渋谷らくごプレビュー&レビュー
2022年 1月14日(金)~19日(水)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
三遊亭兼太郎 さんゆうてい けんたろう
弁財亭和泉 べんざいてい いずみ
蜃気楼龍玉 しんきろう りゅうぎょく ※長講60分
渋谷らくごではトリを取り続ける龍玉師匠。その落語はまるで、このユーロスペースで観る映画のように、どこか人間の哀しさを描き同時に人間賛歌でもあるような、業を感じさせるものばかり。そう、単館上映の映画を観るよう。
本公演はそんな龍玉師匠に長講60分一本勝負をメインディッシュに、常に楽しい高座を繰り広げる兼太郎さん、そして創作の女王 和泉師匠が、落語の別の顔を見せてくださるようになっています。
聴いたあとに思わずだれかに喋りたくなる、脳内で何回も再生してしまう。そんな、頭にこびりついて離れない公演になると思います!
▽三遊亭兼太郎 さんゆうてい けんたろう 圓楽一門会
23歳で入門、芸歴7年目、2017年二つ目昇進。ツイッターでは、人のツイートにいいね!つけがち。インスタグラムには、落語会のチラシを載せがち。知らない街でも街中の定食屋さんに挑戦する。昨年末に食べた年越しそば、牡蠣蕎麦にしてみた。
▽弁財亭和泉 べんざいてい いずみ 落語協会
2005年8月入門、現在17年目、2021年3月に真打昇進、三遊亭粋歌を改め「弁財亭和泉」となった。28歳で突如会社を辞めて落語家になった。よくいくスーパーは、SEIYUやLIFE。益田ミリさんの漫画「スナックキズツキ」のドラマ化を楽しみにしている。
▽蜃気楼龍玉 しんきろう りゅうぎょく 落語協会
24歳で入門、芸歴25年目、2010年9月真打ち昇進。身長が181cmと背が高い。ツイッターではプライベートの様子をツイートすることがなく、いまどのように過ごしているか知ることができない。ものを食べずにひたすら呑むとの噂。
レビュー
三遊亭兼太郎(さんゆうてい けんたろう)-元犬
弁財亭和泉(べんざいてい いずみ)-コンビニ参観/箱の中
蜃気楼龍玉(しんきろう りゅうぎょく)-真景累ヶ淵 豊志賀
◇三遊亭兼太郎さん「元犬」
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三遊亭兼太郎さん
何人かでそれぞれ見つけてきたマイベスト面白名前を発表して、その面白さを競う落語家名前デュエルできそうだなと思いました。
兼太郎さんのコミカルな人物(と犬の)表現に魅了されました。軽〜く語っているようで、口調とか間とか表情で聴く人たちの笑いのツボを丁寧に押さえてくる感じ、好きだなぁ。目を丸くして驚く表情は、明るいパワーと見ただけで自然に笑ってしまう独特の魅力があって特に印象に残っています。
犬から人間に変身するシーンは、目の前で見ているのにCG使いましたか?と思うほどイリュージョンに近い表現でした。顔をブルンブルン振っている時の首の動きが非常にしなやかでかつ可動域が広くて、首のアイソレーション(ダンスのトレーニングのひとつ)上手なんだろうなと思いました。
アンジャッシュのコントで馴染んでいた、すれ違いのお笑いって江戸時代からあったんですね!時代が変わっても面白いと感じるものが一緒ってなんかすごいなぁ。
◇弁財亭和泉師匠「コンビニ参観」「箱の中」
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弁財亭和泉師匠
こんなにも現代的でリアルで、可笑しいけど本当にありそうなシチュエーションを、落語で表現するということ自体が既に面白いです。また、和泉師匠の明るく突き抜けるような声が主人公ボイスという感じがして好きです。
息子を溺愛するあまり授業参観ならぬバイト参観しちゃうお母さんと、断捨離にハマって息子や娘の思い出の品などを容赦なく捨てにかかるお母さん。
前者からは行き過ぎた愛情の狂気を、後者からは良かれと思って望まれてもいないことを進んでやり続けちゃう怖さ、善意の狂気みたいなものを感じました。
それでいてどちらの噺にも根底には常に親子の愛情や家族のぬくもりがあってほっこり笑えました。また、和泉師匠の演じる人々にはみんな可愛らしさとあたたかみがあって、人々の掛け合いをずっと見ていたくなりました。
息子のバイト先にフルフェイスのいかついヘルメット被った和服の母登場は、想像しただけでおもしろすぎました。
また、ウチの家でも、時間とお金を貢ぎ込んだ推しのグッズや青春の思い出まみれアイテムは、実家に放置した場合確実にゴミ箱行きになるなと危機感を感じました。
◇蜃気楼龍玉師匠「真景累ケ淵 豊志賀」
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蜃気楼龍玉師匠
惹き込まれすぎて帰り道も噺の世界から全然抜け出せず、なんだかずっと下を向いて歩いてました。
怪談の落語は初めて聴いたのですがこんなに怖いんですか……!?徐々に心拍数が上がって怖さが増していく感じ、経験したことの無い感覚でした。 嫉妬に狂い変貌していく豊志賀、もう途中から豊志賀の声聞いているだけでもゾワッとしてくるくらい怖かったです。
怖い話は得意ではないので、怖い話を聞いた後はだいたい「うわ〜、聞かなきゃ良かったな〜」となるのですが、今回は怖さに震えながらもなぜだか「いいもん聞けたなぁ……」という気分になりました。
聴き終わってから時間が経っても龍玉師匠のジトーっとした語り方が耳から離れません。
龍玉師匠はどんな気持ちでこの噺を稽古して、どんな気持ちで語っているんでしょうか。
そしてこのシリーズ、全編聞いたら寿命縮みませんか??でも、全編聴きたくなってる自分がいます。この「すんごい怖いのに面白い」みたいな感覚、やみつきになりそうです。
新年一発目にヤバいの聴けてよかったァ