渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2019年 6月14日(金)~18日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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6月15日(土)14:00~16:00 立川志ら乃 柳家小せん 春風亭昇々 玉川太福*

「渋谷らくご」爆笑浪曲 玉川太福(たまがわ だいふく)を聴こう!

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プレビュー

初心者向け:浪曲師、玉川太福さん。「浪曲」のことはわからなくても、「玉川太福」を観てください。ジャンルを超える面白さが炸裂しています。太福さんの時代になってきました! 若手真打の志ら乃師匠、小せん師匠の気持ちの良くなる落語で、ちゃんと落語も楽しめますのでオススメです。
アングル:太福さん、昇々さんは、この渋谷らくごでも出演している立川吉笑さん、瀧川鯉八さんとともに新しく冠番組を持つほど勢いが出てきました。若手躍動の会、最初から最後まで見どころたっぷりです。そして、太福さんはなにを演じるのか。


▽立川志ら乃 たてかわ しらの
24歳で入門、芸歴21年目、2012年12月真打昇進。スーパーマーケットが好きで、スーパーの批評をツイッターでおこなっている。最近はカエルやヒヨコのぬいぐるみと遊ぶことがある。ポムポムプリンも好き。

▽柳家小せん やなぎや こせん
22歳で入門、芸歴22年目、2010年9月真打ち昇進。橘家文蔵師匠と入船亭扇辰師匠と音楽ユニット「三K辰文舎」としても活動中。最近は北海道とうきびモナカというアイスの美味しさに気づいた。座右の銘は「がんばりすぎない」。

▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。楽屋で仲間を驚かせるためパンツ一枚になることがある。この時期は、ポロシャツで行動することが多い。おしゃれなベルトをしている。先日、太福さんのラジオにゲスト出演した。

▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門。JFN系列にて放送中の「ON THE PLANET」のパーソナリティとして、毎週火曜日25時から出演中。落語芸術協会所属、寄席にも出ている。のど飴、漢方、はちみつ、黒豆茶で喉のコンディションを整えている。

レビュー

文: あさみ Twitter:@asm177 ライター。最近気になるのはサカナクションのNEWアルバム。落語初心者の目線でお伝えします。

立川志ら乃(たてかわ しらの)-茶の湯
柳家小せん(やなぎや こせん)-お血脈
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)-指定校推薦
玉川太福(たまがわ だいふく)/佐藤貴美江(さとう きみえ)-豆腐屋ジョニー

雨雨雨。梅雨に入ってからというもの、連日雨の東京。6月渋谷らくご2日目は、雨と湿気にうんざりする私たちに、とどめを刺すかのような大雨です。「お足元の悪いなか…」というのはこういうときに使うのだと、お手本のような日でした。
今回は各噺家さんの世界観のつくり方に(落語初心者の目線で)注目します。

立川志ら乃師匠「茶の湯」

  • 立川志ら乃師匠

    立川志ら乃師匠

「手毬唄」の陽気な囃子で登場した志ら乃師匠。自己紹介も兼ねて、師匠である立川志らく師匠が、自身の芝居を観に来ない弟子に激怒した「弟子全員降格」エピソードを話してくれました。客席の多くが概要を知っていたようで「弟子全員降格」とキーワードを出しただけで、会場にくすくすと笑い声が。その後、立川流の創設者である談志師匠がよく話されていた「思考のストップ」という考え方と絡めながら、思い込みに振り回される人物が登場する「茶の湯」へ入ります。
家督を息子に譲り、小僧の定吉と共に郊外へ移り住んだ隠居。毎日することがなく退屈していたところ、しまいこんでいた茶道具が見つかる。「ぜひやろう」と乗り気の定吉に対し、実は茶の湯などまったく知らない隠居。「随分とやっていないから」と逃げようとするが「やっているうちに思い出しますよ!」と言われ、知ったかぶりをすることに決め込む…。
まくらの様子だけで言えば、小さなくすぐりを重ねて会場を巻き込むタイプに見えた志ら乃師匠。しかし茶道具の使い方を説明する流れの際、茶筅に異様なまでの反応を示す定吉の描写で笑いの熱量が爆発! 「竹って普通固くて、竹ぼうきなんて足に当たると痛いのに、これは先がこう丸くなって、えへへ優しくって、でへへお母さんみたいで」とまぁ一歩間違えれば変態の域。「茶の湯」という落語のピークがここではないことは明らかですが、この回では少なくともこのシーンをきっかけに、志ら乃師匠がつくり上げる噺の世界がぐっと輪郭を帯びました。同じ古典でも盛り上げるタイミングはさまざま。もちろんサゲまでの流れも素晴らしかったのですが、志ら乃師匠の“色”を楽しませてもらえたと感じました。

柳家小せん師匠「お血脈」

  • 柳家小せん師匠

    柳家小せん師匠

小せん師匠は芸歴22年目。数え切れないほど高座へは上がっているものの、その日どの噺をするかはいまだに悩まれるそう。高座に上がる際、まくらも含めてタブーとされる話題があり「政治・宗教・プロ野球」の話はNGだと師匠から口酸っぱく言われたとのことでした。「話す内容は気を付けなければいけないですね。では宗教の話を」とにやりと笑い、「お血脈」へと入ります。
噺の舞台は信濃国、善光寺。そこに百文という高額ながら、額に印をしてもらうとどんな罪を犯していても極楽に往生できる「お血脈」が置かれるようになった。それを聞きつけた全国各地の悪人が善光寺に駆けつけ印を押してもらう…。みなが極楽に往生するようになった結果、地獄は不景気に陥ってしまった。焦った閻魔大王は緊急国会を開催。とある鬼から「『お血脈』を寺から盗み取ってしまえば、また地獄にお客が来る」と進言され、その盗人役に石川五右衛門を指名するが…。 飄々とした佇まいで、トントンと心地よく噺を進める小せん師匠。話す速度や声量自体には大きく動きはないものの(石川五右衛門の芝居のシーンは別ですが)、その流れるような口ぶりに自然と噺に引き込まれ、いつのまにか地獄国会に身を置いている自分がいました。そのスムーズな運びは一篇の詩を聴いているよう。まくらから温度感こそ変わりませんが、30分をあっという間に感じさせる心地よい世界観に、師匠の技を見ました。

春風亭昇々「指定校推薦」

  • 春風亭昇々さん

    春風亭昇々さん

この日、朝10:00から高座があった昇々さん。場所が千葉ということもあり、起床時間は6時。既にお疲れの様子です。1時間の持ち時間の後、懇親会としてお客さまと話をすることになったそうなのですが、誰も喋らず困惑。その後、一人のおじいさん(90歳)が話しかけてくれたものの、会話が噛み合わずさらに困惑。そんな戸惑いと憤りの熱量は、噺のなかにも活きていました。
主人公は早稲田大学の第一文学部に行きたい男子高校生。通う高校に1枠だけ存在する「指定校推薦枠」を勝ち取りたいと考える。推薦のための条件は9教科の平均成績が“4以上”であること。「それなのに音楽が2ってどういうことですか!」と自分の成績が悪かったことを、教師に詰め寄り再考をお願いしようとするが…。
“圧”にも感じられるような主人公の勢いに最初こそ驚かされますが、次第にたじろぐ先生の視点で話を見つめてしまう。昇々さんが私たちを彼の世界に引き込む力は強く、その熱量は座布団の上に膝立ちになって話を進める様子からも感じ取れます。とはいえ勢いだけということではなく、1つひとつの言葉選びがとても面白い。一人だけ仲間外れになるのを「ミックスナッツのレーズン」に例えたり、二等辺三角形の1つだけ離れた頂点を「心の距離」に例えたり。突飛だが的を射た表現に世界観は崩れることなく、全速力でサゲまで突き進む。息をつくのも忘れるほどの30分。大満足です。

玉川太福さん「豆腐屋ジョニー」

  • 玉川太福さん

    玉川太福さん

  • 佐藤貴美江師匠

    佐藤貴美江師匠

登場と同時に「若大将!」と掛け声がかかる太福さん。噂には聞いていましたが大人気ですね。普段はみね子師匠がご一緒ですが、本日曲師を務めるのは佐藤喜美江師匠。太福さんの高座はほとんどみね子師匠が担当されるため、喜美江師匠は数年に一度だそう(喜美江師匠は普段、日本一と呼ばれる浪曲師、澤孝子師匠の専属をされているそうです)。そんな珍しい機会だということで、語りも少し特別。三遊亭白鳥師匠の新作落語を浪曲にアレンジした「豆腐屋ジョニー」です。
舞台は三平ストア浅草店。客層の多くをお年寄りが占めるこの店では、体を冷やさないための「夏のあったかメニュー」という特集が毎年組まれる。今年の候補は「特製湯豆腐」と「チーズたっぷりグラタン」。特集メニューに選ばれたあかつきには、特設売り場が設けられるため、豆腐屋ジョニー率いる木綿豆腐軍と、カマンベール王率いるチーズ軍は睨みをきかせる。しかしカマンベール王の一人娘、クリームチーズのマーガレットとジョニーは実は恋仲。この「夏のあったかメニュー戦争」に心を痛めているが…。
豆腐とチーズの恋物語。正直突飛な設定ですが、それをいつのまにか受け入れているのは、節の盛り上がりと共に、まるで手を引くように“大福ワールド”に連れ行ってくれるから。押し付けるわけではないのに、気が付けばどっぷり浸ってしまう浸透力こそが、太福さんの魅力です。元々新作としてクオリティが高いこの噺を、太福さんのリズムと、太福さんならではのくすぐりでさらに魅力的な噺へと昇華させてしまうのはお見事でした。

【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」6/15 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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