渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2024年 2月9日(金)~13日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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2月10日(土)17:00~19:00 柳家小ふね 柳亭信楽 三遊亭青森(2席)

「渋谷らくご 大賞受賞者の会」

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プレビュー

昨年の渋谷らくご各賞受賞者、優秀賞(楽しみな二つ目賞)受賞・小ふねさん、創作らくご大賞受賞・信楽さん、大賞(面白い二つ目賞)受賞・青森さんの会です。
渋谷らくごでは毎年年末に、その年の大賞、優秀賞、創作賞を表彰しています。これまでにも、昇々師匠、鯉八師匠、市童さん、吉笑師匠、いちかさんなど、類まれなる演者たちを表彰してきましたが、昨年はまた新しい魅力に出会えた年でした。渋谷らくごファンは、ぜひこの受賞者の会に集って盛り上げていただきたい。はじめて渋谷らくごにいらっしゃる方には、渋谷らくごがどんな落語会なのか実感していただけるおすすめ公演です。

▽柳家小ふね やなぎや こふね 落語協会
24歳で入門、芸歴6年目、2022年5月二つ目昇進。渋谷らくご優秀賞2023受賞。私服は黒を選びがち。前座の頃に「足立区の方でお坊さんをやっている」と嘘をついて合コンに参加したことがある。天下取りの相といわれる「ますかけ線」という手相を持つ。

▽柳亭信楽 りゅうてい しがらき 落語芸術協会
30歳で入門、芸歴9年目、2018年二つ目昇進。ツイッターやラジオトークなどで発信している。酔った深夜にもラジオトークを配信することがある。2月3日に新幹線に乗ったら、恵方巻を食べている人を見つけた。疲れた時は温泉に入ってリフレッシュする。

▽三遊亭青森 さんゆうてい あおもり 落語協会
23歳で入門、現在入門10年目、2019年2月二つ目昇進。「2022年渋谷らくご優秀賞 たのしみな二つ目賞」受賞。ストリートファイターをプレイするためのコントローラーには、落語の名人の写真を貼り付けている。先日10年ぶりに週刊少年ジャンプを買ってみた。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@sowaka2020 (ともちん。シンガポール育ち、帰国子女。映画、海外ドラマ、落語、読書が大好き!映画などの感想レビューもポストしてます)

柳家小ふね-出来心
三遊亭青森-手紙無筆USA 黒い風
柳亭信楽-腰痛
三遊亭青森-菊模様皿山奇談-皿塚の由来-

柳家小ふねさん「出来心」


優秀賞(楽しみな二つ目賞)受賞。小学生の時の標語コンテスト以来、人生2度目の受賞だそうです。子供の頃から文才があったのですね!
先月は、ちょっとモダンな古典落語「宗論」で客席をわかせました。宗教の教義争いは愚かだ、という現在にも通じる様なお噺が良かったです。
今日は、古典らしいドタバタ「出来心」。
貧乏長屋に忍び込んだ泥棒、でも盗るものなんてゼロ。逆に入られた方の男は、「金を盗られたから家賃を払えない」と踏み倒す口実に泥棒を利用しようとします。間抜け泥棒と、のらりくらり嘘をつく男が、飄々とした小ふねさんの演技に合ってると思いました。

三遊亭青森さん「手紙無筆USA/黒い風」


大賞(面白い二つ目賞)受賞の青森さん。
金髪のせいか、よく外国人観光客に声をかけられる、とのこと。
今日の1席目には、英語ペラペラを自慢するアニキが登場。そこにアメリカの友人から手紙が来て、困ったことに!(本当は読めない)
デタラメに英単語を並べただけの、変な英語がルー大柴みたいで可笑しかったです。Simple is best = (旅行は)シンプルに伊豆がベスト、には大笑い。伊豆の観光協会に教えてあげたいキャッチフレーズです。
小ふねさんのお噺を受けて、「愚かな男がバカなことをして失敗してしまう」という要素を踏まえた見事な展開でした。脱力系の小ふねさんと熱い青森さんのコントラストも良かったです。
さて、「今日は2席やって」と言われたからには3席やらなきゃ、と青森さん。一筋縄ではいかないチャレンジャーです。
2席目に登場するのは、黒い愛車「ジョニー」に乗ってツーリングするカッコいい男。ミナミさんという恋人がいるらしいけど、なんだか様子が変!?さあ、この男の正体は何でしょう。。
何席でも出来ちゃう青森さん。いつか、全高座が青森さんオンリーという日が来るでしょうか?「俺が落語になる、落語が俺になる」という青森さんの言葉が本当になるかも?

柳亭信楽さん「腰痛」


創作らくご大賞受賞の信楽さん。ピッカピカのトロフィーを携えて登場です。今年は三冠を目指す!とのこと。なぜなら、「自分だって楽しみな二つ目で、面白い二つ目だから」。
最近の悩みは、新幹線の車内販売が無くなってしまったこと。まくらでは、駅ホームでのコーヒー購入バトルについて。自動販売機で淹れたてコーヒーが買えるなんて知らなかった!
さて、今日のお噺は、やっぱり創作落語。
冒頭で、登校時に衝突した男の子と女の子が入れ替わってしまう。ははーん、これは「君の名は」の様な展開だな?と思ったら全然違う!なんと人が入れ替わってしまう上に、腰痛が伝染してしまう!ゾンビや怪獣まで出てきて、憑依系のSFホラー?奇想天外なストーリーに笑いが止まりません!さすが、創作大賞受賞者。信楽さんの他のお噺も、もっと聴いてみたいです!

三遊亭青森さん「菊模様皿山奇談ー皿塚の由来」

3席目は、まくらなしで静かに始まる怪談のような雰囲気。
昔、親孝行の美しい娘が、奉公先の長男に気に入られるも無愛想にはねつけてしまったことで恨みを買い、家宝の皿が割れていることで責められます。
ん?これは知ってるゾ。でも皿屋敷は番町で、このお噺の舞台は岡山県津山。と思ったら途中から全然違う展開に!なんと主人公の娘は死んで幽霊になるどころか、自分を救ってくれた男性と結婚までしてしまうという、まさかのハッピーエンド!
調べてみたら、三遊亭圓朝の若い頃の作品だそうです。なんと珍しいお噺をご存知なんですね。
信楽さんのお噺を受けて、「ははーん、こういう展開だな?と思うと全然違う」という要素を踏まえた見事な古典落語でした。やっぱり凄いよ!青森さん!
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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