渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 9月8日(金)~12日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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9月9日(土)17:00~19:00 立川笑二 玉川太福* 立川左談次 立川龍志

「渋谷らくご」立川左談次五十周年② ~同志の会~

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プレビュー

 立川左談次落語家生活五十周年特別記念興行、二日目。左談次師匠から遅れること3年、71年に入門した、談志一門のなかでも真面目で、稽古の鬼と言われる龍志師匠が出演です。
 一門の弟弟子から見た左談次師匠はどういう人物であるのか。落語協会脱退後も、談志師匠についていき、戻ったり移籍したりもせず、それでいて落語を大事にしてきた龍志師匠。同志のひとりと言ってもいいでしょう。
 最初に談笑一門の勇者、笑二さん。そしていまや八面六臂の活躍の太福さんが盛りたててくれるでしょう。

▽立川笑二 たてかわ しょうじ
20歳で入門、芸歴7年目、2014年6月に二つ目昇進。沖縄出身の落語家。公園でお稽古をしているとのことで、「落語家さん?」と聴かれると「○○大学の落研です」と答えるらしい。先日、自宅のドアノブがとれた。先日、知らない人にご自宅のドアをノックされるという珍事にあう。

▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門、2012年日本浪曲協会理事に就任。「わかりやすい浪曲」を目指して日々奮闘中。大学までラグビーを続けていた熱血漢。2015年「渋谷らくご創作らくご大賞」を受賞。毎晩娘さんを寝かせてから、夜中作業を始める。たまに娘さんと一緒に朝まで寝てしまう。娘さんは、ビラの挟み込みの作業に大興奮されるらしい。

▽立川左談次 たてかわ さだんじ
17 歳で入門、芸歴50年目、1982年12月真打ち昇進。読書好き。
談志師匠とおなじ病気にかかり、病院に出たり入ったり。その様子がツイッターにアップされており、痛々しいというよりは、ほほえましい。今月の渋谷らくごは左談次祭り。公演期間中毎日左談次師匠が登場します。会場では、左談次師匠のグッズが発売中。

▽立川龍志 たてかわ りゅうし
23歳で入門、芸歴47年目、1987年真打ち昇進。左談次師匠の弟弟子で、左談次師匠と同じ時期に修行をしている。左談次師匠とベトナムに行かれたときの写真がロビーにて掲載中。稽古の鬼、ひとつひとつの噺をとても大事にされている。

レビュー

文:えり Twitter:@eritasu30歳 女性 進路に悩む事務職

9月9日(土)17時~19時「渋谷らくご」
立川 笑二 (たてかわ しょうじ)「黄金餅」
玉川 太福(たまがわ だいふく)・曲師 玉川 みね子(たまがわみねこ)「寛永三馬術 梅花の誉れ」
立川 左談次(たてかわ さだんじ)「浮世床」
立川 龍志(たてかわ りゅうし)「寝床」

「立・玉・立・立」

開始前、音に関する諸注意のアナウンス。他の会場よりも厳しめです。その理由の一つに、映画館の音響設備ということが考えられると思います。映画館の会場は上映時の大音量が外に漏れないように吸音材が敷き詰められていて、響きづらい構造になっています。響かないということは遠くの音が響いて届くという感覚が少なく、クリアな音が直接届くように感じ、臨場感があります。観客側が雑音に気を使い、不思議な緊張感が生まれ、集中して見るには適しているのでしょう。 ふと、初台のICCにある「大きな耳をもったキツネ」というサウンド・インスタレーションを思い出しました。
(整理券順に一人ずつ、真っ暗な無響室の真ん中に座り立体に蠢く音を聴くというもので、音に撫でられるような体験ができておもしろいのでぜひ行ってみてください )

立川笑二さん

  • 立川笑二さん

    立川笑二さん

今日は立川流の出演者が多いので立川流らしく、と「黄金餅」。ある病人が、貯め込んだお金を死んだあとも手放したくなくてお餅に小判を包んで飲み込んでしまう、という衝撃的な噺。終始ブラックジョークという感じで、映像化したらきっとグロテスクなホラー映画になりますし、人が死ぬ話なんてそうそう笑えるものではないです。でも、落語では不思議と笑えてしまいます。それは目の前の落語家さんが座布団の上で話しているという現実が、これはフィクションなんだと理解し安心できるからかもしれません。噺に入り込むこともできるし、引いて見ることもできる。自分の脳みそが勝手に距離を調整しているのでしょう。笑二さんの黄金餅は、明るさの裏にある暗さ、ドロドロした真っ黒いものを描きつつ、それを否定できない悔しさや空しさまですべてが共感できました。「良い暮らしがしたかったわけじゃない、まともな暮らしがしたかっただけ」というような台詞があり、少し笑っているような悲しそうな、それでいてとても悔しくてたまらないという声のトーンと表情に強く心を掴まれました。

玉川太福さん・玉川みね子師匠

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠

    玉川太福さん・玉川みね子師匠

太福さんの「50周年記念ということで、お祝いの一席を…」を聞いて、ああそうだったそういう趣旨だった。さっきの黄金餅はなんだったんだと思いついニンマリ。「寛永三馬術 梅花の誉れ」は寄席でよく聞く講談のイメージが強いのですが、浪曲では節が入り、笑いの部分も多めな感じがします。お祝い事にはぴったりの華やかさです。
特に太福さんが真剣に馬(喋ります)になる場面が素晴らしい。それに合わせてパララッパララッと馬の足音のようなみね子師匠のお三味線の音色も素敵です。表情豊かに思いきり唸る姿に聞いているこちらもなんだかスッキリ気持ちよくなります。本来梅の花を手折ってくるというのが目的のはずが、馬で頂上まで行く場面が最高の盛り上がりで、梅の花を手折る部分はほぼカットという感じも清々しいです。以前奈々福さんが「曲垣と度々平」をシブラクでかけていましたが、この曲垣平九郎という人は本当にかっこよくて、心底惚れました。続き物だと登場人物に対する思い入れも深まってさらに楽しめます。落語とはまた違った醍醐味だなぁと思います。

立川左談次師匠

  • 立川左談次師匠

    立川左談次師匠<

5日連続公演の2日目。左談次師匠は今日もご機嫌。高座の上で笑っているお姿を見るだけでもなんだか嬉しくわくわくします。髪を伸ばしていたときは美容院に行くこともあったそうで、床屋と違って仰向けにならなくちゃいけないから落ち着かない、と何気ないエピソードも楽しく、この時間がずっと続けばいいのになぁと思います。「知的好奇心は絶対に満足させない」とハッキリ断言されていてつい笑ってしまいましたが、落語には人情噺、怪談噺、滑稽噺も爆発的な笑いから緩ーい笑いまでいろんな要素のあるなかで、肩の力を抜いてうっかり笑うこの感覚が一番心地がいいと感じます。人柄だったり、たくさんの経験を積み重ねてきたことによる余裕から滲み出る優しさやおかしみもあるのでしょう。
「浮世床」は太閤記を読む人も芝居に声を掛ける人も、全員が愛すべき落語の住人たちで、すっかり安心しきって露天風呂に入ってるような感覚で気持ちよく聞いていました。

立川龍志師匠

  • 立川龍志師匠

    立川龍志師匠

龍志師匠を聞くのは初めてでした。先ほどの「浮世床」からの「寝床」でトコトコです。ロビーに飾ってあった旅行先でのお写真の、お二人の楽しそうな笑顔が思い浮かびます。理由があって義太夫の会に来られないと次々に言われた旦那の「あっそう・・・」というセリフ。すねた雰囲気のなんとかわいらしいこと。旦那がとても魅力的な人物に感じます。
「寝床」は旦那の義太夫の下手さの表現が難しそうだなといつも思うのですが、鶏のようなけたたましい叫び声をあげていて思わず大笑い。私は最近まで義太夫というものがなんとなくしかわからず、「寝床」で旦那が語るものという程度のイメージだったのですが、興味をもって生で見てみると実際はこういう声なのか、見台ってこういうものなのか、こんなによだれダラダラ垂れちゃうのかと感動し、今度は「寝床」の方で旦那が語りながら見台もって追いかけてくる場面がリアルに想像できておかしく感じます。深みにハマっています。

【この日のほかのお客様の感想】 「渋谷らくご」9/9 公演 感想まとめ 写真:渋谷らくごスタッフ