渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2017年 9月8日(金)~12日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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9月11日(月)20:00~22:00 柳家わさび 三遊亭遊雀 立川左談次 柳家小八

「渋谷らくご」立川左談次五十周年④ ~やなぎや?の会~

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プレビュー

 立川左談次落語家生活五十周年特別記念興行、4日目。「やなぎや」のグループ公演。
 進化の系統樹を見たときに、「え!? 鷹とフクロウって、鳥類のなかでもおなじ仲間なの?」と少しびっくりするようなグループがあります。落語界の系統樹で、その最たる種族が「柳家」というグループです。
 コマかいことは気にせずに、落語は「グループ」でなんとなく、それでいて個の力が大きい芸能であることを肌で感じていただければと思います。あれ、三遊亭の人が入ってるけど?と言う人は、人に聞かずに自分で調べてみましょう。
 左談次師匠の盟友、喜多八師匠のお弟子さんで、この春真打になった小八師匠がトリをとります。


▽柳家わさび やなぎや わさび
23歳で入門、芸歴14年目、2008年二つ目昇進。映画『落語物語』では主演をつとめる。NHKBSの「our SPORTS!」に出演中。NHKの「落語ディーパー」にレギュラー出演中。笑点の若手大喜利のメンバーに選ばれ、先日優勝した。前座時代は、師匠の家に住み込み修行をしていた。住み込みは、現在の落語界で珍しい。師匠から常に見張られているのではないかと疑心暗鬼になる。

▽三遊亭遊雀 さんゆうてい ゆうじゃく
23歳で入門、芸歴30年目、2001年9月真打ち昇進。とてつもない乗り物マニア。飛行機に関しては、「オールフライトニッポン」という本を出版している。バスに関しては、携帯灰皿に「バスで帰ろう」というスローガンを貼付けていた。些細な心配りがすさまじく、先月の渋谷らくごでは、落語中にも客席の空調まで心配りしてくださった。背が高い。

▽立川左談次 たてかわ さだんじ
17 歳で入門、芸歴50年目、1982年12月真打ち昇進。読書好き。
談志師匠とおなじ病気にかかり、病院に出たり入ったり。その様子がツイッターにアップされており、痛々しいというよりは、ほほえましい。今月の渋谷らくごは左談次祭り。公演期間中毎日左談次師匠が登場します。会場では、左談次師匠のグッズが発売中

▽柳家小八 やなぎや こはち
25歳で柳家喜多八師匠に入門、芸歴14年目、2017年3月真打ち昇進。入門した師匠の喜多八師匠と左談次師匠は一緒に修行した仲間で、渋谷らくごの楽屋で久々の再開、語り合っていた。そんな喜多八師匠の唯一の弟子。おかみさんは、9月11日の「ふたりらくご」にご出演の三遊亭粋歌さん。粋歌さんの尻に敷かれている。ラーメン二郎と一蘭が大好き。

レビュー

文:月夜乃うさぎTwitter:@tukiusagisann 趣味:茶道 猫のいるカフェ巡り



9月11日20時~22時    「渋谷らくご」

柳家わさび(やなぎや わさび)「ちりとてちん」
三遊亭遊雀(さんゆうてい ゆうじゃく)「四段目」
立川左談次(たてかわ さだんじ)「妾馬」
柳家小八(やなぎや こはち)「らくだ」


 9月11日、渋谷らくごは立川左談次師匠祭り4日目になります。スマホで連日左談次師匠と応援にかけつけていらっしゃった師匠方、ファンの皆さまの楽しそうなツイートを拝見しながら、この日から、ようやく左談次師匠祭りへ参加できました。
 今回のプレビューを読ませて頂いていたら、今回の20時回の皆さまは、「柳家のグループ」だとか。少し調べてみて、なるほどとうなりました。
一般の家庭でも苗字こそ違えど、誰と誰がいとこ同士で、誰が養子へ行った先の姓を継ぎ、誰が父上が亡くなり祖父へ引き取られたりなど、家庭の事情は様々です。そうやって方々へと広がって活躍されていた柳家一族の皆さまが、今回、同じ柳家の立川左談次師匠のお祭りで、かけつけられたようです。

やなぎや?の会

柳家わさびさん「ちりとてちん」

  • 柳家わさびさん

    柳家わさびさん

 TBS笑点やらくご会でわさびさんを拝見していると、痩せている、病弱キャラで大喜利や斬新なまくらを、次々と生み出し切り返しているのをお見かけします。病弱キャラで腰が低いのに、言葉のあやつり方は最強というかよわそうな外見とキレッキレの台詞ギャップが楽しい若手有望落語家さん、それがわさびさんです。  2011年には映画「落語物語」(林家しん平師匠・原作・監督)で内気な主人公小春を演じています。
わさびさんが、まだ学生時代で演芸のお客さまだったときに、(ひとつでもわたしを笑わせてごらん!)と思っていたという発言も、か細いひ弱そうなわさびさんがいうと、可笑しさがこみあげて会場は何度も爆笑で沸きました。何度も何度も笑いが起こり、だんだんわさびさんを見ると笑いだしそうになるところで、「ちりとてちん」がはじまりました。
この「ちりとてちん」では誉め上手な人と食通のふりをしてケチをつける人が、同じごちそうを目の前にだされた時の対応の違いが楽しいです。
 鯛のお刺身、鰻の蒲焼きを銘酒と共に美味しそうにいただく仕草にお腹がすく一席でした。

三遊亭遊雀師匠「四段目」

  • 三遊亭遊雀師匠

    三遊亭遊雀師匠

 遊雀師匠は、軽やかに高価な着物のことで冗談をおっしゃりながら、徐々に歌舞伎の噺へ。
どこかの落語会で、遊雀師匠がゲストにいらっしゃった時に、遊雀師匠が落語芸術協会へ移籍した頃は、移籍先の若手の皆さんが率先して遊雀師匠に稽古を付けて頂きに伺ったなどのエピソードを耳にした記憶があります。遊雀師匠は、よく顔づけされていらっしゃる人気師匠のイメージです。
「四段目」は忠臣蔵の噺の一部で、有名な切腹シーンです。他の落語や講談でも取りあげられている見せ場でもあり、私の好きな「淀五郎」も四段目の噺です。
芝居狂いの定吉は、仕事を抜け出して芝居を観に行っているけれど、帰りが遅くなり誘導尋問でバレてしまいます。遊雀師匠の定吉はとてもかわいいです。「嘘ですよー」「お腹すいたー」とジタバタしている所には愛嬌すら感じます。芝居口調と定吉の交互の振り分けが同一人物とは思えない。
定吉が「ちりとてちん食べたーい」と叫べば客席からどっ!と笑いが起きて、軽やかな笑いで始まり、大爆笑で終わる一席でした。

立川左談次師匠「妾馬」

  • 立川左談次師匠

    立川左談次師匠

 これだけ連日賑やかなお祭りになりながらも、まくらのはじめから「迷惑をかけているんじゃないか」と、何かとお気遣いを見せる左談次師匠です。今月の渋谷らくごは壁からスクリーンまで左談次師匠特集な訳でして、ご来場のお客様も左談次師匠のグッズや展示物を楽しまれていて、ほぼ、満員御礼。なりやまないかと思う程の拍手。
予告されていた「妾馬」は、身分制度のまくらと共にはじまりました。左談次師匠の八五郎はきっぷうの良いお兄さんで、大家さんや門番とのやりとり、田中三太夫とのやりとりでは、とても人との距離が近い人なのが分かります。その馴れ馴れしさ、人なつっこさを持つ八五郎が、妹と妹の子供には近づけない。身分が違うゆえに、遠いところから、母親の想いや妹をあじ想う台詞に、ホロリときます。 八五郎が出世した直前で終わりますが、この先の展開が気になる一席でした。

柳家小八師匠「らくだ」

  • 柳家小八師匠

    柳家小八師匠

 真打昇進したばかりの小八師匠をお見かけすると、喜多八師匠と自転車で、パーティ会場へ向かうまくらを思い出します。いつの間にか小八師匠になられて感慨深い気持ちでいるところで、はやくも「らくだ」がはじまりました。
酒乱で乱暴者のらくだが死んで、死体の第一発見者の兄気が、なんとか葬儀を出してやろうとするけれど、その善なる気持ちも、脅しやゆすりたかりでするので、よく考えると善なる行いではあっても、悪人にしか見えないおかしさ。かといってアルコール依存症で乱暴者の言いなりであってはならないわけで。現在の時代で考えても実は深い噺ではないかと感じました。
小八師匠のかんかんのうを歌う場面は、結構お似合いで、死体に躍らせるところは無気味なような、見てみたいような見たくないような複雑な気分になります。

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」9/11 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ