渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2023年 12月8日(金)~12日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

12月10日(日)14:00~16:00 柳亭市童 橘家圓太郎 古今亭文菊 立川談笑

「渋谷らくご」談笑師匠、登場!! 再発見落語会

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

  先日、『令和版現代落語論〜私を落語に連れてって〜』を上梓された談笑師匠。落語の魅力を新しいお客さんに伝えるということにかけて、渋谷らくごの水崎案内人的存在でもあります。はじめて落語を聞く人はもちろん、聞き慣れた人も、談笑師匠の高座でいままで気がつかなかった落語の新しい魅力に出会い直すことができそうです。
市童さん、圓太郎師匠、文菊師匠とこちらも古典落語の魅力を再発見し続ける名手が揃いました。

▽柳亭市童 りゅうてい いちどう 落語協会
18歳で入門、芸歴13年目、2015年5月二つ目昇進。インスタグラムにラーメンの写真を積極的にアップする。Youtubeでは、犬が喋っているように聞こえる動画を見てしまう。北海道にいくとセイコーマートで買い物がしたくなる。ラーメンを食べるとしっかり体重が増える。

▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう 落語協会
19歳で入門、芸歴42年目、1997年3月真打昇進。怒りん坊なキャラクターで、オヤジの小言マシーンぶりは渋谷らくごでも爆笑を生んでいる。シンガーソングライターのKANさんと小学校が同じで、KANさんのピアノで歌を歌っていた。

▽古今亭文菊 ここんてい ぶんぎく 落語協会
23歳で入門、芸歴22年目、2012年9月真打昇進。私服がおしゃれで、楽屋に入るとまず手を洗う。前座さんからスタッフにまで頭を下げて挨拶をする。まつげが長い。最近ダイエットに挑戦中。大学では漕艇部に所属、熱中していた。細身のジーンズを履く。

▽立川談笑 たてかわ だんしょう 落語立川流
27歳で立川談志に入門、2005年に真打昇進、今年芸歴40年を迎えた。押しも押されもせぬ大真打。『令和版現代落語論』は発売後すぐに2刷決定、落語はじめての方にもピッタリの「待ってました」の内容。毎月、当日券で入れる一門会も開催し、常に間口の広さを意識している。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@sowaka2020 (ともちん。シンガポール育ち、帰国子女。映画、海外ドラマ、落語、読書が大好き!映画などの感想レビューもツイートしてます)

柳亭市童-金明竹
橘家圓太郎-火焔太鼓
古今亭文菊-夢の酒
立川談笑-片棒・改

12月なのに気温が18℃も!こんなに暖かいなんて、渋谷の街に飾られたクリスマスツリーも妙に見えてきてしまいます。地球温暖化で昨今の気候はめちゃくちゃ。。
でも、落語の中には季節があります!彩り豊かな秋のお噺、寒そうな冬のお噺、年の瀬やお正月にちなんだお噺も。そんな風情を感じると暖かい気持ちになりますね。

柳亭市童さん「金明竹」

ラーメン大好きな市童さん。インスタをチェックすると、美味しそうな写真がいっぱい!特に札幌の味噌ラーメンは美味しそうです。噺家さんに旅はつきもの、ちょっと羨ましいぞ。。
今日のお噺は、長ーい関西弁のセリフが印象的な「金明竹」。テレビもネットも無い時代に、慣れない方言を聞き分けるのは大変だったのでしょう。優しげなおかみさんの困惑や、小僧さんの素朴なおとぼけは、童顔の市童さんが演じると面白可愛くて最高です。
が、今回は特に、難しい伝言を何度も繰り返すうち、だんだんキレ気味になってくる上方からの使者の熱量に注目!よく噛まずにこんなに激しく言えるものだと感心してしまいます。ラッパーでもある市童さんにピッタリな演目でした!

橘家圓太郎師匠「火焔太鼓」

リニューアルされた渋谷駅を見ようと、いつものメトロではなくJRで来たら迷ってしまったという圓太郎師匠。トラブルは嫌いなのに、、とのこと。
というわけで、今日はトラブル(揉め事)から始まるお噺「火焔太鼓」。冒頭からの激しい夫婦喧嘩が印象的です。古い太鼓をお殿様に売ろうとする古物屋さん。取引失敗した時の、おかみさんの不吉な妄想が炸裂して怖い!怯える小心者の主人とのギャップに笑ってしまいます。憎々しげなおかみさんも、最後は可愛らしくなってハッピーエンドです。打たれ強い性格は貴重で、忍耐強ければやがて良いことが起こる、というメッセージでしょうか。
今回は、とにかく圓太郎師匠の表情、声の抑揚、息遣い、全てが可笑しくて可笑しくて、もうここで文章では言い尽くせません。もう、生で観るしかありませんね。

古今亭文菊師匠「夢の酒」

圓太郎師匠に、「おまえは本当に気持ち悪いねえ〜」と“褒められた”という文菊師匠。以前プレビューでも「80歳の名人が生き血を吸って若返った感じ」と表現された通り、老成した魔物感があります。
今週は圓太郎師匠と一緒に末廣亭にご出演という文菊師匠。寄席に流れる穏やかな時間が好きで、リラックスして居眠りしているお客さんもオッケーだそう。
というわけで、今日は「夢」のお噺。中性的で怪しい魅力にあふれた師匠にピッタリのファンタジー。
夢の中に出てくる美しいご新造、夢の女性に嫉妬するおかみさん。文菊師匠が演じると柔らかいオーラが漂い、良い香りもしてきそうです。会場で観ていると、妖艶な雰囲気がより感じられてクラクラしますよ。師匠の女性の演技が大好きです!

立川談笑師匠「片棒・改」

大好きな吉笑さん&笑ニさんの師匠である談笑師匠。
先月は、そのまた師匠である談志師匠の十三回忌だった、とか。談志師匠との思い出は、「とにかくケチだった」とのこと。昔ながらの方は、物を粗末にするのがお嫌いだったようですね。
さて、ケチ繋がり?で今日のお噺は「片棒」、のディテールに創作要素を盛り込んだ、その名も「片棒・改」。
ストーリーはお馴染み、一代で財を成したケチ兵衛さんが後継者を決めるため、三人の息子に自身が亡くなった時のお葬式の方法を聞くというもの。
でも、息子達が提案するお葬いがとんでもない!お通夜では、弔問客に大麻グミやお酒を振る舞い、行き場を失ったジャニーズJR や宝塚歌劇団メンバーにお酌をさせる。ゾンビやミッキーマウスも出てきて、途中から何の話だったっけ?と目を白黒。
そして、腹違いの三男は何とユダヤ系(母親はイスラエル出身)で、ケチのDNAを一番引き継ぐ男。まず、ケチ兵衛さんには賠償金がたっぷりとれるお金になる死に方をしてもらい(交差点で救急車にひかれる、オスプレーが落ちてくるなど)、遺体はイマドキのSDGs、もったいからリサイクルで臓器売買に!
これはもう配信できません。。
改めて「生の高座は素晴らしい」と感じました。心から。。