渋谷らくごプレビュー&レビュー
2017年 5月12日(金)~16日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
飛ぶ鳥を落す勢いの、浪曲 玉川太福さん with 玉川みね子師匠。浪曲の可能性と楽しさをだれにでもわかる形で示してくれます。いまや人気者となった太福さんが今月も渋谷らくごに出てくれるよ!
そして渋谷らくごから火をつけたい扇里師匠。これからの落語界は若手真打に注目です。なかでもこの師匠の落語は、語り部から話を聞くような体験になるかも。
ということで じっくり聴いて、心がホッコリ。じっくりホッコリの会です。
▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門、2012年日本浪曲協会理事に就任。
「わかりやすい浪曲」を目指して日々奮闘中。大学までラグビーを続けていた熱血漢。2015年「渋谷らくご創作らくご大賞」を受賞。先日TBSラジオ大人気番組「安住紳一郎の日曜天国」にゲスト出演を果たし、天気予報を唸るという芸を披露。ツイッターでも話題になった。最近では尾崎世界観氏とも仕事をした模様。
▽入船亭扇里 いりふねてい せんり
19歳で入門、芸歴21年目、2010年真打ち昇進。
趣味は競馬と野球観戦。絵本作家。熱狂的な横浜DeNAベイスターズファン。「扇里師匠が球場に行くと、ベイスターズが勝てない」というのは本当か検証中。渋谷らくごのポッドキャストから「扇里ファン」が急増中。2015年8月に渋谷らくごに初登場してから2017年3月までの全高座がつまった「渋谷らくご扇里USB」を会場限定で発売中。見た目はちゃんとしているが、趣味や発言などからそのクズっぷりがにじみ出ていて味わい深い。
レビュー
「ふたりらくご」
玉川太福(たまがわ だいふく)/玉川みね子(たまがわ みねこ)-銭湯激戦区
入船亭扇里(いりふねてい せんり)-千早ふる
玉川太福/玉川みね子-銭湯激戦区
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玉川太福さん・玉川みね子師匠
浪曲をやる時に台にかける布、人によって様々な色や絵などが入っているアレは「テーブルかけ」が正式名称だとか。え、本当に……?冗談じゃなくて……?太福さんが真面目に言ってるのだから、それが本当の事なんだろうと思うけれども、他に何かカッコイイ名前がありそうなのに、とどうにも腑に落ちない心持ち。それはともかくも、説明を終えた太福さんは軽やかにごあいさつ代わりの浪曲天気予報を披露。先日ラジオで好評だったそうで、その内容はというと天気予報を浪曲でやる、それだけ。けれども”それだけ”がどうしてこんなに面白いのかしら。「東京28.4度、今年一番の暑さ」とか「夕方には雲が多くなり~」とか言ってるだけなのに。太福さんの節(ふし)と啖呵(たんか)が、面白くしてしまう。不思議で楽しい。
ここ最近、浪曲は日常を面白く描くのが得意な芸能ではないかしらという想いが、太福さんの浪曲に触れるたびに私の中では強くなっています。もちろんご本人の技術や魅力があってこその話ですが。だって「銭湯激戦区」は、ザックリ言ったら太福さんオススメの荒川区銭湯情報ですよ!(笑)。すみません、ザックリ言い過ぎました。けれど、そのオススメ情報と共に、太福さんの人や周囲を見る時の眼差しや、その繊細な気づきがさりげなく織り込まれているところがやっぱり魅力的で楽しい。細やかなものを面白い!に変えて伝えてくれる。だからこちらも素直に笑っちゃう。
以前太福さんがお住まいだった場所は徒歩10分圏内に10軒もの銭湯がひしめく激戦区。激戦区らしくレンタルタオルは通常50円がタダ!?素敵!中でもオススメの銭湯は次の3つ。
・「野崎浴場」とにかく熱い
・「帝国湯」番台あり、ぬるい
・「藤の湯」電気風呂あり
再びザックリと太福さんオススメポイントを書いてみたけれど、この内容でなんで面白くなってしまうのか。太福さんがお湯の熱さとどう向き合ったのか(笑)、どんな景色を見たのか、その時何を気にしていたのか、それらが浪曲でどんどん伝わってくる、むしろ節と啖呵で強く送り込まれてくる(笑)。太福さんの力強い声と表情によって、何でもないことさえも凄いことのように感じてしまう可笑しさ。そして節の終わりに起こる拍手の、あの会場全体の一体感。
個人的には「ヘアーサロン リッチ」の床屋のマスターのくだりが好き。身の危険を感じるほどの電気風呂、みんな壁から20cmは離れているのに、壁にぴったり張り付いているマスター。お二人のやりとりが楽しく、また強力な電気風呂で10個のイボが無くなったっていうのがものすごく気になります。お肌にいいってことは女性の味方か、電気風呂。飛ばされるってどういうこと?と恐れを感じながらも、お肌の為に銭湯の電気風呂に行くしかないかしら。なんだかんだ言いながら、見事に太福さんの銭湯ノススメにのせられている私です(笑)。
入船亭扇里-千早ふる
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入船亭扇里師匠
演芸が大好きで、シブラクではゆっくり聴けるから楽しいとおっしゃる扇里師匠。太福さんの浪曲を聴きながら、あんな声が出たらいいな、と思ったそう。実は扇里師匠のお師匠である扇橋師匠は、落語をやる前は浪曲をやりたかったんだとか。もし扇橋師匠が浪曲師になっていたら、大好きな師匠にくっついて扇里師匠も浪曲師になっていたかも……?その時には太福さんに対抗してきっと玉川小籠包(ショウロンポウ)になっていた、と言いながらヒドイ声で一節うなる扇里師匠。わざとなのか、とぼけているのか。扇里師匠が落語家で良かったと心から思う瞬間でした(笑)。
今回の噺「千早ふる」は、知ったかぶりのご隠居のところに、金さんが百人一首・在原業平の歌「千早ふる神代も聞かず~」の意味を聞きに来るお話。私も何度か聴いていて、その中には苦し紛れに行き当たりばったりで話を作るご隠居とか、多分何にも考えないで説明を聞きに来た金さんがいたり。今回初めて聴く扇里師匠の「千早ふる」。扇里師匠の描く金さんは、勢い余計なことを言ったりはするものの、なかなかしっかりもので家ではいいお父さんをしてそうです。その分、対するご隠居のごまかし方も、金さんとの駆け引きが垣間見えて楽しい。ごまかしているようで、けれど物語が始まってしまうと、ご隠居があんまりにも当たり前のように語るから、いつの間にか騙されている(笑)。扇里師匠の丁寧な語り口は、金さんの言う「別の話だと思った」という言葉をすんなり納得させる力がある。毎回毎回実感するけれど、扇里師匠は物語を聴かせる。淡々と穏やかに話すからこそ、その世界にすんなり入ってしまっていて気づいた時にはゆったり楽しんでいる。
なのにその合間のアクセントというか、ご隠居がうなる浪花節のひどいことと言ったら(笑)。だみ声というかなんというか、表現しにくいのですが……。金さんの「ひどい声だね」に強く同意!思わず、落語「寝床」に出てくる旦那の下手な義太夫はこういう声だったのかしらと思ったり。いい声はもちろん素敵だけれど、ひどい声をあえて再現するところが面白いなぁ。
扇里師匠にこそっとお願いです。ぜひ今度はいい声バージョンで一節やってくださいませ。違うストーリーが生まれるんじゃないかと密かに楽しみにしております。って図々しい。でもそんな期待をしてしまうのも、ひどい声がとても面白かったからこそですよ(笑)。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」5/12 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ