渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2019年 11月8日(金)~13日(水)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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11月11日(月)20:00~22:00 立川こしら 古今亭志ん五 橘家文蔵 玉川太福*

「渋谷らくご」笑門太福:爆笑演芸会

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プレビュー

 爆笑の会! そう銘打っても大丈夫! こしら師匠、志ん五師匠、文蔵師匠、そして太福さん、エンターテイナー勢ぞろい。
 いや待てよ、爆笑編だけじゃなくて人情噺の線もあるぞ? どういう展開になるのか、乞うご期待!
 贅沢すぎる番組、ぜひ初心者の方もいらしてください。

▽立川こしら たてかわ こしら
21歳で入門、芸歴21年目、2012年12月真打昇進。フットワークが軽く、日本のみならず海外でも独演会を開催。マクドナルドやファミレスを好み、コーラを飲む。ピアスからワッペン、そしてインドの香辛料まで幅広く通信販売している。

▽古今亭志ん五 ここんてい しんご
28歳で入門、芸歴16年目、2017年9月真打昇進。平成30年度国立演芸場「花形演芸大賞」で銀賞。渋谷らくごの公式読み物どがちゃがでは、志ん五師匠の似顔絵コラムが掲載中。この時期は、長袖のチェックシャツを着がち。

▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう
24歳で入門、芸歴33年目、2001年真打昇進。晴れている日は積極的にお布団を干す。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。最近つくった料理は「蓮根と鶏皮を白胡麻油で炒めたキンピラ」。

▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門。JFN系列にて放送中の「ON THE PLANET」のパーソナリティとして、毎週火曜日25時から出演中。青春をラグビーで過ごしたこともあり、この秋はラグビーを堪能した。

レビュー

文:月夜乃うさぎTwitter:@tukiusagisann 精神科系相談員 月末は京都へ行こうと計画中

立川こしら(たてかわ こしら)-やかん
古今亭志ん五(ここんてい しんご)-締め込み
橘家文蔵(たちばなや ぶんぞう)-馬のす
玉川太福(たまがわ だいふく)/玉川みね子(たまがわ みねこ)-地べたの二人〜愛しのロウリュ

 この11月、渋谷らくごは五周年をお迎えとのこと、本当におめでとうございます。
11月はお祝いで、トークゲストもいらっしゃって、通うのも楽しかった。会場の壁には、過去に開催された渋谷らくごのパンフレットが貼り付けてあって、それにも感激する。第1回目のパンフレットには、喜多八師匠、A太郎さん、正太郎さん、生志師匠のお名前も書いてある。私が最初、渋谷らくごに足を踏み入れた頃、会場を盛り上げていた落語家さんたちだ。懐かしい。モニターとして入った11日は18時会を友人二人と拝見した後、友人たちと別れて、一人で20時の会に伺った。

立川こしら「やかん」

  • 立川こしら師匠

 今回の開口一番は、立川流の若き天才の一人、こしら師匠だ。毎日テレビ番組でも多くのレギュラーを抱えている立川志らく師匠のお弟子さんである。こしら師匠は「この落語家、住所不定。」という住居を持たないという新たな発想のライフスタイルの本を出版されているが、こしら師匠、落語でも本でも、今回の高座でも、なかなかの天才&奇才なぶりを発揮している。あまりにも天才&奇才ぶりを発揮している故に、「落語家のようなもの:立川こしら論」という評伝まで過去にどなたかに出されている。立川こしら師匠を論じたい気持ちは痛いほど理解できる。しかしこしら師匠は、奇才の持ち主ゆえに本質を見誤りそうで、私はレビューを書くのにも、少し慎重になる。金髪や茶髪の外見、軽妙な口調、古典落語クラッシャー、しかし新作落語として落語はやらない。今回の「やかん」も演目名は古典落語「やかん」だと思われるけれど、古典落語なのか、新作らくごなのか、鵜(う)が主人公なのでは?など、いろいろな疑問が残る。ただし、最高に楽しい落語だった。立川こしら師匠ご自身も、その落語も、とらえどころがないけれど、こしら師匠は、最高のエンターテイナーだ。 立川こしら師匠という落語家は、住民として「住所不定」というだけではなく、古典落語家とも新作らくご家というカテゴライズする意味でもとらえどころがない、「住所不定」に近い。カテゴライズしにくいが、唯一近いのは、古典落語のような新作落語をかける立川吉笑さんであろうか。毎回こしら師匠の高座はメチャクチャ楽しい。その楽しさは最初に聴いたときから今まで、ずっと変わらない。

古今亭志ん五「締め込み」

  • 古今亭志ん五師匠

 2番目に高座に上がられた志ん五師匠。映画、ラジオと、あらゆる所でご活躍した経験もありながら、新作も古典もそつなくこなす。釣りが大好きで、魚も好きすぎて新作らくごで魚ネタを作られている。テレビのタレントさんでいうと「サカナ、サカナ、サカナ、サカナを食べると♪」という曲でお馴染みの「サカナくん」のような存在の落語家さんだ。数年前に「三分落語の大会」に出場されたときに招待券をお願いして、分けていただいたことがあった。それからあまり拝聴しておらず、先月から久しぶりに志ん五師匠の高座を拝見する機会に恵まれた。NOTEでのシブラク出張ではトリの「紺屋高尾」で、古典落語の実力に驚いたが、今回の「締め込み」も本当に見事だった。声の良さとセリフが話の最中に程よくシンフォニーを奏でるように美しく語り、最後のオチでピタッと決まって感激させる所は、正統派なのを感じさせる。まくらから共演者のこしら師匠との再会エピソードも話が整理された話術を駆使して笑いも取って行く。真打ちとなり、志ん五師匠は数年前よりかなりステキな落語家さんになっている。客席にいると、同じ落語家さんから同じ噺を聴くのがつらい場合もあるが、志ん五師匠の「締め込み」は、また出会いたい一席だった。

 

橘家文蔵「馬のす」

  • 橘家文蔵師匠

 次に高座に上がられたのは、文蔵師匠である。私が最初に拝見したときは文左衛門師匠というお名前だった。前座時代はかな文、二つ目時代は文吾、真打ちで文左衛門師匠とお名前を変えて出世魚ブリのようにお名前を変えていらっしゃる。高円寺の「ノラや」や、池袋演芸場、鈴本演芸場あたりで文蔵師匠がトリの日は、お客様が文蔵師匠を、会場の外で出待ちしている光景をよく、お見かけする。テレビで食レポやお鍋のCMをやっても、きっと人気が出るであろう食の描写のうまさ、謝楽祭では毎年もつ煮のおいしさ、お料理が上手なのが有名な師匠で、私もTwitterで流れてくる、文蔵師匠の美味しそうなメシテロ画像が大好きだ。
今回の「馬のす」も馬の尻尾が痛そうなのもさながら、注目したのは、お酒に酔う仕草である。とにかく、美味しそうで楽しそうなのだ。文蔵師匠が何かを食べている仕草だけで、お腹がすいてくる。お酒をおいしそうに呑み、つまみを食べるしぐさが細やかで、特に枝豆を丁寧に召し上がる所作は丁寧でありながら、クルミを食べるリスのような可愛らしさがある。豆の数や味さえも客席で想像出来てしまいそうな細やかさ。まくらでの楽屋の話も楽しくて、自然に客席から何度も笑いが起こった。

玉川太福/玉川みね子「地べたのふたり~愛しのロウリュウ」

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠

 トリには、浪曲師の玉川太福さんがみね子師匠と共に登場した。大人気の浪曲師として、ラジオのレギュラー番組を持ち、新潮社の新潮講座では浪曲教室の講師として活躍されている。よく、まくらの話題にあがる、お住まいの日暮里地域は、今や谷根千と言われ、スノップで昭和レトロなオシャレカフェもありながら、昔ながらの銭湯が多く残っている街である。今まで、太福さんが鶯谷や日暮里の街のことをまくらで話したり、「地べたの二人」でお弁当のおかずや銭湯のことを唸る度に、昭和レトロな世界観に、私は思いを馳せていた。今回も「地べたの二人」シリーズだが、今回の噺で行く場所はどこかの繁華街にあるサウナらしい。電気屋さんの作業服を着た先輩と後輩の二人が、現在流行りのサウナでロウリュウを体験しに行く。ロウリュウ未経験の人には参考になる内容で、浪曲に馴染みのない私にも、すんなり耳に入って来た。熱波(ねっぱ)というタオルで熱い風を送るサービスの箇所は太福さんがおもしろいパフォーマンスをしだして、会場は爆笑の渦となった。
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」11/11 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ
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