渋谷らくごプレビュー&レビュー
2019年 7月12日(金)~16日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
柳亭小痴楽、トリをとる! 9月に昇進する小痴楽さんの、二つ目時代も残りわずかになってきました。
北海道出身の市童さん、沖縄出身の笑二さん、大阪の福笑師匠、東京の小痴楽さん。この会見れば日本の落語を制覇したと言っても過言……ではある。が、渋谷らくごが激推しする注目すべき二つ目大集結、そこにベテランの爆笑怪物・福笑師匠を大阪からお呼びしたので、小痴楽さんへのプレッシャーと、この会にかける熱い想いを受け取ってください。最高の会となるでしょう。
▽柳亭市童 りゅうてい いちどう
18歳で入門、芸歴9年目、2015年5月二つ目昇進。2018年渋谷らくご大賞「おもしろい二つ目賞」を受賞。最近すこし太ってきたらしい。最近、人生で二度目の丸亀製麺ブームが来ている。ネタおろしをした次の日は、部屋を片付けるルーティーンがある。
▽立川笑二 たてかわ しょうじ
20歳で入門、芸歴8年目、2014年6月に二つ目昇進。沖縄出身の落語家。飲み会に参加することが多いが、気付くと寝てしまっている。公園のベンチで落語の稽古をする。笑二が一発で変換できないため「笑う」「二年間」と打ち込んでから「う」と「年間」を消す。
▽笑福亭福笑 しょうふくてい ふくしょう
19歳で6代目笑福亭松鶴師匠に入門、芸歴51年目。高校を中退し、落語家になることを決意して入門する。前回シブラクにご出演されたときは、渋谷でラーメンを食べてから楽屋入りされた。「若者向けの味付だった」と言っていた。
▽柳亭小痴楽 りゅうてい こちらく
16歳で入門、芸歴13年目、2009年11月二つ目昇進。2019年9月に真打昇進することが決定。ツイッターに、温泉での入浴シーンや、下着姿といった衝撃的な写真がアップされている。病的なほど本を読んでいる。焼肉好き。
レビュー
2019.7.16(火)20-22「渋谷らくご」
柳亭市童(りゅうてい いちどう)-夢の酒
立川笑二(たてかわ しょうじ)-五貫裁き
笑福亭福笑(しょうふくてい ふくしょう)-桃太郎
柳亭小痴楽(りゅうてい こちらく)-宿屋の仇討ち
職場をそそくさと出て、その日の仕事や同僚等とのやりとりを思い出しながら電車に乗り、ユーロスペースに着く。渋谷らくごの音楽を聴きながら、舞台の座布団を見る。その度に、落語家の方々はこの座布団の上で、自分の芸一つで口に糊しているのだなぁ、と憧れと敬意の念を抱かずにはいられない。開場してから開演するまで、渋谷らくごの舞台は仄暗い。その仄暗さの中に置かれた一枚の座布団が、落語家の孤高さを思わせるのだ。落語家の方々がその演技で、孤高さを感じさせなければ感じさせないほど、公演の後の座布団への尊敬の念も強くなる。尊敬はもちろんその上に座っていた落語家の方々に対するものなのだが、座布団は出演した落語家それぞれの苦悩を知っているように思えるのだ。
座布団の上に座るのに、年齢は関係ない。それもまた格好いい。7月16日20時の回の最初は、1991年生まれという柳亭市童さん。ところで、この後の立川笑二さんが自分の芸名を携帯で表示させる話がプレビューにあったが、これから私がレビューを書かせていただく落語家のお名前をユーザー登録することにした。その第一号が今、柳亭市童さんだった。市童さんにも笑二さんにも申し訳ない。
柳亭市童さん
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柳亭市童さん
立川笑二さん
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立川笑二さん
今回の噺は「五貫裁き」。笑二さんの魅力の一つが、可笑しい噺の途中でかなりヒヤリとさせる場面を入れてくることだと思う。今回の噺では、家主が徳力屋をどやす場面で、まさに立て板に水のごとく罵倒していて、圧倒させられた。笑わせ上手で、間の取り方も絶妙、さらに全力で罵倒もできる。個人的には手を重ねる独特の所作も、笑二さんのアイコンのようでとても好きだ。
笑福亭福笑師匠
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笑福亭福笑師匠
枕ののち本編は「桃太郎」、寝物語の下手な(?いや普通なのだが)父に代わり、息子が桃太郎を迫力たっぷりに語ると噺だ。福笑師匠は声色をさほど変えずに人物を演じ分ける。この親子もそうだった。鬼と桃太郎が対峙するところなど、物語を語っている息子と父も出てくるのだから、登場人物は4人、それなのに今どれが語られているか明らかだし、当然笑える。せんべい布団の中でじゃれている父子と、鬼ヶ島の城の奥で生死を賭けて戦う桃太郎と赤鬼というすごい対比なのだ(せんべい布団というのはもちろん私の妄想だが、父子がフカフカのベッドで話しているようにはとても思えない)。調子の良い関西弁で、かと行って大げさでなく、自然にそんな場面に連れて行っていかれる、その快感がたまらない。そしてハッと気づくと夢物語は終わっていた。
柳亭小痴楽さん
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柳亭小痴楽さん
トリは間もなく真打になられる柳亭小痴楽さん。若手とはいえ古典落語の上手い2人と、福笑師匠の後ってプレッシャーになったりするのか、ならないのか、いやそんな想像は不要だな、と枕を聴いて思った。真打披露の打ち上げの費用は、毎晩その真打持ちとな、本当にお金のかかることで。そんなめちゃくちゃ現実的な話題で、聞き手の頭も福笑師匠の夢物語からきっちり切り替わった。
本編は、小痴楽さんの江戸っ子っぷりが遺憾なく発揮される「宿屋の仇討ち」。若い江戸っ子が三人もいるのだから申し分ない。啖呵の切りっぷりもいいが、若さゆえの軽妙さ、臆病っぷりも最高だ。隣の部屋の侍が怒っていると宿屋の者に言われるたびに、すっかり忘れてタァ、とおどけつつヒソヒソ声に早変わり。江戸っ子の1人が侍の仇だと言われた時のビビリっぷり。小痴楽さんって、こういう江戸っ子そのものなんじゃないかと思ってしまうほどだ。その分、侍のキャラが少し薄かったような気がするけれど、それはご愛嬌、また小痴楽さんでこの噺を聞きたいな、と思わせられた。
演目が終わると、渋谷らくごでは、舞台の後ろに演者のお名前とその日の演目を投影してくれる。それを携帯で撮影して帰るのが私の最近のルーティンだが、その舞台にはやはり座布団がある。面白ければ面白いほど、夢の跡、という印象が強くなり、そして落語家への憧れと尊敬の気持ちがいや増すのだ。
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」7/16 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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