渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2022年 3月11日(金)~16日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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3月14日(月)19:00~21:00 立川寸志 古今亭文菊 古今亭駒治 立川吉笑

「渋谷らくご」吉笑三題噺六日間 day4

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プレビュー

立川寸志 たてかわ すんし
古今亭文菊 ここんてい ぶんぎく
古今亭駒治 ここんてい こまじ ※2017年創作大賞
立川吉笑 たてかわ きっしょう

開演前に募集した三つのお題をおもとに、即興で噺をこしらえる「三題噺」。現在の「渋谷らくご大賞」そして「渋谷らくご創作大賞」の立川吉笑さんが挑む六日間、本日はその四日目です。
DAY4は、立川流 談志師匠のマゴデシ世代の寸志さんを皮切りに、若返りの薬を飲んだ、美しい70歳のような文菊師匠、
そして鉄道落語というニッチなジャンルを開拓し創作らくごの道一本で生きる、2017年創作大賞の古今亭駒治師匠が登場です!
 吉笑さんは、90分後、4本目の世界初披露の創作らくごを発表します! 

▽立川寸志 たてかわ すんし 落語立川流
44歳で入門、芸歴11年目、2015年二つ目昇進。編集マンをやめて、落語家になった。チラシの構成から、文章まで編集マンの能力を遺憾なく発揮する。電車で座れればすぐに本を開く。「仁義なき戦い」を見ると必ず眠くなってしまう。

▽古今亭文菊 ここんてい ぶんぎく 落語協会
23歳で入門、芸歴20年目、2012年9月真打昇進。私服がおしゃれで、楽屋に入るとまず手を洗う。前座さんからスタッフにまで頭を下げて挨拶をする。まつげが長い。最近ダイエットに挑戦中。大学では漕艇部に所属、熱中していた。細身のジーンズを履きがち。

▽古今亭駒治 ここんてい こまじ 落語協会
24歳で入門。芸歴18年目、東京都渋谷区出身。鉄道をこよなく愛する。いま公式ウェブサイトにて「○○前駅」と称される駅を調査研究する「前駅のすべて」を執筆中。「駅すぱあと」を開発しているヴァル研究所の人たちとともに鉄道落語を作成した。

▽立川吉笑 たてかわ きっしょう 落語立川流
26歳で入門、現在芸歴12年目、2012年4月二つ目昇進。「渋谷らくご大賞2021」&「創作大賞 2021」初のW受賞者。もともとは酒豪だったが、酒断ちをしていまは炭酸水で過ごす。最近は料理に挑戦、先日は「ベーコンと舞茸とアスパラと春菊のパスタ」をつくった。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@toyono2010 (ともちん。シンガポール育ち、帰国子女。落語、漫画、読書、映画が大好き!)

立川寸志(たてかわ すんし)-鰯地蔵(ナツノカモ作)
古今亭文菊(ここんてい ぶんぎく)-長屋の花見
古今亭駒治(ここんてい こまじ)-海芝浦
立川吉笑(たてかわ きっしょう)-チェアマン
  ~日本武道館・マッサージチェア・卒業~

会場で三つのお題を募集して即作るお噺、「三題噺」。以前、一度観たことがありますが、噺家さんの頭の回転の早さに驚きでした!

三題噺についてもっと知りたいと思い、私も三遊亭白鳥師匠のDVDを視聴、吉笑さんのDay1〜3ドキュメンタリーも観て、予習バッチリ。今日はDay4なので乗りに乗ってる頃ですね!
他、2017年創作大賞の古今亭駒治師匠、立川流の寸志さん、70歳の名人がヴァンパイア化して若返った様な?文菊師匠が登場とバラエティ豊か!
さあ、名作が生まれる瞬間に立ち会えるでしょうか?吉笑さん、がんばれ〜!

立川寸志さん「鰯地蔵(ナツノカモ作)」

  • 立川寸志さん

今日の寸志さんは珍しく古典風創作落語を披露!(擬古典?)
これは「ご当地落語」というプロジェクトの結果に出来たお噺。落語家さん達が山形県を訪ね、現地での見学や交流を元に、その街についての落語を創るという取り組みだそうです。
今日は米沢市・小野川温泉についてのお噺。そこに実在する「豆腐地蔵」から着想を得たそうです。(お地蔵さん近くの豆腐屋さんは、こんなアコギなことはしていませんよ!という断りが事前にありました。笑)
お金儲けを企む二人の男。それは「鰯をお供えすると願いが叶う」という「鰯地蔵」を建て、門前でお供え物の鰯を売るというもの。お地蔵さんが流行って人々が沢山来る(=鰯が沢山売れる)ことを期待していますが、何と集まって来たのは猫!最後はドタバタになってしまいます。。
このご当地落語プロジェクト、楽しそう!もっと知りたい!と思ったらYouTubeでレポート動画や他のお噺も公開しているそうですよ。早速観ようー!観光プロモーションにもなるなんて、創作落語の可能性とパワーを感じました。

古今亭文菊師匠「長屋の花見」

  • 古今亭文菊師匠

末廣亭にご出演後、渋谷らくご開演までの空き時間に文化村ル・シネマで濱口竜介監督の「偶然と想像」を観てきた、という文菊師匠。「会話劇の短編集で落語っぽい、素晴らしかった!」とお気に入りの様子。お目が高い!私も大好きな作品です(「ドライブ・マイ・カー」より好きかも。。)。
映画について語る、いつもより長めで熱のこもったまくら。濱口監督や吉笑さんの創造力に、師匠も刺激を受けたのでしょうか?「実は、創作にも興味がある」とのこと。是非!文菊師匠の作ったお噺、聴きたいー!でも今日のところは古典落語、春にふさわしい花見のお噺です。
長屋連中が上野でお花見。が、お酒の代わりに薄い番茶、かまぼこと卵焼きはお漬物で代用という貧しさ。これでは酔えないし、盛り上がらない。でも、そこは落語の登場人物達、驚きのナチュラルハイぶりで乗りきります。ゴージャスでなくても、コスパ良く楽しみたいのは今も昔も同じですよね!
「昔も今も人は変わらないなー」と笑ってしまうのが、古典落語を現代人が演じる醍醐味。そんな大切なことに気付かせてくれる、素敵な文菊師匠の一席でした。

古今亭駒治師匠「海芝浦」

  • 古今亭駒治師匠

前駅研究家(「〜前」という駅と駅名施設(読売ランド前駅と読売ランドなど)がどれぐらい離れているか距離測定をする研究家)として、タモリ倶楽部にも出演された駒治師匠。
今日の舞台は、実在する謎の駅「海芝浦」。東芝の社員しか利用することが出来ない駅だそうです。路線図で調べたらJR鶴見線に本当にあった!東芝の会社敷地内にある駅だそうです(前駅どころか、中駅!?) さすが鉄道ツウの駒治師匠。
その駅に潜入しようとする鉄道マニアの中学生。でも東芝にツテはなし。。というわけで、担任の先生と東芝社員である先生の彼女が結婚してくれれば良いのに!とあの手この手で縁結びを試みます。今回は駒治師匠のボイパとラップも聴けましたよ!
鉄道落語というジャンル?で、マニアックな作品を生み出す独特な世界観。とっても好きです!

立川吉笑さん「チェアマン ~日本武道館・マッサージチェア・卒業~

  • 立川吉笑さん

今日のお題は、日本武道館・マッサージチェア・卒業。
順調で綺麗にまとまると良いな、と思う反面、苦しむ吉笑さんを見たい意地悪な気持ちも、イヒヒ。
そして出来たお噺は、なんとなんと奇想天外、シュールな作品!
近未来、電気不足のため電動だったものが手動に移行。自動販売機の中にも人がいます。ある意味、SF?
元ボクサーの主人公は、椅子に入ってマッサージをする人間マッサージチェアとして就職!人間椅子になるための椅子専門学校も出てきます。(江戸川乱歩?)
元ボクサーなので得意のパンチでほぐし、時にはクリンチで包み込んで人々を癒します。ところがある日、彼に座ったホームレスが、自分の元コーチの落ちぶれた姿だと気付きますが。。
最後は素敵な人情噺となり、綺麗にまとまりました!凄い!これ本当に90分で創ったの!?もしかして、ブラッシュアップすれば名作として残るのでは?
頭の回転の早さに加えて、汗だくで真っ赤になってシャドウボクシングを繰り広げるアクティブな吉笑さんに、なんか感動してしまいました。知性だけでなく、体力も凄いのですね!