渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2023年 2月10日(金)~14日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

2月11日(土)17:00~19:00 立川らく兵 林家きく麿 柳家勧之助 玉川太福

「渋谷らくご」若手競演!: 「月刊太福マガジン」 ★配信あり 

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

劇場での観覧をご希望の方は前売券をお求めください。
劇場観覧前売券 ご購入はこちらから ※公演前日23:59に販売を終了いたします。

当日券は窓口でお求めください。開演1時間前より販売を開始いたします。
(窓口でご購入いただいた回数券は当日券としてお使いいただけます。前売券完売の際はご使用いただけませんので予めご了承ください。)

★本公演はオンライン配信視聴を行います。
オンライン配信チケット ご購入はこちらから

 創作らくごで令和の爆笑王に君臨する きく麿師匠に、創意工夫の貴公子 勧之助師匠。さらには真打を目前に自身の落語を切り開くキレキレのらく兵さんと、いまが聴きどきの若手競演。トリは今年から復活の「月刊 太福マガジン」の2月号、浪曲師 玉川太福さんの高座で大満足間違いなしの公演です!ここ一ヶ月の身辺雑記を浪曲化。この芸能の万能性を体感してください。 初心者もぜひぜひ足を運んでくださいね!

▽立川らく兵 たてかわ らくへい 落語立川流
29歳で入門、芸歴17年目、2012年4月二つ目昇進。都内に寒波が押し寄せた日、朝シャツを干したところ、カチコチに凍ってしまった。先日駄菓子屋にいって梅ジャムとモロッコヨーグルを大人買いした。

▽林家きく麿 はやしや きくまろ 落語協会
24歳で入門、芸歴27年目。2010年9月真打昇進。観光地などにおいてある顔ハメ看板には、必ず顔を入れる。ぬか床を大事に育てている。月末になるとスマホの通信制限と戦っている。楽屋にお菓子やお弁当が置いてあるとテンションがあがる。

▽柳家勧之助 やなぎや かんのすけ 落語協会
2003年21歳で柳家花緑師匠に入門、現在芸歴20年目、2018年9月真打昇進。ヤクルトスワローズファン。ツイッターでニュータッチのカップ麺「凄麺 愛媛八幡浜ちゃんぽん」のリツイートをおこなう、地元のソウルフードを再現した味だったようだ。

▽玉川太福 たまがわ だいふく 日本浪曲協会/落語芸術協会
1979年8月2日、2007年3月入門。サウナが大好きで、日本中に行きたいサウナがある。銭湯に行ってストレスを発散する。インスタグラムでは娘さんの絵をアップしている。先日、インスタグラムアカウントにログインできなくなり、3日間格闘した。

レビュー

文:高祐(こう・たすく) Twitter:@TskKoh

立川らく兵-火焔太鼓
林家きく麿-陳宝軒
柳家勧之助-引越しの夢
玉川太福/玉川鈴-続・名寄に行ってきました物語

立川らく兵さん

開幕ぎりぎりで飛び込んで聴こえてきたのが、開口一番のらく兵さんのお声。キレのあるお声で、勢いもいいし、二つ目かと思っていたが若手真打か、と渋谷らくごのパンフレット、「どがぢゃか」に目を通した。真打目前の二つ目の噺家さんとのこと、納得した。勢いがあるってこういうことだ!
「火焔太鼓」は、いつも売れそうにない品物を買ってきてしまう道具屋さんが、手に入れたばかりの埃まみれの太鼓を掃除をしていると、太鼓の音を聞きつけたお殿様にその太鼓を見てみたいと言われたのでお屋敷に参上するという筋だ。道具屋夫婦の掛け合いも、お殿様のお屋敷でのやりとりも面白いが、このらく兵さんの一席では、小僧の定吉が太鼓を叩いて掃除する様子がリズミカルでとても気持ちよかった。最初はふざけて叩いていた太鼓も、「どっどーんどんがらてって」とめざましく上達していく様が、らく兵さんの勢いそのものだった。

林家きく麿師匠

この人が出てきたら絶対に間違いない、というテッパンの落語家さんがいる。きく麿師匠もその一人だが、そう受け止めない人もいるらしい。
とある経営者の賀詞交歓会にお声がけいただいたものの、きく麿師匠ご自身が「絶対受けませんよ!」といわなければいけない方々とはどんな方々なのか。結局出演させられ、案の定滑りまくったというその会のご出席者とはどんな方々なのか。
それはさておき、その宴席の出し物だったという小林旭の歌と軽いモノマネ、ぜひ渋谷らくごでやっていただきたい。さわりだけでも爆笑だった。渋谷らくごでぜひリベンジ&鬱憤を晴らしてください!
地元九州のお話から、江戸のお店に旦那の地元から昔馴染みがやってくる創作落語の本編「陳宝軒」に突入した。九州から旦那を訪ねてやってきた田舎者と江戸者が意思疎通するハードルの高さは古典落語「百川」並み。最初に対応した与太郎が引っ掻き回した挙句、おかみさんが対応するが、おかみさんもまたさっぱりわからない。帰ってきた旦那にことの次第をおかみさんが話そうとしても、そもそも理解できていないのだから要領を得ない。
この噺がすごいのは、田舎者の話す方言が、九州出身でない観客にも70-80%はわかり、しかし噺に出てくるおかみさんには10-20%くらいしかわからない、くらいの難易度になっていることだ。あぁこのくだりは間違えそうだなと思うと、おかみさんはやっぱり間違ってくれる。この観客の理解度とおかみさんの理解度のギャップ、きく麿師匠が想定している理解度の設定がすごすぎると思いながら、最高に楽しませていただいた。

柳家勧之助師匠

きく麿師匠、勧之助師匠、太福先生、と今日はがたいの良い師匠が揃っていると思っていたら、勘之助師匠お痩せになりましたでしょうか。そしてこの日、勧之助師匠が結構端正なお顔立ちだということに気づきました(失礼)。しかし勧之助師匠も柳家花緑師匠の一門、古典上手が揃うのに変わり者揃い(私見)の一門の方なのだから、きっとどこか酔狂なところがあるのだろうと思って見てしまう(大変失礼)。台所おさん師匠が兄弟子ってすごいなぁ。
まくらには事欠かなそうな一門だが至って正統派の古典落語を引き継がれている一門である。勧之助師匠のこの日の本編は「引越しの夢」。男世帯の質屋に来た美人の新入りの女中が話の中心なのだが、この人はほとんど出てこない。騒がしいのはその周りの番頭以下、この質屋で働く男たちだ。筆頭番頭さんがその女中さんの影に向かって、好きな帯とか買っていい、その分の帳面は私の方でどがちゃかしておくから言う時の、演者の鼻の下を伸ばした顔がたまらない。勧之助師匠ももれなく何とも言えない素敵な顔をしていらした。
そして女中の寝室に潜り込もうとして失敗、登りかけた吊り棚が落ちてきて、支えあっている番頭二人の間抜けなこと。間抜けだけれどどこか楽しそうなのは何故だろう。新しい女中がくるたびにこの手の騒ぎが起こっていそうなこの質屋がおかしすぎる。

玉川太福さん

復活!「月刊太福マガジン」の2月公演。「月刊太福マガジン」とはその月にあった身辺雑記を浪曲に仕立てる太福先生ならではの一席。「復活」と言うのは2018年頃に渋谷らくごの土曜日20時の枠で定期的に開催していたためであり、今年1月から渋谷らくごの本公演で「復活」した。たまたまポッドキャストで1月の「名寄に行ってきました物語」を聴いた直後だったので、おぉ!続か!とワクワクした。
さてこの回は相三味線の玉川鈴さんが主役のお話。余談だが、太福先生は玉川みね子師匠との共演が(個人的に見る限りは)多かったので、みね子師匠、ご病気でもないといいけれど、と思いつつ(杞憂だった模様)、登場するなりこの妙齢の相三味線に視線がいって仕方がない。本編では主人公とあれば、存分に弾いて、見せていただきましょう!ポッドキャストでも、はっきりくっきりした音色が気になっておりました。
太福先生の語りと所作?に彩られ、鈴さんの名寄での活躍っぷりが目に見えるよう!早朝から雪にまみれるスノーピクニック、寒そうだけれど楽しそう。これだけでも名寄はだいぶ観光営業していただけているのでは?!太福先生、鈴さん一行が雪で遊んだり、コーヒー飲んだり、リスを見たり、して喜ばれる姿がまるで見ているような気にさせられた。浪曲ってこんなに臨場感ある芸なのか、といつも驚かされる。
鈴さんに関してはおそらく盛りにもった話だったと思うが、とっても魅力的に語られていて、名寄の観光協会に上がるであろう動画が楽しみになるほど(太福先生のインスタでも一部見られました!)。太福先生も鈴さんもお疲れ様でした!

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
写真の無断転載・無断利用を禁じます