渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 5月12日(金)~16日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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5月13日(土)17:00~19:00 立川こしら 雷門小助六 三遊亭彩大 林家彦いち

「渋谷らくご」 四匹のおっさん

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プレビュー

 来たぜ、「四匹のおっさん」。
 落語ブームだ、二つ目ブームだ言われてますけど、そんなの関係ナッシングな若手真打は宝の山。そんな若手真打のなかでも他にない個性を磨き続ける、こしら師匠、小助六師匠、彩大師匠。
 トリを取るのは新作落語の旗手、林家彦いち師匠! まだまだ落語界はこんな才能があふれている。まだまだ進化をやめない四匹のかわいいオッサンたちの、着実な一歩を見届ける夕べ。愛らしい会になることまちがいなし!

▽立川こしら たてかわ こしら
21歳で入門、芸歴20年目、2012年12月真打昇進。今年は日本のみならず世界中で落語会を開いている。ドニー・ブリスベン・メルボルンで公演を行う「立川こしら豪州ツアー2017」から、ヒューストンで独演会を開催。アメリカでは車を乗り回しポケモンGOをやっている様子がツイッターで確認される。メルカリに落語会を出品して契約違反で削除された経験がある。

▽雷門小助六 かみなりもん こすけろく
17歳で入門、芸歴18年目、2013年5月真打ち昇進。じんわりと良さが波及していく芸と戦慄を覚える芸の両面を持つ。楽屋入りは必ずズーツ。後輩の悩みをしっかりと聴く様子がシブラクの楽屋でも見受けられる。小助六師匠に甘えている若手の方々多数。ご自宅では猫を4匹飼っていて、小助六師匠に甘えている。だれか小助六師匠を甘えさせてあげて☆

▽三遊亭彩大 さんゆうてい さいだい
1971年8月7日、埼玉県出身。2001年入門、2015年真打ち昇進。
「創作落語っていうのは、自作PCみたいなものです。パソコンなんて買ってくればいいのに、わざわざ作る」という発言をして、彦いち師匠に衝撃を与えた。あたらしく落語をつくりつづけている。「いまだに男子校をこじらせ、引きずっている」とおっしゃっている。ツイッターをはじめたりやめたり、つぶやきを消しちゃったり。が、新しくブログを開設してスケジュールが確認できるようになった。

▽林家彦いち はやしや ひこいち
1969年7月3日、鹿児島県日置郡出身、1989年12月入門、2002年3月真打昇進。
創作らくごの鬼。キャンプや登山を趣味とするアウトドア派な一面を持つ。学生時代は、空手に打ち込む武闘派。こぶしが大きい。「散歩の達人」でも紹介されている。集中する朝は、土鍋でご飯を炊く。創作から生まれた絵本「ながしまのまんげつ」(絵 加藤休ミ 小学館)が発売中!  シブラクで「鬼軍曹」と呼び続けたら、世間で鬼軍曹と思われるようになってしまったが、優しい。

レビュー

文:えり Twitter:@eritasu30歳 女性 事務職 趣味:フラメンコを踊ること

5月13日(土)17時~19時「渋谷らくご」
立川 こしら(たてかわ こしら)「青菜」
雷門 小助六(かみなりもん こすけろく)「猫退治」
三遊亭 彩大(さんゆうてい さいだい)「グラディエーター」
林家 彦いち(はやしや ひこいち)「青畳の女」


座布団は敵!

  • 立川こしら師匠

    立川こしら師匠

弟子のかしめさんがよく「師匠はすごくかっこいいので…」と話していますが、本当にその通りだと思います。“かっこつける”という行為は「かっこつけててダサい」となりがちですが、こしら師匠は「かっこつけててちょうかっこいい」のです。ご本人はトークで怪しいビジネスとゲームの話をしがちですが、本当にかっこいいエピソードは自らは話しません。なのでかしめさんの話すまくらや、噂で流れてくるだけ。それがまたかっこいいのです。
「青菜」は夏の噺ですが、季節を先取りして誰よりも早くやるという試み。
植木やさんにお酒の説明をするとき「大阪の友人にもろうた柳陰」となぜかそのセリフだけ関西弁になるところが個人的にツボです。落語の物語のパターンとして、習って真似をしようとするがうまくいかないというのは「つる」「牛ほめ」など多く、通常、1回目はお手本なので真面目に。真似をする2回目で失敗するので、その差が楽しいと感じます。こしら師匠の場合は1回目のお手本のとき既にいろんな要素やギャグを入れて、2回目でそれがさらに伏線になって回収されていくというパワフル二重構造。最初から最後まで笑いっぱなし。そして歌が良い声!(青菜で歌!)おもしろかっこいい!


  • 雷門小助六師匠

    雷門小助六師匠

猫が大好きで4匹飼っているという小助六師匠。「寄席では3匹飼っていると話します」と仰るので、さすが粋な師匠!きっと縁起をかついで数字の四を使わないんだなぁと思っていたら「4匹買ってると言うと引かれるので」とのこと。3匹も4匹もそんなに変わらないんじゃないかしらと思います。猫があまりにも好きすぎて「気持ち悪いですか」とさらりと微笑みながら猫エピソードを披露。
噺ももちろん猫の噺です。寝込んでいるお嬢さんに悩みの原因を聞きに行く薮井竹庵というお医者さん。面と向かってヤブ医者呼ばわりされても「私、医者で呼ばれたわけじゃないんですよ、一つ安心していただいて」と妙に冷静に認めています。なんて器の大きい人!さっきのまくらの微笑む小助六師匠を思い出します。「猫退治」は初めて聴きましたが、ゾワッとしたりにゃーにゃーしたり忙しく楽しい。今回出演された真打4人の中で唯一の古典落語感。とても安らぎました。


  • 三遊亭彩大師匠

    三遊亭彩大師匠

彩大師匠すごく派手な新作で大暴れしてくださいました。好みのタイプは○○防衛大臣、隙がある人、ブラひもが見えてるような人が好きなど最初からかなり飛ばしてます。前座は人間として扱われない奴隷のようなものだという考えから「ローマの見世物で、奴隷(剣闘士)同士を戦わせる」というグラディエーター、これを前座たちがやらされることになり…という仮想の物語へ。恨みのこもったような大熱演。これがとにかく爆笑につぐ爆笑。噺の途中、ごく自然に渋谷らくごの客席とグラディエーターの観客がリンクし、アンケートをとって噺の流れが決まるという参加型に。ものすごい臨場感。後方の高い位置に座るタツオ皇帝の意見を聞こうとするけどやっぱり聞かないというハラハラ感。グラディエーターは負ける=死なので、よく考えると残酷で不謹慎なんですが、彩大師匠がうまくパロディーとして物語の世界に誘導してくれるので安心して笑えます。前座時代のつらい思い出も報われたのではないでしょうか。大人のための落語です。


  • 林家彦いち師匠

    林家彦いち師匠

彩大師匠の勢いに煽られて、戦う気満々で登場の彦いち師匠。この流れは疲れるほど笑うパターンだという予感がビンビンします。
まくらは、ある師匠と楽屋で戦った話や、“内家拳法”を体験しに行ったときの信じられないような爆笑エピソード。外国人と格闘技の組み合わせは以前聴いた「ムアンチャイ」を思い出します。今回はものすごく強そうな女性柔道選手の噺。髪にリボンを結ぶ仕草も彦いち師匠がやると強烈です。非力な女性の方が意中の男性に好かれると思い込み、試合に身が入らなくなってしまう主人公。私も強そうな見た目なのでとても共感できます。噺が盛り上がるに連れて、座布団をつかんで相手に見立てる熱い展開に。あれ、この光景さっきも見た!本日二度目のvs座布団。落語家さんの道具は扇子と手拭いだけでなく、座布団もあるんだなと妙に納得します。最後は主人公の名前通りの大技がキマって拍手喝采。心が弾んで良い汗かいたような、さっぱりと気持ち良い回でした。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」5/13 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ