渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 3月9日(金)~13日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

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3月10日(土)17:00~19:00 立川志ら乃 雷門小助六 橘家圓太郎 古今亭志ん五

「渋谷らくご」ジミしん with 圓太郎師匠! ~ジミだけどすごい真打の会~

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プレビュー

 世の中二つ目だけじゃない! 若手なら真打にだっているんだぞ、目立たないけど。というか、目立たないようにしている!?けど。いや、目立ちたいのかもしれないけれど。
 出演する順番、その日の天気、お客さんの傾向に合わせて、その日の正解をしっかりと出してくれる、それが「真打」!
 先月波紋を呼んだ「ジミしん」の会、第2弾。今回はゲストに橘家圓太郎師匠をお迎えします!


▽立川志ら乃 たてかわ しらの
24歳で入門、芸歴20年目、2012年12月真打昇進。カエルのぬいぐるみを集めていることをツイッターで公表したら、カエルグッズをプレゼントされるようになった。落語の裾野を広げるために、現在は落語家から声優まで26人同時に稽古をつけている。

▽雷門小助六 かみなりもん こすけろく
17歳で入門、芸歴18年目、2013年5月真打ち昇進。猫好きで4匹の猫を飼っている。家で横になると猫が背中に載ってくる。2月22日「猫の日」に、インスタグラム用の可愛らしい写真を撮ろうとカメラを構えたが、猫が炬燵から出てこなくて撮影を断念した。

▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう
19歳で入門、芸歴36年目、1997年3月真打ち昇進。オヤジの小言マシーンぶりは渋谷らくごでも爆笑を生んでいる。ご飯をお腹いっぱい食べて、落語を聴くと眠くなくても無理矢理寝られるという発見をした。この発見のせいで太ってしまった。

▽古今亭志ん五 ここんてい しんご
28歳で入門、芸歴14年目、2017年9月真打昇進。渋谷らくごの公式読み物どがちゃがでは、志ん五師匠の似顔絵コラムが掲載中。スケートボードにはまり稽古を重ね、Youtubeに技をアップしている。新しいスケボーを手に入れる。どちらかというと派手?

レビュー

文:とも朕 Twitter:@dejidj2016 (シンガポール育ち。落語、音楽、映画好き。最近嬉しかったことは、ギレルモ・デルトロ監督のアカデミー賞受賞)
3月 10日(土) 17時~20時 「渋谷らくご」
立川志ら乃(たてかわ しらの) 「真田小僧」
雷門小助六 (かみなりもん こすけろく) 「抜け雀」
橘家圓太郎(たちばなや えんたろう) 「禁酒番屋」
古今亭志ん五(ここんてい しんご) 「子別れ」

プレビューによると「先月波紋を呼んだ「ジミしん(地味だけどすごい真打)」の会、第2弾」とな!
タツオさんの前説によると、噺家は真打になって間もなくが一番オイシイ時期とのこと。各協会の若手真打の競演 with 小言マシーンの圓太郎師匠。地味どころか、華やかで楽しそうですが!?

立川志ら乃師匠 「真田小僧」

  • 立川志ら乃師匠

    立川志ら乃師匠

年内に引っ越し予定の志ら乃師匠。同じ地域内(初台)で4回目のお引越しだそうです。スーパーマーケット好きの師匠、新居の近くにどんなスーパーがあるかはとっても重要。お引越しの環境はご家族やお子さんにも影響するようで…「小児は白き糸の如しなんて申しまして」と始まったのは真田小僧。

留守中のおっかさんの行動を思わせぶりに語って、おとっつぁんからお小遣いをせしめるワルい子のお噺。大きなお目めにクルクル変わる表情、志ら乃師匠の子供の演技は本当に面白いです!話の続きを聞きたくてハアハアするおとっつぁんの焦燥感あふれる表情も、過呼吸で倒れるかモ?と心配になるほどの迫真の演技でした。全然地味じゃない!アクションもたっぷりで、むしろ派手?

4月には岡山の高座で600名のホールを満員にする「予定」の師匠。岡山に行かれない東京のファンには念を送って欲しいそうです。私も大成功をお祈りします!


雷門小助六師匠 「抜け雀」

  • 雷門小助六師匠

    雷門小助六師匠

小助六師匠も「志ら乃師匠は派手だねー」とクスクス。それに対して、ご自分は猫と遊ぶのが趣味という地味人間とおっしゃいます。楽屋でも猫好きの前座さんと(落語についてではなく)猫の話題で熱く盛り上がるそうです。

そんな師匠も愛猫達と離れて、学校寄席のために全国を旅することも多いそう。
というわけで、今回は旅のお噺。昔の旅には、水が合わなくて病気になったり、ドロボーや駕籠かき(客待ちする駕籠屋で街道筋にたむろする雲助)など悪者に出会うリスクが付き物だったそうです。

お話の舞台は宿場町。文無しで宿泊代を支払えない絵師が、宿代の代わりに魔法の雀の絵を描きます。雀たちは朝になると絵から抜け出し飛び回りますが、その絵には何か足りないものが…そしてその足りない物を書き足したのは、その絵師の父親でした。。。

結末は「駕籠かき」が何か知らないと分かりにくいサゲ。まくらでちゃんと説明して下さった師匠、ありがとうございます!先月の渋らく「まくら王」の演目でもそうでしたが、まくらは本題に入る重要な導入部分ですね。

師匠の穏やかな演技と絵の中の雀が飛び回るというファンタジー的要素がマッチして、心和む一席でした。


橘家圓太郎師匠 「禁酒番屋」

  • 橘家圓太郎師匠

    橘家圓太郎師匠

「悲しみ」は感情であり世界共通なのに対し、「笑い」は文化なので案外国境を超えないものですが、以前、外人向け落語会(というのがある)に行った時、英語版「禁酒番屋」が大ウケでした。このお噺は、海外にもよくある(ジム・キャリーやベン・スティラーが主演しそうな)悪ノリ復讐コメディを彷彿とさせる所が可笑しかったのでしょう。

この機会に圓太郎師匠による正統派オリジナル版を聴けて、とっても楽しかったです。大事なお酒が番屋で搾取されてしまい、酒屋は驚きのリベンジに出るという結末。江戸時代当時、商人による侍へのリベンジというお噺はさぞかし愉快だったであろう事がヒシヒシと伝わって来る一席でした。

小言マシーンという異名とは裏腹に、穏やかな師匠。最近は腹の立つ事も少なくなったそうです。が、渋谷駅からユーロスペースに向かう途中にたむろする若者、職質に合った時の警察官の態度に対して、穏やかに語りながら時々見せる「怒り」は結構スリリングです。この方、「ジミしん会」ゲストなのに全然地味じゃない、むしろエキサイティング!


古今亭志ん五師匠「子別れ」

  • 古今亭志ん五師匠

    古今亭志ん五師匠

先日「ラブレス」というロシア映画を観ました。アカデミー賞外国語部門にノミネートされたアンドレイ・ズビャギンツェフ監督の新作なのですが、これも両親の離婚に振り回される息子の物語でした。大人の事情に子供が振り回されるのは、今も昔も、日本も外国も同じですね。このロシア映画の結末は悲劇的でしたが、さすが日本の人情噺は最後に光がさすので聴いていて安心できます。人が幸せになるお噺は大好きです。

日向ぼっこが趣味という志ん五師匠。のほほんと面白カワイイ(ちょっとミスター・ビーン似)のお顔をしていらっしゃいますが、一度お噺が始まると、幼くいたいけなカメちゃん、素直になれないおとっつぁん、清楚で情の深いおっかさん(多分、美人)にまで見えて来るのでビックリ。お互いを想い合う両親がはにかみながら仲直りして行く様子を、微妙な表情の変化を織り交ぜながら演じて下さいました。思わず涙腺が緩みます、凄いわ。

「ジミだけどすごい」は最強です。今年度アカデミー賞作品賞などに輝いたデルトロ 監督の映画「シェイプ・オブ・ウォーター」でも一見地味なヒロインが大活躍します。ビバ地味!

本日は皆さん真打、皆さん古典の安定した演目。色々な師匠方が過去に何度も名演されて来た古典落語も、演者の表現力と受け手のイマジネーション次第で、面白さも「水」のように新鮮かつ柔軟で変幻自在。まさに「シェイプ・オブ・ウォーター」ですね。
柔軟性といえば、古典を超えて「ジミしん創作の会」も観てみたいです!(ジミスゴ創作って、なんか面白そう)!
今後も「ジミ」だけどすごい真打の方々の「華やか」な活躍に期待してます!

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」3/10 公演 感想まとめ
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