渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2019年 3月8日(金)~12日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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3月12日(火)18:00~19:00 笑福亭羽光 柳亭市童 瀧川鯉八

「各賞受賞者の会」

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プレビュー

笑福亭羽光 しょうふくてい うこう 渋谷らくご創作大賞
柳亭市童 りゅうてい いちどう 渋谷らくご大賞(おもしろい二つ目賞)
瀧川鯉八 たきがわ こいはち 渋谷らくご大賞(おもしろい二つ目賞)

2019年現在の「渋谷らくご」を代表する、各賞受賞者の会です。
オール二つ目ですが、聴きどころもたくさんあり、「聴きどき」な演者さんたちです。
実は賞レースの強い羽光さん、地道に古典を極める市童さん、「落語」という芸能の可能性を広げまくる鯉八さん。この3人がいる落語の未来は明るい、と、火曜の18時に感じにきてください!

▽笑福亭羽光 しょうふくてい うこう
34歳で入門、芸歴12年目。2011年5月二つ目昇進。2018年「渋谷らくご創作大賞」を受賞した。「筒井康隆、スティーブンキング、遠藤周作、安部公房、竹熊健太郎、ヴォネガット、三島由紀夫」に影響を受けたとツイッターで公表した。

▽柳亭市童 りゅうてい いちどう
18歳で入門、芸歴9年目、2015年5月二つ目昇進。2018年渋谷らくご大賞「おもしろい二つ目賞」を受賞。この3ヶ月で体重が5kg増えてしまったため、ダイエットをしようと試みているが、ツイッターに流れてくるラーメンの写真に惑わされている。

▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。2018年渋谷らくご大賞「面白い二つ目賞」受賞。喫茶店巡りが趣味、最近高円寺の名曲喫茶「ルネッサンス」にて落語会を開催することができた。地方に行くと美味しい物を食べ過ぎて太ってしまう。

レビュー

文:漫才コンビ「キュウ」 ぴろTwitter:@piroguramu 芸人

18-19「各賞受賞者の会」
笑福亭羽光(しゅんぷうてい うこう)「悲しみの歌」
柳亭市童(りゅうてい いちどう)「転失気」
瀧川鯉八(たきがわ こいはち)「サウスポー」

「なにか最後泣けちゃいました」


◉笑福亭羽光・悲しみの歌

  • 笑福亭羽光さん

    笑福亭羽光さん

羽光さんの「事実に基づいた話」というフリで始まる創作落語。
羽光さん自身の思い出話をするという感じで、まことしやかに 思い出の風景を言葉で描写していく。本当に事実なのか、全て作られているのか、その真偽はどうでもよく、むしろそれがどっ ちなのか分からないフワフワした時間の中で、たまに絶対に有り得ない所まで表現が飛んでいく。その瞬間「おいっ!」と言いたくなる。「そんなわけないだろ!」と。
そのリアルな部分とリアルじゃない部分の高低差で僕は心地よく笑ってしまう。 好きです。おもしろ嘘つき。
それにしても、創作落語は古典落語に比べて”柔らかい”なと思う。それは難しい言葉を使わないのもあるし、話の構成が自由なのもある。そして、その自由な感じに僕は最近とても魅力を 感じている。
もっともっと創作落語を沢山聞きたい。

◉柳亭市童・転失気

  • 柳亭市童さん

    柳亭市童さん

「転失気」というお話自体が、とにかく面白かった。登場人物達のささいな見栄が、積み上がって大きな滑稽を作り出していく。状況一つ一つに存在意義のある感じ。
こういうお話を聞くととても楽しい気分になる。 そこに加えて市童さんが挟み込む無意味なボケ。本当に意味の無い。例えば、廊下を走る小僧の演技を必要以上に長くやったり。今のいる?となるような。でもこうやってどこで遊びを入れてくれるかというのも落語の興だと思う。
よく出来たお話に触れる度に僕は心底思うことがある、それは “僕らは芸術家じゃなくてデザイナー”だなということ。 僕らは言葉で文章をデザインしている。自分を表現するというよりも自分を伝える事に頭を使う。笑わせたり泣かせたり感心させたり、そういう目的を果たす為に言葉を組み立てる。自己満足はその材料の素材自体に練り込んである。住みやすい家を考えるように、走りやすい靴を考えるように、計算をして作る。 デザイン。アートではない。確実に理にかなった代物。 僕はそういう作り手の知恵が詰まった”作り物”が好きだ。美しくて、面白くて、笑える。

◉瀧川鯉八・サウスポー

  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん

落語を観始めて半年くらい。今まで知らなかった色んな落語さんを知っていく中で、たまに出会うこの感じ。「来た来た」となる。
この瀧川鯉八という人、見た目、話し方、醸し出す雰囲気、全てが何か気持ち悪い。そして何か”しなやか”。どうしても僕はそういう人のことを好きになってしまう。僕のツボ。気持ち悪くて”しなやか”は、僕の中で無意識に重要視しているものなのだろう。
それは出てきた瞬間や、最初の一言でもう決まる。一瞬にして「あ、何?この人」となる。
この感じを出せるのって結構凄いことだと思う。これは心の軸の話で、自分がここにいて、そして、決してここから動かない。 という頑固な面持ち。言葉のトーンや間、表情、すべてがオリジナル。瀧川鯉八。 「あっ、そこでそのトーンでその言葉選びするんだ」と何度も思わされた。なるほど、と。こういう分かりやすく”その人のセンス”に触れられるところこそ創作落語の良さだと僕は思った。

そして、最後だけ綺麗に落としてサラッと袖に捌けて行った。 話の内容の所為もあり、何か最後泣けちゃいました。でも、それも含めて、何か最後まで気持ち悪かった。

【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」3/12 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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