渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2024年 1月12日(金)~16日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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1月14日(日)14:00~16:00 三遊亭兼太郎 立川吉笑 柳家小ふね 三遊亭遊雀

「渋谷らくご」爆笑落語会

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プレビュー

 兼太郎さん、小ふねさんという期待の二つ目、ふたりの間には先日真打昇進が決定した吉笑さん(昇進は2025年予定)、そして、「軽妙洒脱」という言葉がぴたりとはまる、ベテラン遊雀師匠がトリという、落語会らしい流れが体験できる贅沢なお年玉公演です。いつもはトリの若手に華を添える遊雀師匠がどうキメてくれるのか!?
 これまで「渋谷らくご」大賞を受賞してきた吉笑さんのあとに、現在の「渋谷らくご 楽しみな二つ目賞」受賞者の小ふねさんがどう挑むのか! なによりこの濃いメンバーのなかで、明るいリズム感のある落語で兼太郎さんがどう輝くのか! 見どころしかない爆笑の会となる予想です。

▽三遊亭兼太郎 さんゆうてい けんたろう 圓楽一門会
23歳で入門、芸歴10年目、2017年二つ目昇進。知らない街でも街中の定食屋さんに挑戦する。格闘技ファン。たくさんお昼ご飯を食べると、すぐに眠くなる。エナジードリンクを飲むと一瞬元気になるが、すぐに眠くなる。

▽立川吉笑 たてかわ きっしょう 落語立川流
26歳で入門、現在芸歴13年目、2012年4月二つ目昇進。2022年NHK新人落語大賞」受賞。銀座博品館での真打トライアルを経て、真打昇進の認定を受ける、2025年春真打昇進。今年は意識的に写真を撮ろうと思っている。

▽柳家小ふね やなぎや こふね 落語協会
24歳で入門、芸歴6年目、2022年5月二つ目昇進。渋谷らくご優秀賞2023受賞。私服は黒を選びがち。前座の頃に「足立区の方でお坊さんをやっている」と嘘をついて合コンに参加したことがある。学生時代はUFO研究会に1日だけ所属していた。

▽三遊亭遊雀 さんゆうてい ゆうじゃく 落語芸術協会
23歳で入門、芸歴35年目、2001年9月真打昇進。酒豪。飛行機と鉄道が大好き。お肌の保湿を第一に考えキュレルを使用する。乗り物が大好きで、バスにも積極的に乗る。年明け早々SLに乗りに、静岡まで行った。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@sowaka2020 (ともちん。シンガポール育ち、帰国子女。映画、海外ドラマ、落語、読書が大好き!映画などの感想レビューもポストしてます)

三遊亭兼太郎-時そば
立川吉笑-歩馬灯
柳家小ふね-宗論
三遊亭遊雀-紺屋高尾

能登半島地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
私はスマトラ沖地震の時シンガポールに住んでおり、病院で日本人被災者のための通訳ボランティアをしておりました。通訳とはいえ、ドクターの説明などを訳し終えると、ほぼ話し相手。皆さん、昨日まで海外旅行を楽しんでいたフツーの日本人家族で、災害はいつどこでも誰にでも降りかかるものだと実感しました。。
今「たまたま」無事である自身の状況と、全力で皆を笑顔にしてし下さる噺家さん達に感謝し、心して今日の会を鑑賞しようと思います。

三遊亭兼太郎さん「時そば」

「沢山笑わせてやるゾ⁉︎」とイタズラっ子の表情で登場した兼太郎さん。新成人ご招待企画のせいか「今日は会場の平均年齢がグッと下がって嬉しい!」とのこと。成人式といえば、北九州や沖縄のド派手なヤ⚪︎キーを茶化して、まくらから皆大笑い。こんな風に、兼太郎さんの軽くて聴きやすいところが大好きです。
今日は寒いので暖かいお蕎麦が食べたくなる「時そば」。お蕎麦を食べる仕草が美味しそうで、お腹が鳴ります。勘定を誤魔化す場面では「皆さん、気がつきました〜?」と戯けてみせます。
落語初めてかもしれない新成人の方々などに、優しく話しかけるような演技が良かったです。とっても親切ー。

立川吉笑さん「歩馬灯」

年末年始と体調が悪く寝込んでしまった、という吉笑さん。出席できなかった立川流の新年会が気がかりだった、とのこと。ここ何年も幹事を務めていたのに、噺家人生で初の不参加。残念でしたね。。談志師匠がいらした頃から、新年会には沢山の思い出があるそうです。
というわけで、今日は「思い出」がテーマ。交通事故で瀕死の男性、頭の中に次から次へと子供時代の思い出が蘇ります。が、「走馬灯」である筈の思い出の進み具合が何ともスローで、もう飽き飽き。しかし、これがスピードアップした時に大変な事が起こります!
山口淳太監督の「ドロステのはてで僕らは」のように、脚本が巧妙な映画のようでした。結末には唸ってしまいます。さすがの創作力!
2025年に真打昇進が決まっている吉笑さん。今一番輝いている時ですね!

柳家小ふねさん「宗論」

渋谷らくご優秀賞受賞の小ふねさん。福島県飯坂温泉出身。故郷が温泉なんて、とっても癒し系。前職は介護士で、お年寄りにモテモテだったそうです。介護士時代、細身で黒縁メガネだったので、あだ名は「日本兵」。確かに水木しげる先生のキャラみたい!
今日はちょっと珍しいお噺「宗論」。息子がキリスト教信者になったのが気に入らない旦那。親子間で仏教vsキリスト教論争が巻き起こります。
新作落語かと思ったら古典、大正時代に作られた作品だそうです。クリスチャンが出てくるなんてモダンですね。
宗教に目覚めてしまう息子に手を焼く父親を描いた、イタリアのコメディ映画「神様の思し召し」を思い起こしました。
「宗論はどちらが勝っても釈迦の恥(教義の論争や対立は愚かだ)」というのは世界共通のようですね。

三遊亭遊雀師匠「紺屋高尾」

まくらで、「次の談志になるね」と真打昇進間近の吉笑さんを褒める遊雀師匠。若い噺家さん達の成長物語を楽しめるのが渋谷らくごの醍醐味、とのこと。全く同感です!「真面目な青年が汚れていくんだよね。ふふ」と意地悪い笑い。でも、本当は後輩思いの優しい師匠。
今日は、師匠からラブストーリーのプレゼント。真面目な男が憧れの女性を射止める素敵なお噺「紺屋高尾」。主人公の久蔵が恋に狂う場面はコミカルに、一転、久蔵が花魁に想いを打ち明ける(そして、花魁がそれを受け入れる)場面では、大笑いしていた会場がシーンとして師匠の言葉に吸い込まれて行きます。心に沁みる恋愛成就の場面に、ちょっと涙する人も。
渋いヤクザの親分さんから可愛い子供まで、全ての演技が素晴らしい遊雀師匠。今日は妖艶な女性の姿を見ることができました。仕草によって、白髪の師匠が美しい花魁に見えてくるから不思議。素晴らしい高座に、新成人の方々も大満足ですね!
今の笑いと幸せな気持ちに感謝しかありません。。