回の市童さん・扇里師匠は、声がとても心地よく耳が楽しい落語。外の暑さを忘れて、没頭できる1時間です。

柳亭市童さん「寝床」

  • 柳亭市童さん

ほぼマクラはなしで「寝床」へ。義太夫を趣味にしている大家の旦那が、みんなを集め義太夫を披露しようというところから話は始まります。使用人の一人である繁蔵は長屋のみんなに「聴きに来てほしい」と話して回りますが、旦那の義太夫があまりに下手なので仕事や家庭の事情にかこつけて誰も聴きにきません。仕方がないと旦那は使用人たちに聴かせようとしますが、今度は仮病を使われ断れてしまいます。頭にきた旦那は、長屋は全員明日をもって退去、店の者は解雇すると言い出しますが…。
ここまで多くの人に断られる義太夫ですから、きっともちろん繁蔵も「聴きたくない」と思っている一人だろうと予想できます。落語の見せ方によっては、旦那を馬鹿にするような素振りを繁蔵を通して表現することもできるかもしれません。しかし市童さんの繁蔵から伝わってくるのは、一貫した誠実さです。長屋の人たちの嫌がる気持ちが理解できる一方で、旦那が披露したくてうずうずしている様子もないがしろにできない。だからこそ旦那が「店の者に聴かせることにしよう!」と言い出したときに思考停止してしまったり、断る理由のない店の者を一生懸命かばったりしたのでしょう。決して笑わそうとしていない繁蔵の誠実さが、おかしさへと繋がっていました。

入船亭扇里師匠 「質屋蔵」

  • 入船亭扇里師匠

こちらもほぼマクラなしで「質屋蔵」へ。とある質屋の店主は番頭を呼び出し、最近店に悪い噂が立っているらしいと話します。その噂というのが「夜な夜な三番蔵にお化けが出る」というもの。店主はお化けを信じておらず、お化けの正体を「質にとった品物の気」だろうと予想します。とはいえ信用問題に繋がっては困ると、番頭にどんなお化けが出るか見極めてほしいと頼みますが、番頭は大のお化け嫌い。仕方がないので助っ人を呼ぶことにしましたが…。
観ていて感じたのは、扇里師匠の仕草の素早さです。扇里師匠は穏やかな印象で、決して急いでいるようには見えないのに、どうしてか早さを感じる。終始不思議に思いながら見ていましたが、その謎は終演後のサンキュータツオさんの解説で判明しました。タツオさん曰く、扇里師匠は手の形・位置が綺麗で、すぐにどこにでも動かせるように計算されているのだとか。手の動きが綺麗で無駄がないからこそ、素早く感じられたのかもしれません。次回扇里師匠を拝見する際は、手の位置・動きに注目してみたいと思いました。

【この日のお客様の感想】
「ふたりらくご」8/17 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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