渋谷らくごプレビュー&レビュー
2020年 10月9日(金)~13日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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10月13日(火)20:00~22:00 三遊亭ぐんま 立川吉笑 台所おさん 立川談吉 春風亭百栄「天使と悪魔」 林家彦いち(トークのみ)
創作らくごネタおろし「しゃべっちゃいなよ」
プレビュー
隔月で行っている創作ネタおろし会「しゃべっちゃいなよ」。2020年シーズンも、いろいろなことがありましたが、振替公演も無事終わり、今月です。今月のネタおろしが揃いますと、残すは12月の大賞決定戦。
ですが、大賞を受賞しなくても、優れたネタおろしもたくさんあります。落語は演者とお客さんで作り上げるもの。まずはこの日初公開の創作を一緒に作り上げていくスリリングな体験をぜひ!
レジェンド噺には、百栄師匠の「天使と悪魔」、昨年度大賞の談吉さん、12月常連の吉笑さん、ネタおろし初登場のぐんまさん、この会でしか創作ネタをやらない古典の人 おさん師匠、いずれもお楽しみに。彦いちPも登場しますよ!
▽三遊亭ぐんま さんゆうてい ぐんま
2015年29歳で三遊亭白鳥師匠に入門、2020年5月21日二つ目昇進。子供の頃の将来の夢はプロレスラー。高校3年生のときに、レスリング全国5位になったこともある。先日大日本プロレスのリングにあがることができた。
▽台所おさん だいどころ おさん
31歳で入門、芸歴19年目、2016年3月真打昇進。自分よりも年下の師匠に入門をする。落語家になる前に、東京から大阪まで歩いて旅したことがある。ふと思い立ち普段着で富士山に登ろうとしたら止められた。いまは自転車で行動している。
▽立川吉笑 たてかわ きっしょう
26歳で入門、現在芸歴10年目、2012年4月二つ目昇進。もともとは酒豪だったが、酒断ちをしていまは炭酸水で過ごす。最近は徐々にAdobe Premiere Proを使いこなしてきている。いまスマホアプリの「テクテクライフ」をプレーしている、ランクは12。
▽立川談吉 たてかわ だんきち
26歳で入門、芸歴13年目、2011年6月二つ目昇進。Netflixにて「ハイスコアガール」のシーズン2まで見て、感銘をうけたい。いまは「ドラクエⅣ」をプレーしている。ドラクエシリーズの戦闘BGM中で、「ドラクエⅣ」のBGMが一番かっこいいと思っている
▽春風亭百栄 しゅんぷうてい ももえ
年を取らない妖精のような存在。さくらももことおなじ静岡県清水市(現・静岡市)出身、2008年9月真打ち昇進。
落語協会の野球チームでは、名ピッチャー。アメリカで寿司職人のバイトをしていた。日常生活の様子はわからないが、猫好き。
レビュー
9月15日 20:00~22:00「しゃべっちゃいなよ」
三遊亭ぐんま(さんゆうてい ぐんま)-シロの恩返し~PART23~
立川吉笑(たてかわ きっしょう)-乙の中の甲
台所おさん(だいどころ おさん)-猫丸
立川談吉(たてかわ だんきち)-竹とんぼ
春風亭百栄(しゅんぷうてい ももえ)-天使と悪魔
プロデューサー:林家彦いち(はやしや ひこいち)
彦いち師匠とタツオさんによる前説トーク。配信対応の立ち位置のせいか、彦いち師匠のネタおろしがない安心感からなのか、ちょっとした漫才に。唐突に、出演者を車に例え出す彦いち師匠。「ぐんまさんは86(スポーツカー)みたいな感じ」「昭和の匂いがする」。車例えに客席は微妙な感じでも、負けずに突っ走ります。吉笑さんは「プリウス」。ハイブリッドで燃費がいい。おさん師匠は「自転車」。おのれ自身を燃料にする。百栄師匠は「猫バス」。変態だから…。たとえが車からズレていきながらも楽しいトークで、10月のしゃべっちゃいなよがスタートです。
三遊亭ぐんま-シロの恩返し~PART23~
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三遊亭ぐんまさん
小学生の頃からカワイイものが大好きで、クマのぬいぐるみを常時携帯したり、キョビという名の老犬を飼っていたりしたというマクラから、シロという名の犬が活躍する話へ。
まずくて誰も食べないたこ焼きを売り続けるおじいさんのもとに、昔飼っていた拾い犬で、すでに死んでいるはずのシロが現れる。シロは花咲かじいさんの愛犬・シロ(ここ掘れでおなじみ)から数えて23代目にあたる犬だった。
おばあさんが亡くなって、自暴自棄になっていたおじいさんを励ますシロ。お隣の横田のおばあちゃんとの間を取り持つなどして、人間らしさを取り戻していくおじいさん。ある日、シロが台所で「ここ掘れワンワン」と吠えている。床を開けてみると中から出てきたものは……。というお話です。
欠点だらけのキャラクター、意外なフレーズを使った引っかかり、「嘔吐」を手ぬぐいで表現するところなど、白鳥師匠を研究して自分のものにしているようなテクニックがあります。物語にも変化があって、単純に終わらせない。まさに86のようにサーキットを走り抜けていく落語でした。
立川吉笑-乙の中の甲
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立川吉笑さん
今回の「乙の中の甲」は、リアルな世界にいる人が、自分の頭の中の階層で暮らす住人に話を聞きにいくという話。幼なじみの熊から「貸した金返せ」と言われた八だが、「“俺の中”のお前(熊)はそんなこと言わない」と返す。「返せ」「返さない」の押し問答が続く中、「俺が“俺の中”の熊に聞いてくる」といって潜っていく八。現実と頭の中の2つの階層を行き来しながら最後は「大岡様に訴える」と訴訟問題にまで発展しかけるが……。というお話です。
リアルとイメージのギャップ。リアル世界で温和な人が、ブログで辛辣なことを書いていたりするとイメージが崩れることがあります。芸能人が尖った発言をすると、ファンだったのにがっかりする人もいます。目の前の人と自分の中にある人のイメージが違うということは日常的にあるのですが、イメージの違いをリアルな世界と頭の中の世界の2つの層を行ったり来たりするアクロバティックな落語を吉笑さんは軽々とやってのけます。頭の中の人は中立的な仲裁人ではなく、一方的な弁護人なのに、次第に影響力を持ってくる。異なる層の中の人同士の会話が成立してくるところが面白いです。
世界観が複雑なので、ネタおろしですべてを把握するのは難しく、後半に出てきた猫が八を神社のお社に案内する話とか、階層が多層化していくところとか、もう1、2回聞けばもっと新しい発見があると思うので、再演に出会えることを期待しています。
台所おさん-猫丸
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台所おさん師匠
男は、喜多見駅前でいちゃつく男女にイライラしながらも、明日のサトウさんと初デートに心が弾んでいた。しかし、男が選んだ喫茶店デートでは、サトウさんが嫌がる無神経なことばかりを言い続け、初対面なのにプロポーズまでする始末。怒って1000円札をテーブルに叩き付けて帰るサトウさんを見送りながらも「450円儲かった」とほくそ笑む。男が喜多見駅に戻ってくると雪が降ってくる。そこに半年前からエサをやるといって騙し続けてきたノラ猫がやってきて……。というお話です。
とにかく冴えない男の言動がすべてクソ過ぎて愉快です。初デートでは「自分の全部を受け入れて欲しい」というエゴ丸出し。誰にでも似たような側面があるだけに、決して嫌いになれません。サゲで主人公は退場してしまい、猫視点に突然切り替わる。極めて落語らしい展開でした。
立川談吉-竹とんぼ
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立川談吉さん
とある住宅街のフリーマーケットで、キャベツ、LED電球、亀の子たわしを買わされたおじいさん。河川敷を歩きながら子供の頃、竹とんぼを回すのが上手かったケンちゃんという幼なじみを思い出す。すると川の下流に青い光を放って横たわっているベガサスを発見。体が弱っているペガサスは、強い青い光を浴びることができれば再び天を翔ることができるという。キャベツとLED電球を持ち、竹とんぼの覚えがあるおじいさんは一計を案じるが……。というお話です。
すべては「ペガサスの救出劇」に集約されていて、映画史に残る「ET」も真っ青です。助け方は斬新で、おじいさんがやさしい人なのか、自分の欲望を満たしたい人なのかわからないほどのくだらなさ。談吉さんが口演後にTwitterに投稿したイラストはイメージを補助するのに役立ちますが、人によっていろいろな想像ができる世界観の広がる落語でした。
春風亭百栄-天使と悪魔
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春風亭百栄師匠
物語は、鈴本演芸場の抜擢二ツ目枠に出演した栄助さんが、古典落語をやるか新作落語をやるか、悩んでいるところに、古典の天使と新作の悪魔が現れ「無難に古典か」「新作でぶちかますか」で対立する話です。
新作が悪役になり、悪魔のキャラが立てば立つほど面白さが増していきます。二ツ目時代から頭ひとつ抜けていて、席亭に贔屓にされていた某師匠が出てきたり、席亭から若手の選抜落語会に呼ばれなったことに恨み節を吐いてみたりと、フィクションの体をとりながらも実名ががんがん登場。若手時代の自分の思いを混ぜているところにリアリティを感じます。俺を新作の世界に誘った「○○!」と叫ぶところは何度聞いても最高です。
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「しゃべっちゃいなよ」10/13 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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