渋谷らくごプレビュー&レビュー
2019年 6月14日(金)~18日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
古典落語という言葉ができたのは、創作(新作)をつくる人がでてきたから。そして時代を経て、そんな創作も古典落語として継承されているものがあります。しかしそれだけに、創作にかけるエネルギーは想像を超えるものがあります。
普段は自分の独演会や勉強会でネタおろしをして、ブラッシュアップして大一番にかけるものですが、この会は大一番でネタおろしをしようという常軌を逸した会です。隔月開催でこの6月が3回目の開催。
二つ目に昇進したばかりのフレッシュな二つ目から、普段は創作をしない人まで。若手もベテランも関係なしのバーリトゥードな空間に飛び込んでください。落語はお客さんと一緒に作るもの。この創作体験、必ずや癖になります!
▽三遊亭青森 さんゆうてい あおもり
23歳で入門、現在入門5年目、2019年2月二つ目昇進。「しゃべっちゃいなよ」初参戦。非常に独特な空気感があるウェブサイトを持っている。ツイッターでの質問箱への回答も不思議な空気感を持っている。
▽桂三四郎 かつら さんしろう
22歳で入門、現在入門15年目。疲れた日はサウナに入ってリフレッシュする。鯉八さんにそそのかされて大量に手ぬぐいを発注してしまったため、いま大量の在庫を抱えている、BASEにて通信販売中。ウォーターサーバーを導入して、家で RO水を楽しんでいる。ミネラルウォーターも好き。
▽立川笑二 たてかわ しょうじ
20歳で入門、芸歴8年目、2014年6月に二つ目昇進。沖縄出身の落語家。飲み会に参加することが多いが、気付くと寝てしまっている。公園のベンチで落語の稽古をする。先日、NHKスタジオパークにてアフレコ体験をした。
▽古今亭駒治 ここんてい こまじ
24歳で入門。芸歴17年目、東京都渋谷区出身。鉄道をこよなく愛し、鉄道に関するコラムを執筆するほど。2017年創作らくご「しゃべっちゃいなよ」で創作大賞を受賞。背の高さが目立つ。スワローズファン。フレンチホルンを奏でられるらしい。
▽林家彦いち はやしや ひこいち
1969年7月3日、鹿児島県日置郡出身、1989年12月入門、2002年3月真打昇進。創作らくごの鬼。キャンプや登山・釣りを趣味とするアウトドア派な一面を持つ。TBSラジオでも毎週ネタおろしの創作落語を放送している。先日スマホを水没させてしまった。
レビュー
2019.6.19(火)20-22「しゃべっちゃいなよ」
三遊亭青森(さんゆうてい あおもり)-天才回答少女愛ちゃん
桂三四郎(かつら さんしろう)-りこんまる
立川笑二(たてかわ しょうじ)-わかればなし
古今亭駒治(ここんてい こまじ)-悲しみの島
林家彦いち(はやしや ひこいち)-いばしょ
二つ目に昇進したばかりで、初登場の青森さんと、2回目のしゃべっちゃいなよの笑二さんに、実力派の三四郎さんと駒治さんの組み合わせ。いろいろな化学反応が起きて、カオスな落語会になりました。ネタ的には「設定バレ」するものばかりですが、設定説明を避けるとレビューにならないので今回、多少のバラシはあります。
三遊亭青森さん
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三遊亭青森さん
設定バレしますが、スタイルは音声を用いた掛け合いコントです。クイズ大会に出演した天才少女「愛ちゃん」が、出題される問題にすべて「一文字」で回答するというもの。「かいとう少女」が怪盗でなくて回答になっているのはそのためです。青森さんは愛ちゃんになりきり、音声で出題される問題に答えていきます。答えた後、卓球のポーズで「何でも答える一文字愛!」の決めゼリフ。腹が立つほど面白いです。
出落ちのリスクを抱える中、「一文字」の解釈が途中から英語になったり、歌になったりと飽きさせません。最後は愛ちゃんがおばけに追いかけられるロールプレイングゲームに発展。「唖の釣」を思わせるサゲも決まって見事でした。音声との掛け合いのため、事前の稽古はかなりしたことは想像できますが、鏡を前に練習している姿を思い浮かべると笑えてきます。
桂三四郎さん
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桂三四郎さん
本編は、離婚を決めた両親のどちらに着いていくかで悩む子供たちの話です。こちらも設定バレしますが、息子・ユウくんに向かって「お母さんは離婚して家を出るから一緒に暮らそう」という母親に、「俺、今年で38歳や」というツッコミから始まります。この設定だけで、先が面白くなることは目に見えています。しかも、別れたい理由があるベストセラー本の影響で、お父さんに「○○」がなくなかったから。ある意味、正論なだけに、お母さんが悪者には見えません。
三四郎さんがすごいのは、そこにユウくんの家族を巻き込むところ。娘・リカちゃん(小3)が出てきて、ユウくん夫妻の離婚騒動にも発展していきます。妙にませているリカちゃんが、キャバ嬢並みのテクニックでユウくんを翻弄していく展開に笑いました。
誰でもわかりやすいホームドラマで、笑いだくさん。みんなをハッピーにできるのが三四郎さんの創作落語。師匠である6代文枝の精神を受け継いでいるなあと思います。
立川笑二さん
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立川笑二さん
「死ぬまで一緒にいよう」とアヤカに言っていたヒロくんが、なぜ死ななければならなかったのか。本当の悪人は誰なのか。その真相が次々と明らかになっていくのがこの作品の醍醐味です。前半の伏線部分から、ひと言のセリフも聞き逃せません。「世にも奇妙な物語」が好きな人にもオススメです。
笑二さん、3年前の2016年2月に出演した時の「耳たぶいらない」もホラー仕立てでした。古典落語でも、黄金餅をかなりブラックな味付けにしたりと、人間の悪意があふれ出てくる話自体が根本的に好みなのかもしれません。非常に完成度の高い一席でした。
古今亭駒治師匠
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古今亭駒治師匠
面白いのは、主人公がマイのお父さんにシフトしてくこと。マニュアル車の運転しか教えない教習所で、教官がレディース上がり。お父さんに対してスパルタで教えます。なかなか運転技術が上がらないお父さん。そのうちに合宿所で同室をあてがわれていた杉並クンを巡って大事件が発生。お父さんはマイのために杉並クンを救うことができるのか。
駒治さんの創作はとにかく情報量が多い、多い。頭の中のCPUのターボブーストを有効にしなければ、処理が追いつきません。5月に開催された「せめ達磨」の駒治作品集でも、駒治作品をやった方が、固有名詞の多さや台本の厚さに苦労していたほど。展開の切り替えも高速で、聞き手にも運転テクニックが必要です。しかし、その流れに乗ったらこれほど心地よいことはありません。またまた駒治超特急に乗りたくなるんですよね。
林家彦いち師匠
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林家彦いち師匠
銀行員の中年男が祭りにやって来ると、「居場所のない人の露店」があった。謎のおじさんに連れられて、実体のないもの、行き場のないものを見ているうちに「居場所は自分で作るもの」だと諭される。説教じみた感じになるところですが、随所にギャグが入っているので、押しつけがましいところがありません。
奇しくも前説でタツオさんから「創作落語を作るコツは?」と聞かれた彦いち師匠が「自らの中からあふれ出るものを表に出す」と言っていました。今回の作品はまさにその通り。現在の彦いち師匠の中にあるおじさん世代への憤りや自分への戒めが、この作品を生み出したのかもしれませんね。
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」6/18 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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