渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2016年 8月12日(金)~16日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

8月14日(日)17:00~19:00 入船亭小辰、春風亭昇々、古今亭志ん八、古今亭菊之丞

「渋谷らくご」菊之丞シリーズ!

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

3ヶ月に一度のペースで渋谷らくごに出演してくださっている菊之丞師匠。
40代にして落語界を代表する存在のひとりです。
そんな菊之丞師匠に挑む、三人の二つ目。小辰さん、昇々さん、志ん八さん。将来の楽しみなこの三人が、どう爪あとを残して盛り上げてくれるのか。見どころたっぷりです。


▽入船亭小辰 いりふねてい こたつ
24歳で入門、現在入門9年目、2012年11月二つ目昇進。趣味、歩く事。
前座時代は冷蔵庫のない部屋に暮らしていた。春風亭正太郎さんとの会「春に船」が人気。

▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。
Youtubeでアバンギャルド昇々として動画を配信中。映画『FAKE』の佐村河内守のモノマネができる稀有な芸人。残念イケメン。

▽古今亭志ん八 ここんてい しんぱち
28歳で入門、芸歴14年目、2006年11月二つ目昇進。趣味は、漫画をかくこと。落語会のパンフレットには可愛いイラストが入ることがある。ウェブサイトに4コマ連載中。魚が大好き。

▽古今亭菊之丞 ここんてい きくのじょう
18歳で入門、芸歴26年目、2003年9月真打ち昇進。この夏公開の映画、ディズニー・ピクサーの「ファインディング・ドリー」の吹き替えで、声優デビュー。NHKでも初心者向けの落語入門番組に出演した。

レビュー

文:えり Twitter:@eritasu 29歳 女性 事務職 趣味:フラメンコを踊ること

8月14日(日)17時~19時「渋谷らくご」
入船亭 小辰(いりふねてい こたつ)  「青菜」
春風亭 昇々(しゅんぷうてい しょうしょう) 「千両みかん」
古今亭 志ん八(ここんてい しんぱち)  「厩火事」
古今亭 菊之丞(ここんてい きくのじょう) 「もう半分」

【暑い日の醍醐味】

  • 入船亭小辰さん

    入船亭小辰さん

おなじみ「入船亭~こ・た・つ♪」の合言葉。
客席から「こ・た・つ♪ こ・た・つ♪」と以前よりもたくさんの声が聞こえてきて、「今日のお客さんは優秀ですね」と嬉しそうなご様子。
小辰さんの喋り方はさっぱりした調子で聴いていて心地良い、そんなイメージがあります。その要素の一つに発音が関係してるんじゃないかと思うのです。
今回で言うと「菜のおひたし」が「菜のおしたし」に、「ヒ→シ」に聴こえるという江戸っ子の喋り方。 全体的にサ・シ・ス・セ・ソが強めの発音のせいか、途中の江戸っ子言葉もナチュラルに聴こえます。
まくらの後ほんの少しの間をおいて  「植木屋さん、ご精が出ますなァ」
グ~~~っときました。完璧な一言。汗だくでフラメンコの練習をした後、冷たいお水が喉を通っていく瞬間の気持ちよさに似ています。植木屋さんのむちゃくちゃなお願いに対して不満そうにしつつも「そういう飲み方なんだな今日は!」と付き合ってくれる優しい熊さんにうっとり。
落語好きの中でも「青菜」フェチの方って一定数いるような気がするんですが、とてもよくわかります。
暑い日の午後、鯉の洗いを食べながら柳蔭を飲んでみたいですよねえ。

【The・昇々ショー】

  • 春風亭昇々さん

    春風亭昇々さん

まくらの応援団風「つる」。最初っからアクセル全開トップスピードで飛ばしてます。
昇々さんの落語の登場人物はきちんと別々のキャラクターでありながらも、全員「ヤバい昇々さん」に見えます。
寝込んでいる理由を聞かれた若旦那が「笑うからやーだっ 笑うもーん」とピョ~ピョ~と高音の小さな裏声で答える様子。
通常は「笑いどころ」じゃないような部分でも声と仕草にいちいち笑ってしまいます。
駄々っ子小学生みたいな昇々さん特有のキャラクター、妙にリアルな瞬間があったりして最高です。
みかんを剥くシーン、ものすごいクライマックス感。急に喋らなくなりジェスチャーのみで展開していきます。
感動のシーンをスローモーションで見ているような感覚です。音声のみでは絶対に伝わらないおもしろさ。
新作派の印象が強い方ですが、古典も違和感なく昇々さんです。もはや「昇々さん」という一つのジャンルかなと思います。

【極上のゆるさ】

  • 古今亭志ん八さん

    古今亭志ん八さん

志ん八さんはのらりくらりとつかみどころがなく、一定のテンポでにこにこと喋ってくれる印象。
感情の起伏が激しくない感じ、とても安心感があります。
埼玉ローカルのお散歩したりスイーツ食べたりするテレビ番組、適度にゆるくてゴロゴロしながら見るのに最適です。
シブラクに来場者へチラシと一緒に配布される「どがちゃが」には、今月から志ん八さんの四コママンガが連載開始!
先日はコミケに初参加されて、志ら乃師匠のブースでたぬき浴衣でご自身の本を手売りされてました。
おもしろそうなことはどんどんやってみるという感じがかっこいい。
「厩火事」は夫婦ののろけみたいな要素がありますが、志ん八さんが演じると可愛らしいご夫婦に。
亭主が声を荒げて怒る場面では柔和な印象とのギャップに驚きつつも、軽快なステップを踏みながら袖に帰っていく志ん八さんを見て、やっぱりほっこりするのでした。

【声に引っ張られ仄暗い世界へ】

  • 古今亭菊之丞師匠

    古今亭菊之丞師匠

とにかくインパクトが凄いです。歌舞伎役者さんのような空気を纏っている方。
時代劇の主役、花形役者という雰囲気の低ーーく渋みのあるかっこいいお声!
居酒屋の店主がそんなに二枚目ボイスなの!?って驚いてしまうほど。
ところで夏物のスケスケのシースルーお着物、いいですよね。懐の手ぬぐいも見えてしまうセクシーさ。
涼しげな感じが怪談に合う気がしてとても好きです。
半分ずつお酒を注文するおじいさんが冒頭とても良い人そうに見えて、その後の展開を想像して早くも心が痛い。
恨みをたっぷりもったおじいさんのビジュアルは、ジョジョ4部の吉良吉影の父を思い浮かべます。
じと~っとした仄暗く完璧に作り上げられた世界観。
「もう半分」ってこんなに怖い噺だったっけ??とビビりながらもスーッと涼しくなる良い体験でした。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」8/14 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ