渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2019年 11月8日(金)~13日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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11月8日(金)20:00~22:00 橘家文吾 春風亭百栄 立川笑二 柳家花緑

「渋谷らくご」花緑、登場:はじめての落語体験に

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プレビュー

◎トークゲスト:青木伸広(神保町 らくごカフェ 主宰)

 柳家花緑師匠が「渋谷らくご」に登場です。お弟子さんたちも多彩な花緑師匠。弟子が育つということは、つまづきを言語化して教育し、さらに個性を否定せずに伸ばすことができるということ。そのお弟子さんたちを見るだけでも、花緑師匠が落語と向き合って得た「気づき」が感じられます。つまり、これは落語を聴くお客様の立場も想像できるという、やさしさがあるということ。
 注目の二つ目の笑二さんがその前に登場。二つ目になりたての文吾さん、そして落語の妖精 百栄師匠も登場の豪華な会です。

▽橘家文吾 たちばなや ぶんご
21歳で三代目橘家文蔵師匠に入門、芸歴6年目、2018年11月二つ目昇進。本名が「中西翼」とカッコいい。先日、アベンジャーズのDVDを購入して、一気見をした。くるぶしまでの靴下を愛用している。

▽春風亭百栄 しゅんぷうてい ももえ
年を取らない妖精のような存在。さくらももことおなじ静岡県清水市(現・静岡市)出身、2008年9月真打ち昇進。
落語協会の野球チームでは、名ピッチャー。アメリカで寿司職人のバイトをしていた。日常生活の様子はわからないが、猫好き。

▽立川笑二 たてかわ しょうじ
20歳で入門、芸歴8年目、2014年6月に二つ目昇進。沖縄出身の落語家。飲み会に参加することが多いが、気付くと寝てしまっている。公園のベンチで落語の稽古をする。酔っ払いながら落語の稽古をすると、登場人物になった夢を見るらしい。

▽柳家花緑 やなぎや かろく
15歳で祖父である五代目柳家小さんに入門、22歳で真打昇進、戦後最年少で真打ち昇進を果たす。芸歴33年目。なんでも挑戦を続けおもしろがる、最高の努力家でもある。先日、秋田の大館にて本物のハチ公の銅像を見てきた。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@toyono2010 (シンガポール育ち。落語、漫画、読書、映画が大好き。!最近読んで面白かった本は、密漁ドキュメンタリー「サカナとヤクザ」by鈴木智彦)

橘家文吾(たちばなや ぶんご)-磯のあわび
春風亭百栄(しゅんぷうてい ももえ)-浮世根問/鼻ほしい
立川笑二(たてかわ しょうじ)-妾馬
柳家花緑(やなぎや かろく)-あたま山

五周年、おめでとうございます!
お祝いにふさわしい豪華な会で記念興行第一日めです。今日は注目の二つ目・橘家文吾さん&立川笑二さん、マッシュルームカットが可愛い落語の妖精・春風亭百栄師匠、そしてトリは天才・柳家花緑師匠です!

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橘家文吾さん「磯のあわび」

  • 橘家文吾さん

初めて見たとき、文蔵師匠譲りのちょっと皮肉っぽくて堂々とした感じがイイナ!と思った文吾さん。渋谷らくご一年目から高座返しで参加しているという、正に「渋らくと一緒に育った」二つ目さんです。
今日は廓噺。女にモテて遊んで得する「オツな女郎買い」のプロになるべく奮闘する与太郎さん。こういう天然男は結構モテるのでは?とハッピーエンドを期待してしまいます。与太郎さんの運命はいかに?文吾さんの天然与太郎ぶりに大笑いしてしまいました!
このお噺は遊郭でのしきたりや、お女郎買いのステップなどが出てきます。ガツガツしないで「フラれなければラッキー」ぐらいの余裕で挑むと案外モテるらしいです。「粋」というのは暗黙の了解というのを、つくづく感じた一席でした。

春風亭百栄師匠「浮世根問/鼻ほしい

  • 春風亭百栄師匠

今日は短編二本立てのような演目。
二人の登場人物がフワフワじゃれているような浮世根問。落語の演目の中では、基本中の基本的なお噺らしいです。聴いたことあるような気もしますが、百栄師匠のは全然雰囲気が違う!不思議な妖精の時間が流れているのでしょうか。。
そして、「鼻ほしい」は、寄席では滅多にかからないは珍しいネタらしいです。若い頃の遊びでうつされた病気(師匠の言うところの梅淋ガル?)が原因で鼻がないお侍。そのために馬鹿にされたり、色々苦労が絶えません。
「わひははにゃがほひい(わしは鼻が欲しい)」など鼻のない喋り方が、妖精語に聞こえてしまう不思議面白い?一席でした。

立川笑二さん「妾馬」

  • 立川笑二さん

皆さん落語協会からご出演のところ、唯一、立川流から参戦した笑二さん。
今日は、通常のお噺メインパートの二年前からスタートする珍しい妾馬。八五郎の妹・お鶴が殿様に気に入られて奉公に上がるところから始まります。その後、お世継ぎを産んだお鶴を八五郎が訪ねていく顛末は、有名な妾馬の通り。
お殿様の前で上品ぶって失敗したりする八五郎の姿は間抜けで可笑しいのですが、後半の妹思いの八五郎にはジンと来てしまいます。昔は身分が違うと、家族でもなかなか会えなくなってしまうのですね。。
親の登場はなく八五郎とお鶴がたった二人きりの兄妹で、二人は長屋全体の子供&お鶴の子供(殿様のお世継ぎ)は長屋全体の孫としたシチュエーションが斬新。人情味があふれる笑二さんの妾馬でした。

柳家花緑師匠「あたま山」

  • 柳家花緑師匠

「ド天才」で名高い花緑師匠。いつもフレッシュで「目減りしない人」だそうです。
でも、かつては発達障害をカミングアウトしたという師匠。このような障害(個性?)を持つ人は、超人的な集中力を発揮するとのこと。花緑師匠のお祖父様・人間国宝の小さん師匠もちょっと「そっち系」だったとか?(最近では国連での「怒りのスピーチ」が有名なグレタ・トゥーンベリさんもこのような個性の持ち主です)。
というわけで、今日のシュール度が増した花緑師匠の「あたま山」は爆弾でした。さくらんぼを食べて頭に桜の木が生えてくる数ある落語噺の中でも不思議度No.1。このシュール噺を完全に自分のモノにしてしまった凄い説得力!選ばれた人にだけできる一席でした。アフタートークでのタツオさんのコメント、「新海誠監督の天気の子みたいな宇宙感がある」には実に納得でした!

今日は神保町らくごカフェ主催・青木伸広氏のトーク付き。らくごカフェはなんと十周年。記念イベントを武道館で行うまでになったという落語への熱意に驚きでした!噺家さんの数も史上最多で、落語シーンは史上大変な盛り上がりを見せているそうです。これからも楽しみ!
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」11/8 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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