渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 4月13日(金)~17日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

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4月13日(金)20:00~22:00 林家きく麿 玉川太福* 柳亭小痴楽 桂春蝶

「渋谷らくご」話題の男たち

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プレビュー

◎ニコニコ公式生放送「WOWOWぷらすと」中継あり(http://www.wowow.co.jp/plast/

なにかと話題の男たち。
 本年12月に末広亭でトリをとることが決まった若手真打、きく麿師匠。
 毎月木馬亭で独演会を行う浪曲界の救世主、玉川太福さん。ニュース浪曲も大好評。
 ノリにのってるユニット「成金」の中核メンバーでもある、柳亭小痴楽さん。
 荒ぶるツイートに、創作落語の公演も続ける、桂春蝶師匠。
 心の琴線に触れることうけあい。だれかにハマって帰ってほしい公演です。

▽林家きく麿  はやしや きくまろ
24歳で入門、芸歴21年目。2010年9月真打ち昇進。観光地などにおいてある顔ハメ看板には、必ず顔を入れる。仲間内から「顔ハメのカリスマ」と呼ばれている。ふいにハイジの再放送を見てしまい、涙を流す。ゆで卵をスライスする機械を探している。

▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門、2012年日本浪曲協会理事に就任。2017年文化庁芸術祭大衆芸能部門の新人賞を受賞。可愛い水筒をいつも持参している。最近飛行機の着陸酔いに悩まされる。

▽柳亭小痴楽 りゅうてい こちらく
16歳で入門、芸歴13年目、2009年11月二つ目昇進。オンライン視聴者討論番組「激論ザムライ!」のファシリテーター。最近ものすごい勢いでアガサクリスティーを読み続けている。最近新しい万年筆を買った。

▽桂春蝶 かつら しゅんちょう
19歳で入門、芸歴23年目、2009年8月、父の名「春蝶」を襲名する。積極的にツイートをしている。学生時代の吉岡里帆に落語を教えていた。テレビドラマ「孤独のグルメ」が大好き。現在公開中の「ドラえもん・のび太の宝島」に感動して共感した。

レビュー

文:香川菜月Twitter:@cntszz (なんでも楽して、ちょっとズルしたい)

4/13(金) 20:00-22:00「渋谷らくご」
林家きく麿(はやしや きくまろ)「寝かしつけ」
玉川太福(たまがわ だいふく)・玉川みね子(たまがわ みねこ)「地べたの二人 おかず交換」
柳亭小痴楽(りゅうてい こちらく)「猫の災難」
桂春蝶(かつら しゅんちょう)「地獄八景」

「心を囚われた」


ガシッと掴んで、しばらく解放してくれなかった。
最初は少し戸惑ったが、すぐ心地良くなった。
これはきっと、クセになる。

林家きく麿-寝かしつけ

  • 林家きく麿師匠

    林家きく麿師匠

日本のヤクザの半分以上は北九州産だという、今後の人生できっと役に立たないであろう豆知識のお土産を、きく麿師匠は初っ端から私達にくれた。

今でも昔でもない、村でも街でもない場所で、1人の男が友人に自分の子供の寝かしつけ方の相談をする。
子守唄もダメ、本の読み聞かせもダメ、いちいち面倒な理由をつらつら述べて友人の提案を却下する。もう、誰かこの男を寝かしつけてくれ。
「(桃太郎の)きびだんご一つで鬼退治なんて割りに合わないだろう!」「じゃあ、きびだんごをあげなきゃいいじゃないか!」という会話から、桃太郎と犬のきびだんご駆け引き歌が繰り広げられる。ズルイ、こんな面白い桃太郎は初めてで、日本人らしい絶妙な掛け合いにクスクスからゲラゲラと笑い声はどんどん大きくなっていった。
凄い、北九州。ヤクザ以外にも素晴らしい名産品があるじゃないか。

「玉川太福/玉川みね子 -地べたの二人 おかず交換」

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠

    玉川太福さん・玉川みね子師匠

太福さんが作り上げるのは、新しくてシュールなのに、なぜか懐かしい気もする不思議な空間だ。
さすが、一般社団法人日本浪曲協会元理事。今日は生放送中継があり、その画面越しのお客さんにも丁寧に面白く気を配ってくれた。さすが、一般社団法人日本浪曲協会元理事。

後にご本人が呟いていたが、シブラクでのおかず交換は約2年ぶりだったそう。運が良かった。嬉しくてちょっと客席から浮いた。
齋藤は金井くんのお弁当に入っていた唐揚げタルタルとこの日初めて出会う。そして50代齋藤は思う。唐揚げにタルタル…食べてみたい。
淡白だけど人間味溢れる2人の会話は、聞いてる人達を夢中にさせ、2人の事が気になって仕方なくさせる。齋藤を演じる右側を向く顔はどこか頼りなさそうで、反対に金井を演じる左側を向く時は少々キリッとしている。コロコロ変わる表情に、ワクワクが止まらなかった。

「柳亭小痴楽-猫の災難」

  • 柳亭小痴楽さん

    柳亭小痴楽さん

酒飲みは苦手だというマクラを話した後に、「呑みてえ呑みてえ…」と、大酒呑みの噺を始めてくれた。今日はきっと落語界初であろう渋谷で落語のハシゴを行った小痴楽さんは、いつも以上にいい波に乗っていた気がする。

朝湯を終えて、ぼーっとしてると酒が呑みたくなってきた。今日みたいな休みに酒を飲んだらどんなに美味いだろう。しかし熊五郎には金がない。金がなければ酒は飲めない。困った所に現れたのは隣の猫の余りの鯛と、同じく酒を飲みたがっている金を持った兄弟分。
熊五郎に、悪意は全くないが、欲望はたっぷりある。悪知恵は、本人が思ってる程はない。
小痴楽さんは酒呑みのどうしようもない男の役がとびきり上手い。美味そうに美味そうに酒を呑む。
あそこまで美味そうに呑まれたらきっと酒も本望だろう。

「桂春蝶-地獄八景」

  • 桂春蝶師匠

    桂春蝶師匠

渋い上品な着物に、整ったお顔が大変よく似合った。痺れるようないい声で、自由が丘の高級スーパーの悪口を散々言ってから、めちゃくちゃ面白い地獄八景亡者戯を披露してくださった。ご本人の本気に、熱気に、溶けてしまいそうだった。
あの時間はギリギリ、この世ではなかった気がする。

地獄というより、大阪地獄ランドなんていうテーマパークに迷い込んでしまったような、そんな感覚。カラフルで、ガヤガヤしていて、ソースの匂いがしてきそうな。冥土喫茶もあれば地獄寄席もある。地獄だからさよならした大好きだった人や懐かしい人に会えて話せる。なんだ、地獄っていい所だな。
私の初めての地獄ツアーは、関西の色が濃く濃く出た春蝶ガイドさんのお陰で、地獄の暗くて怖いイメージを思い出す事もなくあっという間に終わった。


【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」4/13 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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