渋谷らくごプレビュー&レビュー
2018年 10月12日(金)~16日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
隔月開催の「しゃべっちゃいなよ」も、この10月公演で年内のエントリーは最後の回です。
この会は、普段創作らくごなんてしない人たちを中心に組み立てております。
鯉津さん、寸志さん、おさん師匠、こんな無茶なお願いをしてしまってすみません!
普段は創作をしない人たちの発想にしかないものがあります。それを無理矢理出させちゃおうという回。
とはいえ、本気で創作大賞を取りにいこうと創作を止めない鯉八さん、そしてトリは創作らくご軍曹の彦いち師匠。
この前半と後半のコントラストに注目です。力士が総合格闘技に出るときのようなドキドキ感!
▽瀧川鯉津 たきがわ こいつ
36歳で入門、芸歴8年目、2014年二つ目昇進。プロレスが大好き。この夏は新潟の海にて全力のバタフライを泳ぐ。新潟万代のバスセンターの黄色いカレーが好物で、たびたびツイッターに登場する。バイキングの前にお腹が減っていないと落ち込む。
▽立川寸志 たてかわ すんし
44歳で入門、芸歴8年目、2015年二つ目昇進。2017年渋谷らくごたのしみな二つ目賞受賞。緊張を楽しめる性格。渋谷らくごに出演するときは自分なりのテーマをツイッターで公開する、今回のテーマは「あまりにも不慣れな私の闘いが、今、始まる 遅くない?」
▽台所おさん だいどころ おさん
31歳で入門、芸歴17年目、2016年3月真打ち昇進。最近まで、お財布とスイカをもっていなかった。小銭はポケットに押し込んでいたため、ポケットがパンパンに膨らんでいた。毎週お風呂場にてバリカンをつかって頭をかりあげる。昔はマッシュルームカットだった。
▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。鯉八さん初めてのCD「渋谷らくご名演集」はもう間もなく完売。先日フィンランドのヘルシンキへ行ってきた、大好きな映画監督アキ・カウリスマキに自分のCDを聞いてもらいたいので、フィンランドの喫茶店にCDを置いてきた。
▽林家彦いち はやしや ひこいち
1969年7月3日、鹿児島県日置郡出身、1989年12月入門、2002年3月真打昇進。創作らくごの鬼。キャンプや登山・釣りを趣味とするアウトドア派な一面を持つ。公式サイトがリニューアルされ、入門されてからいままでの落語家の記憶を書き続けている。
レビュー
▼10月16日20:00~22:00「しゃべっちゃいなよ」
瀧川鯉津(たきがわ こいつ) 「薬指」
立川寸志(たてかわ すんし) 「羊が一匹」
台所おさん(だいどころ おさん) 「プリン付き」
瀧川鯉八(たきがわ こいはち) 「めでたし」
林家彦いち(はやしや ひこいち) 「野暮捨てラップ」
普段は創作をしない古典落語が中心の3人と、創作1本で落語界を渡り歩く鯉八さんの異次元なプログラム。いつも以上に緊張感が漂っていましたが、予想を超える盛り上がり。「この一作にかける!」という思いの詰まった創作落語を堪能しました。
瀧川鯉津-薬指
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瀧川鯉津さん
ネタは、富山の薬売りの高橋さんが、お得先の家でヘンテコな薬を次々とセールスする話。奇妙な成分が混じっている青汁、歯周病に効くという山田ようじ、虫除けに効くジミーコナーズなど、怪しげな薬のネーミングと効能が笑えます。薬屋さんが帰ってからの後半は一転、ブラックジョークの効いたミステリーへ。前半の伏線を活かし、見事なオチにつなげていました。
お笑いと落語の両方を心得ている鯉津さん。ギャグで押しまくり、最後に転調する構成が見事でした。
立川寸志-羊が一匹
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立川寸志さん
ネタは、不眠に悩むサラリーマンの田中さんが、病院で医師に「眠れない」と訴える話。医者の先生は眠れない田中さんを「うらやましい」と言い、寝ないことで人の2倍の人生が送れると、眠らないことのメリットを次々と挙げていきます。挙げ句の果てに「眠れば疲れが取れる」はフェイクニュースだという始末。ついには羊を数える定番のテクニックを持ち出しますが、そこからファンタジーの世界に入っていきます。数える羊をペーター(アルプスの少女ハイジの友達でヤギ飼いの少年)が連れてくるギャグが最高でした。
全体的に病院コントのテイストなのですが、「羊が一匹」の状況になってから、世界観が大きく変わります。鯉津さんの創作もそうでしたが、後半への転調がうまいのは、古典落語を主体にしている人の特長かもしれません。初回ということで冗長な面はあったものの、推敲を重ねることでさらによくなる可能性も感じる創作落語でした。
台所おさん-プリン付き
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台所おさん師匠
ネタは、映画にも落語にもよく登場する貧乏人の話。「ふすましめる」の芸名で活動する手品師の男。金がないけど働きたくない。でも腹は減る。寺山修司の「書を捨てよ町へ出よう」に感化されて新宿に出れば職質を受け、手品の芸を求められる。そこまでが第1部。
第2部は来々軒の出前のラーメンが同姓同名の間違いで手品師の男の家に届いたことから巻き起こるシチュエーションコメディです。
どこか単館系の映画の雰囲気を感じるのは、おさん師匠の持つ感性なんでしょうね。流れに任せて生きている手品師の男、仕事を放棄して手品に見入ってしまう来々軒の新人のバイト。どちらもダメな人間ですが、憎めないキャラクターです。落語の中におさん師匠がトリを取る寄席の宣伝が入ったり、バニラアイスにごま油のチョイ足し(許可局ネタ)が入ったりと、笑いどころもたくさん。おさん師匠独特の、不思議で楽しい落語でした。
瀧川鯉八-めでたし
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瀧川鯉八さん
「男なんて星の数ほどいる」と彼女に言われた男が、独自の統計理論を駆使して自分は彼女にとって唯一の男であることを証明していく話です。人類70億人、男性が半分の35億人からスタートし、条件を設定しながら絞り込んでいきます。面白いのは、鯉八落語に通底する男女の心理戦と、言葉を駆使した駆け引き。攻守が常に入れ替わるので、余談を許さず、2人の会話から耳が離せなくなります。13分の作品ながら、鯉八さんらしさが詰まった一席でした。
林家彦いち-野暮捨てラップ
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林家彦いち師匠
格闘技をYouTubeで見ていたら、バトルつながりでラップバトルに出会ってしまった彦いち師匠。即興力を競い合うラップと、落語の世界の「野暮」を融合したネタが生まれてきたのだそうです。
元落語家のラッパー・いち彦が、名古屋の黒豹・シンジとラップバトルで罵り合う。レフリーはライムスター小遊三。戦いで敗れたいち彦は元の師匠を訪ねると、案内されたところは末広亭の地下に眠る「野暮の間」だった。極意を身に付けたいち彦は、シンジに勝てるのか。格闘技映画に通じる熱い物語です。
いち彦が繰り出すラップのリリック(歌詞)が聞き所で、彦いち師匠らしさが爆発しています。ギャグに包まれたメッセージを受け止めながら楽しく聞くことができました。
前説で彦いち師匠が話したように、古典落語の人だって、吐き出したいことはあるということは間違いないように見えました。また楽しみにしています。
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」10/16 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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