渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2022年 5月13日(金)~18日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

5月15日(日)14:00~16:00 柳家あお馬 柳家小八 春風亭昇々 立川吉笑

「渋谷らくご」古典×創作 立川吉笑トリ公演

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

 3月には「渋谷らくご」全6日間で三題噺を披露した立川吉笑さん。現在の「渋谷らくご大賞」「渋谷らくご創作大賞」受賞者です。この人をいま聴かずにいつ聴くか! トリ公演でぜひご堪能ください。常に期待を上回るトリックスターです。
 古典本寸法、古典の楽しさをストレートに味あわせてくれるあお馬さん、ちょっと斜に構えて楽しませてくれる小八師匠、常に全力のひとり遊びを見せてくれる昇々師匠。お目当て以外の演者さんの魅力にも気づいていただける公演となるでしょう。

▽柳家あお馬 やなぎや あおば 落語協会
25歳で入門、芸歴8年目、2019年2月二つ目昇進。ツイッターにイラストを投稿することがある。記念写真を撮るときためらってしまう。喫茶店が好きで、新規開拓も欠かさない。先日ドトールで、ドラえもんの声真似を稽古した。

▽柳家小八 やなぎや こはち 落語協会
25歳で柳家喜多八に入門、芸歴19年目、2017年3月真打昇進。ゆっくり考え事をしながらタバコを吸う、最近はアイコスを吸っているが、誰かに喫煙しているところを見られるととっさにアイコスを隠しがち。良い天気の時は、「良い天気」とツイートをしがち。

▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう 落語芸術協会
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2021年5月真打昇進。「2016年渋谷らくご大賞」受賞、「2020年渋谷らくご創作大賞」受賞。先日思いっきり車をこすってしまい、車の左側面に大きな傷をつけてしまった。最近、漆喰に挑戦した。

▽立川吉笑 たてかわ きっしょう 落語立川流
26歳で入門、現在芸歴12年目、2012年4月二つ目昇進。「渋谷らくご大賞2021」&「創作大賞 2021」初のW受賞者。もともとは酒豪だったが、酒断ちをしていまは炭酸水で過ごす。今年の夏もひたすら耐えるダイエットに挑戦をすることにした。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@toyono2010 (ともちん。シンガポール育ち、帰国子女。落語、漫画、読書、映画が大好き!)

柳家あお馬(やなぎや あおば)-松竹梅
柳家小八(やなぎや こはち)-佐々木政談
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)-妄想カントリー
立川吉笑(たてかわ きっしょう)-床女坊

今月、一番観たい映画は「トップガン・マーヴェリック」。トム・クルーズは今回教官として登場し、テーマは世代交代です。が、新世代パイロットどころか未来の戦闘機は無人になってしまうかも?
吉笑さんが先月高座にかけた「落語家」も、未来の噺家さんは全てロボットになってしまうというお噺でした。吉笑さんの近未来的で奇想天外な創作には全く驚き!頭の中を覗いてみたいです。先々月の三題噺も面白かったし、本当に今一番好きな噺家さんかも!プレビューにも「この人を今聴かずに、いつ聴くか⁉︎」とありますが、全くその通りです!
創作といえば、今日は昇々師匠も登場。他、イキイキと演じる古典が素敵なあお馬さん、洒脱でカッコいい小八師匠も登場なので、今日はとっても魅力的な会になること間違いなし!

柳家あお馬さん「松竹梅」

  • 柳家あお馬さん

野球が大好きで、学生時代に球場でアルバイト経験もあるあお馬さん。コロナ禍や戦争など暗いニュースの合間に届く、大谷翔平選手活躍のニュースが癒しとか。本日はとうとう100号ホームラン、おめでとうございます!というわけで、今日はおめでたいお噺。
松っぁん、竹さん、梅さんという縁起の良い名前の職人さん3人組が、婚礼に招待されます。となれば、是非縁起の良い余興を披露しよう、と物知りのご隠居さんにおめでたい唄を習って練習しますが。。
せっかくの余興を台無しにしてしまう、という「花見の仇討ち」を思わせるようなドタバタ噺。あお馬さんの、ちょっとマヌケな演技や失敗して慌てふためく様子が可笑しかったです。
おめでたいといえば、あお馬さんの先輩方は今、新真打披露の真っ最中。あお馬さんも「将来、自分の真打披露では。。」という妄想をショート創作落語風に語って下さいましたが、これが面白かった!プレビューには「古典本寸法」とありましたが、才能あり!もっとあお馬さんが創ったお噺を聴きたくなりました!

柳家小八師匠「佐々木政談」

  • 柳家小八師匠

YouTubeの数学動画をよく観るという、知的な小八師匠。某外資系証券会社の入社試験も解いてみたとか。頭を使うことは楽しいですよね。
今日のお噺は、賢い子供が出世のチャンスを掴むサクセスストーリー・佐々木政談。
江戸南町奉行の佐々木信濃守がお忍びで市中を歩いている時、子供達が「お奉行ごっこ」をして遊んでいるのに出くわします。奉行役の子供がなかなか賢いので興味を持ち、その親子と家主を奉行所に出頭するよう命じますが。。(急に出頭命令が来たら大人達は真っ青ですよね!)
見所は、佐々木信濃守と子供の問答!次々と質問に答える賢く生意気な子供と、厳格そうなのに子供に負けじとするちょっと愛嬌があるお奉行様を演じ分ける小八師匠の絶妙さが良かったです!子供に一本取られて「うーん、勝ちたいー」と唸る場面には、クスッとしてしまいました。

春風亭昇々師匠「妄想カントリー」

  • 春風亭昇々師匠

今日3年ぶりぐらいに渋谷でお祭りを見た、という昇々師匠。確かにコロナ禍ではお祭りやイベントが次々と中止になり、喪失感がありましたよね。というわけで、夏休みの喪失感満載、いきなり「夏が終わる。。」で始まるお噺・妄想カントリー(まだ5月なのに。。)。
とある田舎の村で、夏休みの思い出に青春(アオハル)っぽいロマンチックなことを全力で求める主人公・ユミちゃんと、それに付き合わされる同級生・田吾作くん。しかし、ユミちゃんの妄想のアオハルはかなりシュール!突然出てくる鯉のモノマネ、下り坂を自転車で疾走しながら白目をむいて絶叫する(多分)ゆずの歌。
会場がざわつき、引きつった笑いが四六時中聴こえていました。久しぶりの昇々ワールド。笑いと恐怖の体験は、相変わらずインパクト大でした!

立川吉笑さん「床女坊」

  • 立川吉笑さん

プレビューによると、絶賛ダイエット中の吉笑さん。ダイエット方法はただ一つ「消費カロリーが摂取カロリーを上回る」という論理と忍耐のみ。
吉笑さんの創作は星新一のショートショート的なひねりが魅力ですが、今日のテーマは「論理」と「解決法」。
3人の旅人が川を渡ろうとしますが、あいにく小型の渡し船しか無く、全員一気に渡ることは出来ません。何回かに分けなければいけませんが、相性が悪く一緒に渡れないペア、太りすぎで1人でしか乗れない者、ペットに(食べられちゃうから一緒に出来ない)狼と羊までいて、船頭さんは頭が痛い!解決出来そうになると、次々に課せられる条件追加。難度は益々上がって行きます!さあ、解決法はいかに!
ちょっと難しいお噺でしたが、聴き終わった後に不思議な達成感がありました。脳が喜んでる!毎回思うのですが、どうしてこんなお噺思いつくの!なお、このお噺は、渋谷らくご2021年創作落語大賞受賞作品なんですね。素晴らしい。。

ーーー
さて、このお噺を聴いて、ある映画の中に出てきた「土砂降りの日にバス停に、病気の老人、好きな女の子、親友がいたとする。自分は車を持っているが、もう一人しか乗れない。助けるなら誰?」という心理テストを思い出しました。
映画中での正解は、「親友に車のキーをあげて老人を送らせ、自分は好きな女の子とバス停に残る」でした。。いかがでしょう?
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
写真の無断転載・無断利用を禁じます。