渋谷らくごプレビュー&レビュー
2024年 1月12日(金)~16日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
いまだに落語といえば「笑点」の話に終始することも少なくない世の中。そんな人にこそ、この公演を見てほしい!
4人の真打が、まったく違う魅力で、それぞれ特別な30分を体感させてくれます。トリの龍玉師匠は、殺しの噺や人情噺で唯一無二の存在になりつつありますが、不思議な噺、お酒の噺にも、独特のおかしみ哀しみがあります。どんな龍玉劇場がみられるか。
創作の女王・和泉師匠、コワかわいい・文蔵師匠、やんちゃ兄・小痴楽師匠と、贅沢な2時間となります。
▽弁財亭和泉 べんざいてい いずみ 落語協会
2005年8月入門、現在18年目、2021年3月に真打昇進。28歳で突如会社を辞めて落語家になった元OL。よくいくスーパーは、SEIYUやLIFE。人々の生活の些細な出来事をよく観察して自身の演目に反映している。「ガラスの仮面」のラストを心待ちにしている。
▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう 落語協会
24歳で入門、芸歴37年目、2001年真打昇進。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。先日は、「ギュ筋肉スープカレー」を作った、椎茸や大根、キクラゲがいいアクセント。日曜日の昼下がりにはビールを飲む。
▽柳亭小痴楽 りゅうてい こちらく 落語芸術協会
16歳で入門、芸歴18年目、2009年11月二つ目昇進。2019年9月に真打昇進。本が好き、本のお供には煙草「HOPE」。今年に入って4回電車に乗り間違えた。年明け早々の買い物はハリーポッターグッズ。
▽蜃気楼龍玉 しんきろう りゅうぎょく 落語協会
24歳で入門、芸歴27年目、2010年9月真打昇進。身長が181cmと背が高い。ツイッターではプライベートの様子をツイートすることがなく、いまどのように過ごしているか知ることができない。ものを食べずにひたすら呑むとの噂。
レビュー
今年の目標は「ご機嫌に過ごす、自分をご機嫌にする」。
弁財亭和泉-コンビニ参観/銀座なまはげ娘
橘家文蔵-ちりとてちん
柳亭小痴楽-松山鏡
蜃気楼龍玉-ずっこけ
1月公演は新成人を無料ご招待していた渋谷らくご。開演前のアナウンスで渋谷らくごキュレーターのサンキュータツオさんが「落語は一生楽しめる趣味」とおっしゃっていたが、個人的経験からもその通りだと思う。20歳少し前に地方公演で落語に触れ、東京に出てきた20代半ばは寄席に行くこともちらほらあったものの、その後10年ほどご無沙汰、また30代後半から渋谷らくご中心に落語に触れる機会が増えてきた。息の長い芸能であるからこそ、出戻りも受け入れてくれるこの懐の深さはありがたい。
もし落語が気になっているのであれば、もし落語デビューをしたいと思っているのであれば、デビューはぜひ渋谷らくごをおすすめしたい(私は一介のレビュアーです)。場所は映画を観に来ましたという体で来られるユーロスペース、そしてつまらなかったとしても(!)2時間で終わるのだから。
そして1回目は一人で来るのも悪くないと個人的には思う。笑いというごく個人的な嗜好性が現れるところに、いくら初めてで心細いからと言って誰かを巻き込むのは忍びない、そんなふうに思われる方は是非お一人でどうぞ。私が知る限り、渋谷らくごは一人客が多い。そして自分がお気に召したら、次の回は気の置けないお友達やパートナーとどうぞ。
前置きが長くなりましたが、今回の落語は創作落語の弁財亭和泉師匠、お料理上手な橘家文蔵師匠、ヤンチャな江戸っ子、柳亭小痴楽師匠、そして最後は劇場型落語の蜃気楼龍玉師匠という面々でした。
弁財亭和泉師匠 「コンビニ参観」「銀座なまはげ娘」
渋谷らくごはもちろん一人30分が持ち時間なので、このあと本編「銀座なまはげ娘」に突入。和泉師匠の、いそうでいなさそう、いやいやさそうでいそうなキャラ設定がいつもながら絶妙すぎる。高級ジュエリーショップで働き、パリ留学を目前にして、貯金を彼氏に持ち逃げされ、今は1万5千円のアルバイトで食い繋いでいる女性、って全く無さそうな話では無さそうで、しかもこのお嬢さんの生真面目さぶりがまた共感を呼ぶ。おかしいってわかっていても従わざるを得ない馬鹿馬鹿しさよ。我々観客は、その馬鹿らしさを和泉師匠と共に体験したのでした。新春の渋谷でまさかのなまはげ体験講座(和泉師匠のなまはげのふりを観客が真似る)!おかしかったです。
橘家文蔵師匠 「ちりとてちん」
この日の本編は「ちりとてちん」、よく聞くのは「ちりとてちん」を鼻持ちならない友人に食わせる場面だが、今回文蔵師匠が演じられた噺では、その前の美味しいお膳やお酒を、大仰な言葉で褒めて、おだてる場面が長かった。料理のお好きな文蔵師匠の食べるシーンはそれ自体見ものなのだが、加えておだてる褒めるって悪いことじゃあないなあと感じさせられた。良いもの、楽しいものならばちょっと大袈裟でしょ、っと思われるくらい褒めて、お礼を言って良いのだな、なんてほっこり思っていた。そんなところについに超がつくほど気取り屋の、知ったかぶりの友達が登場。この友達に腐った豆腐を「ちりとてちん」という台湾の珍味だと言って食べさせる件に悶絶した。この落語を聞くと、この「ちりとてちん」なるものを想像して、いつも「おえ」と吐き気がする。食べものが掻き立てる想像力の強さに参った。
柳亭小痴楽師匠 「松山鏡」
この日の本編は「松山鏡」。父母が亡くなって以来、毎日墓参りを欠かさない正直正助にお上がご褒美をくださることになった。「なんでもくれてやろう」というお上に、正助が願ったことは「亡くなった父親に会いたい」という無理難題。正助自身が父親に似ていると聞き及んだお上が正助に授けたのが鏡で、鏡を知らない正助は「父親」に会えて泣いて喜ぶのだが、、というお話。
江戸っ子を地で行く小痴楽師匠は江戸っ子の噺も楽しいが、つまるところ、江戸っ子に代表されるようなまっすぐな生き様のキャラが似合うらしい。ちょっと不器用でも、そういう正直とか、曲げにくいところがあるキャラが愛おしく見えるのが小痴楽師匠の魅力なのだろう。
蜃気楼龍玉師匠 「ずっこけ」
のだが、今回の本編は「ずっこけ」。これはどこまでもどうしようもない酔っ払いの噺。この酔っぱらいが、どこかで疫病神に取り憑かれるんじゃないかとハラハラしていたのだが、もっと気楽に聞けば良かった!兄貴分にふんどし掴まれながら小便する姿など馬鹿馬鹿しいのも程があるのに、まだ諦め切れず、もうハラハラしなくていいんじゃないかと思ったり、いやまだこれからか、とか思ったり。結局最後までどこまでもあほらしい話で肩透かしを食らった気分だったが、同時に気持ちが良かった。いくら思い入れがある落語家だとしても、思い込みで噺を聞いてはいけない、先入観無しに噺をきくことの大事さを感じた一席だった。