渋谷らくごプレビュー&レビュー
2019年 8月9日(金)~13日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
渋谷らくごの偶数月に行っている創作らくごネタおろし会「しゃべっちゃいなよ」。
これまで数々の名作が生まれてきましたが、演者さんにとっては需要が少なく、労力はかかるというカロリーの高い作業です。
それでも、この会だけは参加するというお客さんも増えて参りました。一方で、はじめて聴くのでお笑いライブのノリでネタおろしの会から♪なんて人もいらっしゃいます。
どんな人とでも、落語は演者と観客で協力して作り上げていくものです。さあ、ほかでは味わえない劇場体験を、一緒に経験しましょう!
▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。楽屋で仲間を驚かせるためパンツ一枚になることがある。全人類はインドに行きたいはずだという深層心理を暴いた「全人類印度理論」というものをブログに掲載した。
▽柳家勧之助 やなぎや かんのすけ
21歳で入門、現在芸歴17年目、2018年9月真打昇進。先日古典落語をやって、楽屋に戻ると彦いち師匠から、「YOU 新作やっちゃいなよ!」と言われたので、今回「しゃべっちゃいなよ」に緊急参戦することになった。
▽立川吉笑 たてかわ きっしょう
26歳で入門、現在芸歴9年目、2012年4月二つ目昇進。もともとは酒豪だったが、酒断ちをしていまは炭酸水で過ごす。スマホゲームのドクターマリオを真剣に遊んでいる。「天気の子」を見て、やる気が湧いた。
▽三遊亭粋歌 さんゆうてい すいか
2005年8月入門、現在13年目、2009年6月二つ目昇進。「2016年創作大賞」受賞者。28歳で突如会社勤めをやめて、落語家になる。子育てのまっただ中。新作落語は喫茶店かファミレスに入ってつくる。
▽林家彦いち はやしや ひこいち
1969年7月3日、鹿児島県日置郡出身、1989年12月入門、2002年3月真打昇進。創作らくごの鬼。キャンプや登山・釣りを趣味とするアウトドア派な一面を持つ。ヒマラヤ山脈にて、高山病と戦いながら落語をやったこともある。
レビュー
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)-OGYA! (2024年パリ五輪新種目(仮)) ※GYAO!にて放映予定
柳家勧之助(やなぎや かんのすけ)-君の笑顔が一番だよ
立川吉笑(たてかわ きっしょう)-当日談
三遊亭粋歌(さんゆうてい すいか)-浮世の床から
林家彦いち(はやしや ひこいち)-さとみ
文:木下真之/ライター Twitter:@ksitam
創作落語を中心に活動し、シブラクでもおなじみの二ツ目さん3人と、古典落語に軸足を置き、シブラク自体が初登場となる真打の勧之助師匠が激突。ワクワクするようなマッチメイクが8月の「しゃべっちゃいなよ」で実現しました。引きずりこまれた感のある勧之助さんは、予測もつかない力技で戦い、見事な爪跡を残してくれました。
他の創作落語の会ではあまりない「しゃべっちゃいなよ」のライブ感は、彦いち師匠とタツオさんの掛け合いによる前説で生まれてくるような気がしています。緊張感漂う楽屋レポートから、創作落語家のスピリット、個々に異なる創作手法まで、あまり明確に表現できないものを、ニュアンスで伝えてくれる彦いち師匠と、それをつっこみでカバーしながらかみ砕いてくれるタツオさん。
初めてのお客さんでも何となく創作落語が理解でき、徐々にお客さんの期待感も膨らんでいってトップバッターからスッとその世界に入っていける。それも包み込むような目で後輩たちを見守り、最後を締めてくれる彦いち師匠がいるからこそ。芸歴30年の貫禄を感じます。
春風亭昇々さん
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春風亭昇々さん
赤ちゃんの泣き声を競う「泣き相撲」はほうぼうの神社で伝統行事の一環として行われていますが、まさか五輪の新種目にもなりそうな「OGYA!選手権」があったとは! しかも、出場者は赤ちゃんじゃなくて普通の大人。ファイナリストになるためには、筆記試験、ダンス、フルマラソン、お寺での瞑想合宿などをクリアして、心技体が揃った人間として認められないといけないのだそうです。
今回は、理想の「OGYA!」を出すために4年間の訓練を重ねてきた人が決勝戦に挑む話。鬼の赤井コーチの指導を受けながら本番を迎えます。面白いのは、どの泣き声が○でどんなのが×なのかさっぱりわからないところ。「おぎゃー」でもなく、「ぶわぁ」みたいな変な泣き声にコーチが「ナイスクライ!」と声をかけ、「泣き声にストーリーを感じさせろ」と熱血指導する。昇々さんのマンガチックな顔芸、声芸が存分に発揮されて「もっともっと泣いて!」と応援しながら見ている自分がいました。
柳家勧之助-君の笑顔が一番だよ
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柳家勧之助師匠
何の大会か定かではないのですが、高校日本一をかけて「おしり学園」と「おっぱい高校」が決勝戦で戦うという設定(昇々さんとの設定かぶり!)。何十年もおっぱい学園に勝てなかったおしり学園が、「おしりこそ一番」のプライドをかけて戦います。「うなじ育英」や「かかと高校」もあり、特定フェチの集まりのようです。エロ版「魁!!男塾」は、なぞかけ対決、歌対決など過酷な勝負ばかり。最後はなぜか「話し合い」で雌雄を決します。
エロキーワードは満載ですが、不思議といやらしさを感じさせず、人前でもカラリと笑える下ネタでした。今宵限りのネタになってしまうかもしれませんが、リミッターを外してやり切った勧之助師匠のプロ根性。高座後の表情からは、すがすがしさが見えました。
立川吉笑-当日談
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立川吉笑さん
2人の会話ものは一般的に、片方がボケて片方がツッコミという構造を取るケースが多いのですが、今回の話は両者とも癖があります。男Aの初恋相手は、目の見えない女の子で、彼女の家に行くためには、目印ではない他の「印」を頼りにするという異色奇譚。男Bの初恋は、女優を夢見る女の子が相手で、夢を追うために別れたという話。ありがちな話と思いきや後日談が衝撃的です。高校時代の部活の思い出も、男Aは「帰宅部」を作って全国大会に出たという。男Bはありふれた将棋部でありながら、その後日談がさらにすごい。
「後日談を優先して話せ」というツッコミから当日談になるのですが、後日談がすごいのか、男Aの奇想天外な話のほうがすごいのか。聞き手の価値観、笑いのセンスにも問いかけてくる話です。本筋には関係ないのですが、ストーリーの中に「耳の聞こえない女の子」が自然に盛り込まれていて、違和感なく聞くことができたのが印象的でした。
三遊亭粋歌-浮世の床から
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三遊亭粋歌さん
主人公のカラスモリ・サワコさん(43)は中学生時代から30年来のひきこもり。年金生活に入る父親から「命綱のWi-Fiを切る」と説得されて派遣会社の面接に応募。「とあるコンビニのバイト面接を受けて落ちる」というミッションを日給1万円で引き受けます。
ところがコンビニオーナーのコメデラさんは大の落語好き。会話の途中で落語ボケを連発。落語の世界の住人たちの共存共栄の生き方が、カラスモリさんの心に変化を起こしていきます。炎上騒ぎで閉店が決まっているコメデラさんのコンビニはどうなるのか。カラスモリさんはひきこもりから脱却できるのか。
キャラクターをしっかり設定し、心情を丁寧に追いかけていく粋歌さんのドラマ創作の手法は大好きです。主人公の成長も描かれている一方、今回はバッドエンドを用意してきたのが意外でした。個人的には救いも残して欲しいところですが、伏線で使う「浮世」のワードと、タイトルからするとその流れになるのは必然なんでしょうね。ひきこもりという重いテーマに正面から挑み、面白くなるかならないか不安の中で作って高座にかけたという今作。素敵なチャレンジでした。開拓者精神と勇気に拍手を送りたいです。
林家彦いち-さとみ
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林家彦いち師匠
小学6年生の娘「さとみ」に向かって「今日からAIになる」と突然宣言したお父さん。「OK Google」ならぬ「OK お父さん」と呼びかけて、音声で命令を出すだけで検索をしたり音楽をかけてくれたりします。外に一緒に出れば札付きのワルからも「OK お父さん」で守ってくれるけど、落語好きのお父さんはだじゃれもいうし、落語のフレーズも言う。さとみにとっては頼りになるけど、ちょっと迷惑な存在。
「さとみの本心はどうなのか?」。想像の先を行く意外な結末が用意されている彦いち師匠らしい作品でした。前の出演者4人のネタを巧みに取り込むのも彦いち師匠の腕の見せ所。全体の余韻も楽しめて、いい締めくくりになりました。
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文: MMK Instagram:@mamikomame 着物、落語初心者。カレー好き。白熊をこよなく愛しています。
春風亭昇々さん
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春風亭昇々さん
柳家勧之助師匠
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柳家勧之助師匠
立川吉笑さん
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立川吉笑さん
三遊亭粋歌さん
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三遊亭粋歌さん
林家彦いち師匠
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林家彦いち師匠
「渋谷らくご」8/13 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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