渋谷らくごプレビュー&レビュー
2016年 9月9日(金)~13日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
落語や浪曲を聴いていると、芸人としての人柄が滲み出てしまうもの。
今回の出演者は、全員「いい人」が滲み出てしまっています。
だから落語でも浪曲でも安心して笑えるし、ハッピーエンドが約束されています。
のんびりと楽しめるエンタメってなかなかないから、この2時間くらいのんびりしていってください。
それぞれの語りのテンポ、スピードも味わいがあります。芝居ではない「落語」独自の語りの演技にも注目です。
▽立川志ら乃 たてかわ しらの
24歳で入門、芸歴19年目、2012年12月真打昇進。趣味は、アイドルと声優と相撲とプロレス。『昭和元禄落語心中』から派生したイベント「声優落語天狗連」では声優さんに落語を稽古している。この夏のコミックマーケットに落語家を引き連れて出店。現在ツイッター上で「ヨンリオキャラクター多数決」をおこなっている。
▽笑福亭羽光 しょうふくてい うこう
34歳で入門、芸歴10年目、2011年5月二つ目昇進。落語芸術協会の二つ目からなる人気ユニット「成金」メンバー。羽光さんの携帯ストラップといった可愛らしいグッズがある。先月渋谷らくごで初披露された「私小説落語青春編パート2」が渋谷らくごのポッドキャストで配信中、危ない魅力でアクセス数がすごい。
▽玉川奈々福 たまがわ ななふく
1995年曲師(三味線)として入門、芸歴22年目。浪曲師としては2001年より活動。2012年日本浪曲協会理事に就任。
「シブラクの唸るおねえさん」。先日滝に向かって浪曲を唸る様子がツイッターでつぶやかれていた。MTK(もっと玉川奈々福を関西に呼ぶ会)という組織が結成されるほど熱烈なファンも多く、浪曲の裾野拡大に大いなる野心を注ぐ。奈々福Tシャツが存在しているという噂。
▽春風亭柳朝 しゅんぷうてい りゅうちょう
23歳で入門、芸歴23年目、2007年真打ち昇進。先月落語家になってから数度目のお引っ越しをされる。毎朝、豆から挽いてホットコーヒーを入れている。銭湯巡りが趣味。
レビュー
9月10日(土)14時~16時「渋谷らくご」
立川志ら乃(たてかわ しらの)-そばーん 笑福亭羽光(しょうふくてい うこう)-仔猫 玉川奈々福(たまがわ ななふく)/沢村豊子(さわむら とよこ)-金魚夢幻 春風亭柳朝(しゅんぷうてい りゅうちょう)-明烏
立川志ら乃-そばーん
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立川志ら乃師匠
なんだかよくわからないけれど「スーパーマーケット好き」っていう単語だけでもう面白い(笑)。
そしてスーパーマーケット好きを大いに謳っていたら、スーパーマーケットトークライブのお仕事が来たとか。
なんでも突き詰めるって素晴らしいですな。
トークライブは10月末・下北沢であるそうなので、ここでも宣伝しておきますね。
志ら乃師匠のこだわりを聴いた後だと、ちょっと気になる……。
そんな志ら乃師匠、「スーパーマーケット」でネット検索して引っかかった本を片っ端から注文していたら、ある日、婦人雑誌が届いた。
あれ?と思いながら確認すると、「スーパーマーケットで浮かないためのファッション」の特集が(笑)。
スーパーマーケット各店舗調査、対談あり、NGアイテム紹介あり……凄いな婦人雑誌!
そしてそれを読み込む志ら乃師匠、半端ない!!
マクラだけで満足かも……なんて不謹慎なことを思っていると、
いきなり天高く投げられる蕎麦(そば)のどんぶり!
どんぶりが投げられると物語の幕が開く。
投げられ高速回転しているどんぶりがブーメランのごとく空を飛んでいる。
待ち受ける蕎麦屋と蕎麦の旦那。
軌道に入り、降りてくるどんぶり。
天から降りてくる蕎麦どんぶりを受け取るまでの長い間。これが本当に長い……。
そしてとうとう「そばーーーーーん!」という気合いと共に、勢いを逃がしながらキャッチされるどんぶり。
ずずずっとすすられる蕎麦。
町のヒーロー「蕎麦の旦那」のキャラクターもさることながら、蕎麦屋といい、蕎麦の旦那のファンといい、敵の「讃岐(さぬき)育ちのおうどん一味」といい、ノリの良さが素敵。いい味出してます。
間を楽しめる、たっぷりやるっていうのは、経験値と度胸がいると思うけれど、その点、志ら乃師匠は満点。
お客様が飽きないかなとか、テンポ悪くならないかなとか、色々考えてしまいそうなところを超えて、楽しんでそこにいる。それって凄い。
志ら乃師匠との新たな出会い、シブラクにまた一つ感謝です。
笑福亭羽光-仔猫
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笑福亭羽光さん
変態のフリをしていたり、猫好きキャラで売っていたりとか。
志ら乃師匠のマクラを受けてか、そんなことをいいながらも、独自の落語を描き出す羽光さん。
田舎者で顔の造作もよくないけれど、働き者で気が利く女中・おなべ。
今小町と呼ばれる美人より、嫁にするならおなべの方がいい、なんて話も出たりして。
そんなおなべに不穏なウワサが聞こえてきて……。
羽光さんの独特のしゃべりで聴いていると、後半のゾッとする部分もどこか滑稽に感じて、怖がっている旦那たちのやりとりが楽しい。
おなべの癖のあるしゃべり方も、どこかとぼけた愛嬌がある。
番頭がおなべに問い詰めるところも、おなべが「秘密がバレた」と気付いて焦ってしゃべるというより、潔く腹を決めて話し出す感じで、彼女の芯の強さが見えたように思いました。
ここは羽光さんの見せたかったところかな?と思ったり。
おなべの背負った不幸も、あの実直さ優しさで、救われている気がします。
観終わってイヤな感じが残らないのは羽光さんの持ち味でしょうか。
それぞれの関係性は立体感があるのに、全体としてはどこかふわっとした印象が残ります。
嫌味な女房が出てくる噺とか権助とか、羽光さんならどんな風にやられるのか気になりますね。
玉川奈々福/沢村豊子-金魚夢幻
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玉川奈々福さん/沢村豊子師匠
そのでんすけが作り上げた、どの金魚より美しい、真っ赤な金魚「くれない」。
そして「くれない」の子、「まぼろし」。
赤くも黒くも白くもない「まぼろし」……でもそれは作ることのできないはずの色、青い金魚だった。
金魚の話のような、人間の話のような。
不思議な世界。
暗い部屋から明るい外を伺うような、ぼんやりとたゆたうようなイメージの中に、くっきりと浮かぶ鮮やかな色をまとった金魚たち。
いじめがあったり、 「でんちゃん」「まぼちゃん」と呼び合う愛があったり、「私たちは本来フナなの」と自由を求める心があったり。
あと、電力削減してたり(笑)。
それはまさしく、ひとの物語。
チグリス川からアラビア海を通り、東シナ海からとうとう隅田川まで、愛の為に遥かな海を渡り闘う金魚。
美しいけれどどこか物哀しい世界が、奈々福さんと豊子師匠の掛け合いから生まれ、ずんと胸に響いてきました。
奈々福さんのハリのある声から海を渡る強さと伸びやかさを感じながら、また様々に笑わせられながらも、深く底を流れる哀しみのような何か。
金魚というひとに愛でられる為に生まれたいきものと、ひとと。
不思議なふしぎな物語。
「愚か、という尊い心を持っていた」という言葉が、ゆっくり沁みてきます。
毎回、違う顔を見せてくれる奈々福さん。
リベンジ楽しませて貰いました(笑)。
春風亭柳朝-明烏
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春風亭柳朝師匠
子供たちと太鼓をたたいて遊んだり、強飯(こわめし)を食べてきたと嬉しそうに話す若旦那。
太鼓たたいてドンドンドンのカッカッカッ。
ドンドンドンのカッカッカッ。
とってもまっすぐに楽しそうだから、見ているこちらも楽しくなる。
父親に言われた通りに源兵衛と太助に、全部しゃべってしまう姿も、全く悪気などなく、ただただ素直ないい人。
父親や源兵衛と太助にもそれぞれの思惑があって、若旦那をうまく丸め込もうとしているけれど、口では何だかんだ言いながら、根は悪い奴じゃないんじゃないか?と思ってしまうあたり、柳朝師匠の人柄がにじみ出てしまっているような……(笑)。
まだまだ柳朝師匠の初心者な私ですが、勝手にいい人認定しております。
希望に満ちている姿を両手を大きく広げて表現されたり、今回もそのサービス精神が素敵です!
そしてそれがまた可愛らしい(笑)。
コミカルな動きから生まれる愛らしさ。
「吉原の法だぁ!」とアゴの上がったところもいい。
でもやっぱり1番可愛らしいのは、最後のカニばさみで苦しいという若旦那かも。
花魁がしれっと起きろという姿とのギャップに、ニヤニヤしますね。
最後までテンポよく軽快な柳朝師匠のトリで、気持ち良い余韻を頂きました。
素敵な噺をありがとうございます!
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「渋谷らくご」9/10 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ