渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2021年 11月12日(金)~17日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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11月16日(火)19:00~21:00 弁財亭和泉 柳亭市童 玉川太福* 古今亭文菊

「渋谷らくご」 異常な人たち

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プレビュー

◎トークゲスト:青木伸広(神保町 らくごカフェ主宰)

 やはりこのご時世となっても、芸の世界に身を投じた人は、一般の常識などが少し外れた「異常な人」でもあります。
 もちろん、本日の四名、みなだれよりも常識をわきまえている演者さんたちですが、それでも自分の「業」を追求した人たちです。
 創作の女王 和泉師匠は異常に人間観察の名手、市童さんは、普通の落語を普通にやって、異常に面白いという才能の持ち主。
 浪曲の太福さんはドラマチック演出に秀でて、人情の機微の表現が異常に面白いです。
 トリの文菊師匠は、40代前半とは思えぬ異常性、これは観ればわかります! 

▽弁財亭和泉 べんざいてい いずみ
2005年8月入門、現在17年目、2021年3月に真打昇進、三遊亭粋歌を改め「弁財亭和泉」となった。28歳で突如会社を辞めて落語家になった。よくいくスーパーは、SEIYUやLIFE。益田ミリさんの漫画「スナックキズツキ」のドラマ化を楽しみにしている。

▽柳亭市童 りゅうてい いちどう 落語協会
18歳で入門、芸歴12年目、2015年5月二つ目昇進。インスタグラムにラーメンの写真を積極的にアップする。手が素敵だと褒められたことがある。たまにiPhoneのパスコードを忘れてしまうことがあり、そのたびに初期設定する。

▽玉川太福 たまがわ だいふく 日本浪曲協会/落語芸術協会
1979年8月2日、2007年3月入門。サウナが大好きで、オフピークを狙いサウナに通い続ける。日本中に行きたいサウナがある。最近はオロポとともにバナジューにもはまっている。先日、法螺貝を買ってみた。

▽古今亭文菊 ここんてい ぶんぎく
23歳で入門、芸歴19年目、2012年9月真打昇進。私服がおしゃれで、楽屋に入るとまず手を洗う。前座さんからスタッフにまで頭を下げて挨拶をする。まつげが長い。最近ダイエットに挑戦中。大学では漕艇部に所属、熱中していたが、オリンピックでボートは見ない。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@toyono2010 (ともちん。シンガポール育ち、帰国子女。落語、漫画、読書、映画が大好き!)

弁財亭和泉(べんざいてい いずみ)-匿名主婦只野人子
柳亭市童-大工調べ(りゅうてい いちどう)
玉川太福(たまがわ だいふく)/玉川みね子(たまがわ みねこ)-オオイカ東下り
古今亭文菊(ここんてい ぶんぎく)-宿屋の富

7周年記念興行、おめでとうございます!
プレビューによると今日は「異常な人たち」の会、もちろん良い意味で。落語という想像の世界で、非現実的な体験が出来るかも!
本日のトークゲスト・青木伸広さん(落語カフェ主宰)がおっしゃる通り、「異常というのは、すなわち天性」。落語家になるべくしてなったという天性の演者さんばかりの素晴らしい会で、今日はもう期待しかない!

弁財亭和泉師匠「匿名主婦只野人子」

  • 弁財亭和泉師匠

「泉で和む弁天様」というような美しいお名前の和泉師匠。
女性目線での創作落語には共感する点が多く、二つ目時代(三遊亭粋歌さんだった頃)からの大ファンです!
さて、今日のお噺にはカリスマ主婦インフルエンサーが登場!パート仲間と一緒に、隣町のスーパーに半額お惣菜ハンティングに行きます。お惣菜をお得にゲットするテクニックが満載、カニクリームコロッケが食べたくなりますね!
「丁寧な暮らしなんて、リンネルの呪いよ」など、名言が沢山出てきます。
最後には、失敗を恐れないこと、時には自分を変えて違う事を楽しもう、という教訓がちゃんと盛り込まれていました、お見事。
真打になられてから観たのは、今日が初めて。これからもパワーアップした芸に期待大です!

柳亭市童さん「大工調べ」

  • 柳亭市童さん

市童さんと言えば、柳家緑太さんとの落語ラップコラボが好きでYoutubeを良く観ていました。生の高座は久しぶりー。
和泉師匠とは打って変わって、古典落語。激しくリズミカルな長ーい啖呵が印象的な「大工調べ」です。さすがラッパー。
家賃滞納のカタに道具箱を押収されてしまい、仕事が出来なくなった大工の与太郎さん。見かねた棟梁が大家さんに交渉に行きますが上手く行かず、とうとう大炎上。与太郎さんのおとぼけぶり&最初は下手に出る棟梁のソフトな出だしから一転、一見優しげで可愛いらしい市童さんが顔を真っ赤にして激昂する棟梁のブチ切れぶりにビックリ!メリハリの効いた演技が凄い!
気の弱い与太郎さんが棟梁のマネをして、一生懸命毒づくところも笑えました。

玉川太福さん「オオイカ東下り」

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠

サウナ大好き、太福さん。今日も「ととのった」感じで大変GOOD!
さて、「渋谷らくごは実験の場」とのことで7周年記念公演の今日は、ちょっと不思議な演目を披露。なんと忠臣蔵の舞台は海の中、人物はみんな魚になって登場!なんでー!?(「仮名手本忠臣蔵」ではなく、「サカナ手本忠臣蔵」だそうです。ギョギョギョ)
イカになった大石蔵之介など、キャラのデザインが想像し辛く、なんとも言えない気分になりました。まるで、なんかシュールな前衛映画を観たような感じ。太福さんの不気味面白い魚介類のモノマネも見物でした。
「武士の心は〜武士が〜知る〜、イカの心は〜カキが〜知る」と、節をつけて美声で唸る太福さん。でも、良く考えると意味が分からない??あまりの不思議ワールドに、もう忠臣蔵はどうでも良くなってしまいました。
「太福さんは天才!by青木さん」だそうですが、ほんとにチャレンジャー。会場がザワついていました。。

古今亭文菊師匠「宿屋の富」

  • 古今亭文菊師匠

「戦前の匂いがする」by青木さん、「80歳ぐらいの名人が生き血を吸って甦った感じ」byタツオさん、という印象の文菊師匠(バンパイア!?)。正に、非現実的な雰囲気をまとっての登場。太福さんと同い年なんて、信じられなーい!
今日は「宿屋の泊り客が富くじを見事に当てる」という、景気の良いお噺。富くじ当選発表の舞台は湯島天神ですが、番号が呼ばれる時のざわめき、緊張感、当選に驚き喜ぶ男の表情などが、文菊師匠の熱演でアリアリと目に浮かぶようでした!
年末ジャンボ宝くじに掛けたお噺でしょうか?もうそんな季節なんですねー。


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文:桑原佑実

弁財亭和泉師匠

  • 弁財亭和泉師匠

弁財亭和泉さん、そして匿名主婦只野人子から溢れるウーマンパワー、かっこよかったです。洗濯物は畳む必要なんてないんだよっっの一言、個人的にご褒美おかずのカニクリームコロッケにも執着せず自分のペースを保つ余裕。
なるようになる、ならない時はならない。それもまた一つの覚悟で、それが彼女の輝きなのだなと。そのカリスマ性に、弟子入りしたくなる気持ちもわかります。
話し方と間が面白く、たくさん笑いながら見させていただきましたが、最後には足るを知ることの大切さに気がつき、私も愛のビンタを受けた気分です。

柳亭市童さん

  • 柳亭市童さん

マルエツからタイムスリップして江戸時代。柳亭市童さんの大工調べ。時代は変われどこういう人、いるなあ~と共感しながら聞いていました。面倒見の良い先輩、なんだか抜けているけど可愛がりたくなる後輩、何かにつけて屁理屈くさい人物。一言めでそれぞれの人柄を表現する話し手さんはすごいなあと改めて関心しつつ、つい応援したくなってしまう与太郎のキャラクターに引き込まれました。

玉川太福さん

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠

そして玉川太福さん、玉川みね子さんのオオイカ東下り。
お名前が連名だったので、どんな内容なのかなと思っていたところ、三味線のライブミュージック!落語はいろいろなスタイルがあるんだなあ〜と素人感満載でワクワクしていたら、色々と思いがけない展開に思考が少々置いてきぼりに!笑
これはどこの何の話なんだ!?海?魚?牡蠣?サムライ・・?所々に説明を挟んでもらったこともあり、後半はいろいろとつっこみながら、目も耳も楽しませていただきました。水中で我慢比べするくだりが印象的で、でんじろう先生の実験もつい調べてしまいました。あと、浜焼きが食べたくなりました。
まるでミュージカルみたいな、新しい楽しさを発見です。

古今亭文菊師匠

  • 古今亭文菊師匠

都会のネオンのような印象を残したお二人の後に、落ち着いた雰囲気で登場された古今亭文菊さん。話し手さんの人柄のコントラストがはっきりしていて、それもまた面白かったです。
宿屋の富、調べてみたら有名な話のようでしたが、初心者の私は初めてでした。序盤でお客が大金持ちだという話を、宿屋のご主人と一緒になってすっかり信じてしまった私。そのせいかずっと店主サイドで話を聞き、最後はラッキー&爽快な良い気分でした。
一等が当たった時のリアクションと、小分けにした千両の重みを感じるズダーーンがツボに入り、大笑いしたお気に入りの場面です。

ボリューム感のあるあっという間の2時間、今回も大変楽しませていただきました。