渋谷らくごプレビュー&レビュー
2019年 7月12日(金)~16日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
「三連休も今日で終わりか…」、なーんて憂鬱な気分はこの公演で吹き飛ばそう!
二つ目なりたての文吾さん、メディアにイベントに創作に大忙しの吉笑さん、日本全国飛び回る「ザ・元気」の兼好師匠、そしてトリは「渋谷らくご」の心臓、達人・馬石師匠です。どう転がっても楽しい会です。
そして元気をもらえること請け合い! 落語はほどよく脳を使って想像し、お客さんを元気にさせる芸能です。
▽橘家文吾 たちばなや ぶんご
21歳で三代目橘家文蔵師匠に入門、芸歴6年目、2018年11月二つ目昇進。本名が「中西翼」とカッコいい。この時期は真っ白なTシャツにジャケットを羽織っている、カッコいい。
▽立川吉笑 たてかわ きっしょう
26歳で入門、現在芸歴9年目、2012年4月二つ目昇進。もともとは酒豪だったが、酒断ちをしていまは炭酸水で過ごす。理系の大学に進学した経歴もあり、料理をパターン化して攻略している。あらゆるパターンのパスタを試し始めている。
▽三遊亭兼好 さんゆうてい けんこう
27歳で入門、現在芸歴21年目、2008年9月真打昇進。渋谷らくご初出演。イラストが得意で、ウェブサイトにも絵日記を公開している。着物に風呂敷包みのスタイルで行動していることが多い。
▽隅田川馬石 すみだがわ ばせき
24歳で入門、芸歴26年目、2007年3月真打昇進。1年に1度は市民マラソンに参加するときめている。フルマラソンのベストタイムは、4時間を切るほどの速さ。夏は汗をたくさんかいて、新陳代謝を高める。近所であれば自転車で行動する。
レビュー
7月15日(月)14:00~16:00「渋谷らくご」
橘家文吾(たちばなや ぶんご)「明烏」
立川吉笑(たてかわ きっしょう)「カレンダー」
三遊亭兼好(さんゆうてい けんこう)「鈴ヶ森」
隅田川馬石(すみだがわ ばせき)「船徳」
毎日のように雨が降ったり止んだりのハッキリしない天気が続いている。今日は三連休の最終日、けれども晴れやかな気持ちと空にはならない。
今日の会は「元気がでる落語会」とのこと。プレビューには「『三連休も今日で終わりか…』、なーんて憂鬱な気分はこの公演で吹き飛ばそう!」とあり、そうだそうだと心の中で賛同の意を表明する。私にいま必要なのは、こういうカラッとした何かだと思う。まだかなまだかなと、満員の客席の片隅で元気を分けてもらうのを待っていると出囃子の音。
橘家文吾「明烏」
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橘家文吾さん
この日は、明るいに烏で「明烏」。どこか華やいだ雰囲気のある演目名だが、どうしてこの演目名なのかよくわからない。噺のなかに出てくる何かなのか、それとも全く関係ないのか、よくわからない。でもとてもセンスのいい演目名だと思う、明るいに烏で「明烏」。
ぽわわんとした時次郎、「町内でも札付きのワル」という無垢な発言に傷つく部分のある源兵衛と多助、やけにキャラ立ちした遊郭の女将さん。バカバカしいなぁと笑いながら、私もぽわわんとしてしまう。ぽわわん。
やや時間超過だったのが残念。まくらを合わせて四十分弱だったので、途中で集中力が切れてしまう部分があった。こういう、まだまだこれからな部分があるのもよい。いつか共に時代を歩いていく中で「二つ目のころの文吾さんはさぁ、」と話す日が楽しみ。きっとその時には、今日のことを思い出すだろう。「今じゃ考えられないけれどさぁ、その日の『明烏』は」と。
立川吉笑「カレンダー」
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立川吉笑さん
その時に私は「立川談笑師匠の一門(吉笑さん・笑二さん・談洲さん」を挙げた。言わずもがなに面白くって人気があって明るい談笑師匠。エッジの効いた新作落語を生み出して古典にも挑んでいる吉笑さん。古典落語に新しいフレーズを入れてくるのかという驚きが多々あって大好きな笑二さん。もうすぐ二つ目に昇進して活躍が楽しみな談洲さん。それぞれの色の美しさがあり、まさに箱推ししたくなる一門ではないだろうか。
そんな箱推し一門のメンバー、吉笑さんの「カレンダー」。
小さなミスが重なった結果、何だかよくわからない時間を生きることになってしまった島民たちのドタバタした物語。「うるう年」という暦のシステム上のバグのような部分が、際限なく広がり、手が付けられなくなる可笑しさ。「いやもっと早く気づけよ!」と思いながらも、この何だかおかしいなと感じているのに、まぁとりあえずいいかと日常を過ごしていることって結構あると思う。こういう小さな引っ掛かりを契機に、大きく大きく広げて落語を構成する吉笑さんの感じが好き。
三遊亭兼好「鈴ヶ森」
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三遊亭兼好師匠
高座にあがって一声目を聴いた時から、「あっこの人は面白いな」と伝わってくる雰囲気。その人がその場にいるだけで、空気がどことなく柔らかくなるような感じ。「あんな暦をあれこれして頭を使う噺の後で、休憩が短すぎでしょ」と、空間を共有する多くの人が何となく考えていたことを言語化出来ることの凄さ。さすがだなぁ兼好師匠と思う間もあらばこそ、ケラケラと笑いがいっぱいのまくら。
あれ「鈴ヶ森」ってこんなに面白いのかと、笑いっぱなしの頭でぼんやりと考える。経験不足なのか天然なのか、とにかくどうしようもないけれども何より親分のことが大好きな新入りの泥棒。お前に泥棒は向いていないと口では言いながらも、突き放さずに育てようとしている部分のある親分。あまりにもバカバカしい展開で笑っているなかに、どこか二人の間の愛が感じられるのが最高。すごいなぁ。
隅田川馬石「船徳」
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隅田川馬石師匠
季節の噺を聴くと、何となくその時期が来たのだなと嬉しい気持ちになる。春になると今年もお花見の季節かぁと思う噺があり、秋になると秋刀魚食べたいなぁと思う噺があり、冬になると温かい鍋が食べたいなぁと思う噺があり。そして夏になったら一度は出会いたい噺が「船徳」。今年最初の「船徳」が馬石師匠というだけで最高の気分、あぁ私のところに夏がやってきた。
暑い盛り、今は梅雨寒が続いているけれどすぐにやって来る、茹だるような暑い季節。勘当されて船頭になった若旦那の徳さんと、四万六千日へと行く途中で舟に乗った二人連れのバカバカしいやり取りが繰り広げられる。そうそう、これこれ。この季節に、この感じを味わうことができる幸せ。 お客さんの態度に対して、どこか反抗的な表情をする徳さんの愛らしさ。怒ることなく仕方ないなぁと許容する二人連れのお客さん。何てことはないのだけれど、でもとても好きだし、あぁ何だか元気になったよ。
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「渋谷らくご」7/15 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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