渋谷らくごプレビュー&レビュー
2018年 3月9日(金)~13日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
古典落語と一口にいいますが、古典にもさまざまあります。古典落語っぽい創作で擬古典を演じる人もいれば、自分なりの解釈で古典を再整理する人、リアルさや演じることに磨きをかける人。
この公演はそんなまったく違うアプローチで落語に挑む人たちをご覧いただけます。
トリをとる笑二さんは現在二つ目、古典の解釈と表現力は抜群です。良い人そうだなーと思って和んでみていると突然喉元にナイフをつきつけるようなことをするので、スリリングな落語家さんです。お楽しみに!
▽立川吉笑 たてかわ きっしょう
26歳で入門、現在入門7年目、2012年4月二つ目昇進。オンラインサロン「立川吉笑GROUP」を立ち上げ、新しい活動を試みている。中央公論での「炎上するまくら」から日経電子版まで多くの連載を持つ。お酒を飲むとベロベロになるまで飲み続ける。
▽隅田川馬石 すみだがわ ばせき
24歳で入門、芸歴25年目、2007年3月真打昇進。高座を終えて楽屋を出る速度が渋谷らくごの出演者の中で最も早い。75歳で落語家のピークを迎えるよういまから調整している。お酒が好きで、楽しくなると紹興酒の瓶を抱えるようにして飲んでしまう。
▽入船亭扇辰 いりふねてい せんたつ
25歳で入船亭扇橋師匠に入門、現在入門28年目、2002年3月真打昇進。ギターからピアノまで演奏する。2月末は、バリで数週間過ごす。南国の空の下、シブラクTシャツで読書に耽っている写真がツイッターにアップされている。
▽立川笑二 たてかわ しょうじ
20歳で入門、芸歴7年目、2014年6月に二つ目昇進。沖縄出身の落語家。お酒を飲んでいない日、寝る前に現代文の問題を解いている。飲み会に参加することが多いが、気付くと寝てしまっている。兄弟子の吉笑さんと高円寺で同居していた時期がある。
レビュー
3/10(土) 14:00-16:00「渋谷らくご」
立川吉笑(たてかわ きっしょう)「舌打たず」
隅田川馬石(すみだがわ ばせき)「粗忽の使者」
入船亭扇辰(いりふねてい せんたつ)「鮑のし」
立川笑二(たてかわ しょうじ)「もう半分」
「愉快なサンドイッチは奇妙な香り」
レビューを書くたびに思うが、楽しい時間は本当に一瞬で、光っていて、たまにどんな時間だったのか上手く思い出せなくなる。
仕事中の14時から16時の2時間なんて、あんなに経つのが遅く感じるのになあ。
そんな一瞬で困難な時間を、こうやって少しずつ思い出して拾っていく作業が私は凄く好き。
私が今の私に教えてくれる、今日のシブラクはこんな回だったよって。
今日は立川の兄弟に挟まれるサンドイッチシブラク。
どんな味がしたっけな。
「立川吉笑-舌打たず」
-
立川吉笑さん
今日の舌打たずっていうのは、イラつくと思わず舌打ちが出ちゃう八五郎が、なんやかんやあって、もう舌打ちで喜怒哀楽を表現できるんじゃないかと隠居相手に話すというストーリー。
冒頭の、イラついているのを悟られないために八五郎が囮の舌打ちをして喋るところ。チッていう舌打ちが5文字位喋るごとに入る、しかも早口。素直に吉笑さんは話すことのプロだなあと感心してしまう。
八五郎は隠居に「舌打ち喜怒哀楽これはどれでしょうクイズ」みたいなものを出すんだけど、この面白い噺の中で私が怖かったのは、最初嫌々ながら付き合っていた隠居が、カラス「カー」で夜が明けてもそのクイズをまだ続けていて、流石に嫌気が指している八五郎に「お願いだから最後の試験を出してくれ」と要求するところ。最初はくだらないことを言って、と鼻で笑っていた隠居がのめり込んで抜け出せなくなっているのがなんともシュール怖い。サゲの隠居が言う「多分喋った方が早いと思うよ」で、正気を取り戻してくれていたならいいが…私はまだ「目を閉じて舌打ちをしているのは…喜びだったかな…」と悩んでいる隠居がいるんじゃないかと心配だ。
「隅田川馬石-粗忽の使者」
-
隅田川馬石師匠
おっちょこちょいで慌てん坊で、なんでもすぐに忘れてしまう地武太治部右衛門は、ある日お殿様から使者の役目を仰せつかる。時間もまだまだ早いけど、早いに越したことはないと馬に跨るが前後ろが逆。乗り直してくださいと言われても、「首を取ってこちら側につければいいだろう」という始末。ありゃりゃ。やっとこさ着いたけれど、なんということでしょう。肝心の口上を忘れてしまった。こんな失態、あり得ない、もうここで腹を切るしか…。そんな事を聞いた家老の田中三太夫も、たまったもんじゃない。…なに?お尻をひねってくれれば思い出すかもだと?おい、家中で指の力が強い奴はおるか。
後半は、椅子から少し離れる位お尻に力が入ってしまった。いたたたた、インターバルがなければ扇辰師匠の出囃子が流れてもまだ力が抜けてなかったかもしれない。
「入船亭扇辰-鮑のし」
-
入船亭扇辰師匠
夫婦にとっては、日常の出来事でも、聞いているこちらは愉快で堪らない。聞けば聞くほど奥さんが気の毒になるけれど。
働かないでプラプラしている旦那、一丁前に飯を喰わせろと言うが米もなければ金もない。奥さんは私の名前でご近所さんにお金を借りておいでと言う。言われた通りお金を借りに行くと、旦那にはそんな金ないというが奥さんの名前を出すとあっさり50銭貸してくれた。旦那は納得いかない様子だったが、こういう所に日頃の行いが出るんだぞ。やっと飯にありつけると思いきや、今度はその50銭で魚屋に行って尾頭付きを買ってこいと言われる。なになに、今日大家さんところの息子さんがお嫁さんをもらうからそのお祝いだと言って尾頭付きを渡したらお礼に1円くれるだろうから、そしたらご近所に50銭返して残りの50銭で飯が食えるだって?なんて賢い嫁を持ったんだ。そして奥さん、あなたはなぜこんな旦那を持ったんだ。
お気楽でのんびりやで、大家さんに言う口上もろくに覚えられない旦那、でもなんだか憎めない。こういう人だからと相手が諦めてしまうような能天気さ。でもこんな人が近くにいたら自分の悩みもくだらなく思えてしまいそう。
さては奥さん、そこに惚れたか。
「立川笑二-もう半分」
-
立川笑二さん
「私、人を殺した事があるんです。」
と、こちらをまっすぐ見る目が妙に恐ろしくて、背筋がぞくっとした。今日はやけに身体を使うな。
永代橋の近くで小さな居酒屋を営む夫婦は、日々貧しい暮らしをしていた。しんしんと雨が降りしきる夜、今日はもうお客さんも来ないだろうと店を閉める支度をしていると、身なりの汚い老人男性が暖簾をくぐる。
人間の欲は醜い。そして恨みは心底恐ろしい。
あぁ、もっと早く、店を閉めていれば、あんな事にならなかったのに。もっと早く、男性の忘れて行った風呂敷包みを返していれば、夫婦は貧しいながらも生活が続けられていたのに。
後悔しても遅い。娘が吉原に身売りした金が入る風呂敷包みは、夫婦を恨んでも恨みきれない、金より大事な大事な思いが詰まっていた。
サンドイッチはバランスが大事。重なりは絶妙で、この4人でなければきっと今日の様にはきっといかない。味は癖になる、またすぐに嗜みたくなるようなスパイスがピリッと効いた美味しい美味しいサンドイッチだった。ご馳走様でした。
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「渋谷らくご」3/10 公演 感想まとめ
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