渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2022年 1月14日(金)~19日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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1月15日(土)17:00~19:00 立川笑二 橘家文蔵 田辺いちか 柳家花緑

「渋谷らくご」渋谷らくご特選会

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プレビュー

 演者の名前も演目もわからない、そんな初心者にも、そして落語好きにもたまらない公演が「渋谷らくご特選会」です。
 渋谷らくご大賞を二年連続受賞した笑二さんは常に落語に新しい視点を持ち込める名手。文蔵師匠はすべての演目が十八番という緻密な演出で飽きさせない名人。講談 いちかさんはいま大活躍の講談師、端正な語り口がやさしく想像の世界へ誘います。
 トリは高座に座った瞬間から光り続ける人気の花緑師匠です。どんな演目で公演を締めくくるのか、楽しみです!

▽立川笑二 たてかわ しょうじ 落語立川流
20歳で入門、芸歴11年目、2014年6月に二つ目昇進。「2020年渋谷らくご大賞 おもしろい二つ目賞」受賞。20年以上、自分でバリカンを入れて頭を剃っている。先日鞄を開けたまま自転車を漕いでいたので、スマホを紛失してしまった。

▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう 落語協会
24歳で入門、芸歴35年目、2001年真打昇進。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。最近つくった料理は「とりわさ」と「牡蠣バターの酒蒸し焼き」。近所のスーパー「いさみ屋」での特価品を見て、献立を組み立てる。

▽田辺いちか たなべ いちか 講談協会
2014年に入門、芸歴8年目、2019年3月に二つ目昇進。2020年渋谷らくご「楽しみな二つ目賞」受賞。いま講談師を描いた漫画「ひらばのひと」に夢中。ツイッターでは「キラキラ」や「クラッカー」の絵文字を多用する、最近は「ビックリマーク」も多用する。

▽柳家花緑 やなぎや かろく 落語協会
15歳で祖父である五代目柳家小さんに入門、22歳で真打昇進、戦後最年少で真打ち昇進を果たす。芸歴35年目。なんでも挑戦を続けおもしろがる、最高の努力家でもある。最近はベジタリアンの食事に挑戦している。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@toyono2010 (ともちん。シンガポール育ち、帰国子女。落語、漫画、読書、映画が大好き!)

立川笑二(たてかわ しょうじ)-権兵衛狸
橘家文蔵(たちばなや ぶんぞう)-寝床 田辺いちか(たなべ いちか)-村越茂助 誉れの使者
柳家花緑(やなぎや かろく)-妾馬

あけましておめでとうございます。
私は、お正月に江戸東京博物館に行ってまいりましたよ。江戸の街並みが再現された大規模展示が素晴らしかったです。落語を聴く時、背景を想像するのに役立ちそうですね。ちなみに吉原の展示に家族連れが殺到!何かと思ったら「鬼滅の刃ー遊郭編」の影響だそうです。。

さて、今日は初心者も落語好きにもたまらない特選会とのこと。
期待の若手・笑ニさん、名人・文蔵師匠、カッコいい女性講談師いちかさん、オーラ半端ない天才・花緑師匠。新春に相応しい華やかな会、楽しみです!

立川笑二さん「権兵衛狸」

  • 立川笑二さん

渋谷らくご大賞を二年連続受賞した笑二さん。年末は沖縄に帰省されたせいか、まくらでは地元・読谷村の思い出話が炸裂!つくづく「田舎暮らしは良いなぁー、と実感した」とのこと。
というわけで、今日は田舎のお噺。
ある田舎町で畑が荒らされたり、おにぎりが盗まれる事件が続発。そして、権兵衛さんは毎晩「権兵衛、権兵衛」と戸を叩く音に悩まされて。。さては狸のイタズラ?「懲らしめてやる!」と怒った権兵衛さんvs狸の戦いはいかに?
とっても可愛いお噺でした。子だぬきの様に可愛いお顔の笑ニさんに、正にピッタリ!笑ニさんを観るのは本当に久しぶりでしたが、今回は特に、表情や演技に吸い込まれそうになりました!
凄い!もっと面白くなってる!若手落語家さんの力と進化に驚きました。

橘家文蔵師匠「寝床」

  • 橘家文蔵師匠

最近はコロナ禍にも慣れっこになってしまった、という文蔵師匠。怖がってばかりより、人生は楽しまないとダメですよね。というわけで、今日は「お稽古事に夢中!」というお噺。
江戸時代〜明治時代に素人義太夫が流行ったそうですが、お月謝を弾んでくれる裕福な旦那衆のお稽古だと師匠も甘くなる様で。。下手な義太夫を皆に聴かせて自己満足、なんて周りはいい迷惑!まるで「ジャイアンのリサイタル」状態です。というわけで、家族も奉公人も長屋の連中も、招待された人は皆、仮病や多忙を装って逃げ出してしまいます。
旦那の義太夫の会に誰も来ないことをオドオドと言い訳する奉公人・重蔵、そして旦那の怒りが徐々にMaxに!オドオドvsイライラという、このギャップ!文蔵師匠の演じ分けが最高です。又、文蔵師匠のお酒と肴を味わう演技が本当に本当に美味しそう!さすがお料理大好きな文蔵師匠らしいー、と思いました。

田辺いちかさん「村越茂助 誉れの使者」

  • 田辺いちかさん

2020年渋谷らくご「楽しみな二つ目賞」受賞の、いちかさん。漫画「ひらばのひと」は私も読んでます!
お正月はテレビで大間のマグロ漁のドキュメンタリーを楽しんだそうです。漁師vsマグロの戦いは武士の一騎討ちの様だとか。軍記物語を読む時の参考になるのでしょうか?女性がキリリと勇ましいお噺を読む姿には惚れてしまいそうですね。
さて、今日の主人公・村越茂助は勇敢だけど学がない武士。文字が書けず馬鹿にされていた茂助のピンチを家康が救い、茂助は難しいミッションを成功させ家康に恩返しする、という素敵なお噺。コミカルな場面あり、勇ましい場面あり、くるくる変わる表情がカラフルな絵巻物の様な一席でした。

柳家花緑師匠「妾馬」

  • 柳家花緑師匠

ド天才・花緑師匠。去年「頭山」を聴いて衝撃を受けました!とってもシュールで、まるでダリの絵画を見ているようでした。
今日はお正月らしく、出世のお噺です。
八五郎の妹・お鶴は殿様に気に入られて側室に。やがて、殿様のお世継ぎを産んだお鶴を、八五郎がお城に訪ねて行くことに。お殿様の前で緊張して失敗する八五郎に笑ってしまう一方、家族思いな姿にはジンと来てしまいます。昔は身分が違うと、親子兄妹でもなかなか会えなくなってしまうのですね。。
八五郎のおとぼけぶり、慌てぶり、酔っぱらっての泣き笑いを、弾ける様な表情で軽快に演じる師匠。この花緑師匠の妾馬を観た山田洋次監督は「寅次郎とサクラの様だね」と大絶賛だったとか。(と、照れながらプチ自慢する師匠がチャーミング!)
また今晩、これからご出演の緑太さんを褒めるなど、お弟子さん思いの優しい一面もチラリ。本当に素敵な花緑師匠でした!