渋谷らくごプレビュー&レビュー
2018年 4月13日(金)~17日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
林家彦いち師匠プレゼンツ! 二ヶ月に一度の 創作らくごネタおろし会「しゃべっちゃいなよ」。
なにが飛び出すかわからない、それでも百年後も残る噺を聴けるかもしれない。そんなドキドキが炸裂するネタおろし。
笑わせる噺が多いなか、泣かせる噺や不思議な噺に挑む人もいるので、そのへんの意図は、お客さんが汲んでリアクションをとりましょう! お客さんと一緒に作っていくのが落語です。その共同作業のおもしろさを、ぜひこの公演で楽しんでくださいね!
▽三遊亭わん丈 さんゆうてい わんじょう
28歳で入門、芸歴7年目、2016年5月二つ目昇進。渋谷らくご初登場。競馬やパチンコで生活をしていたほどのギャンブルの腕前がある。元バンドマンでラップが上手いらしい。ウェブサイトがカッコイイ。
▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。ハーゲンダッツ「栗あずき」味のキャンペーンに抜擢されている。スマホアプリ「将棋ウォーズ」にハマっている。得意な戦法は「原子棒銀」。なかなか2級に上がれない。
▽立川志ら乃 たてかわ しらの
24歳で入門、芸歴20年目、2012年12月真打昇進。相撲好き、一時は取組を見ると試合展開がイメージ出来てしまい勝敗予想を的中させることができた。落語の裾野を広げるために、現在は落語家から声優・アイドルまで同時に稽古をつけている。
▽立川吉笑 たてかわ きっしょう
26歳で入門、現在入門7年目、2012年4月二つ目昇進。オンラインサロン「立川吉笑GROUP」を立ち上げ、新しい活動を試みている。スマホアプリ「将棋ウォーズ」にハマっている、得意な戦法は「四間飛車」。すいすいと2級に上がった。
▽林家彦いち はやしや ひこいち
1969年7月3日、鹿児島県日置郡出身、1989年12月入門、2002年3月真打昇進。
創作らくごの鬼。キャンプや登山・釣りを趣味とするアウトドア派な一面を持つ。いまはバイクに熱中している。前回の「しゃべっちゃいなよ」では、楽屋で創作らくごのアイデアが止まらなくなり腕時計を忘れて帰ってしまう。
レビュー
「渋谷らくご」2018年4月公演
4月17日 20:00~22:00「しゃべっちゃいなよ」
三遊亭わん丈(さんゆうてい わんじょう)-うちのウリ
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう)-お隣さん
立川志ら乃(たてかわ しらの)-仲入り
立川吉笑(たてかわ きっしょう)-話の心臓を止める
林家彦いち(はやしや ひこいち)-まふぁんど
個性的な作品が並ぶ中で、公演全体は「寄席」のような連携プレーが随所に見られ、他の出演者のネタにも耳を澄ます演者の真剣さが伝わってきました。シブラクの他公演にないのが、彦いち×タツオ氏の前説・後説トーク。「面白いところは自分で探しましょう」というアドバイス(保険?)を毎回してくれるので、見ている私たちも安心です。
三遊亭わん丈-うちのウリ
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三遊亭わん丈さん
ネタは、父親の店を継いだ息子のラーメン屋に、ランキング情報番組のテレビロケが来る前の、どきどきわくわくを描いた作品です。サゲのセリフだけ言えれば本編自体は成立するので、わん丈さんはこのシチュエーションを使って自由に遊んでいました。特に、母親がテレビに向かって突っ込むという手法を使って、次々と時事ネタをギャグにしていくところは見事です。
マクラで落語界をジャニーズに例えながら、笑いを貪欲に取りに行く姿に、わん丈さんらしさ見ました。トップバッターとかポジションとかを意識せず、骨太のネタをぶつける姿も見てみたいという期待もまた、膨らんできています。
春風亭昇々-お隣さん
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春風亭昇々さん
ネタは、地方から大都会・東京に引っ越してきた若夫婦の旦那さんが、アパートの隣人に手土産を持ってあいさつにいく話。「バカにされたくない田舎の男」が勝手な妄想で、隣人に対してマウンティング(優位性誇示)を取りに行きます。戦闘モードで強気に出ながらも、事前のシミュレーションが外れて、相手のスマートな対応に打ちひしがれていく、弱者の世界が描かれています。「田舎vs都会」という普遍的なテーマを扱ったネタながら、オリジナリティ満載で、昇々ワールドを堪能できました。
「都会のランチ情報は『ヒルナンデス』で仕入れて『ブランチ』も混ぜる」「手土産やAmazonのランキングの最上位から少し外す」などディテールもいちいち面白い。田舎の人の訛りは茨城・栃木弁ぽいのですが、都会を「トケー」、大都会を「ダイトケー」ってすごいですね。
立川志ら乃-仲入り
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立川志ら乃師匠
今回のネタは、「創作落語のネタができていない夢」を見てうなされ、コンビニのバイトに遅刻を繰り返している男が、バイトリーダーと一緒に本当の落語家になり、創作落語ができない夢妄想から抜けだそうとする話です。「ネタができない」というのが、先に登場した昇々さんの冒頭の叫びとも微妙にリンクしています。
「創作落語のネタができない」という緊張感漂う冒頭のセリフから、登場人物と状況が徐々にわかっていくミステリー的な導入部があり、徐々にリアルな落語の世界に入っていき、彦いち、吉笑、太福、松之丞らが登場してきます。これはまさにVR(仮想現実)の世界で、ひと昔前ならウォシャウスキーの「マトリックス」、最近だとクリストファーノーランの「インセプション」を彷彿させます。どこまでが現実世界でどこからが仮想世界なのか。自分はどの世界にいるのかわからなくなる、奇想天外な作品でした。意味深なタイトルにも注目です。
立川吉笑-話の心臓を止める
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立川吉笑さん
ネタは、X JAPANのギタリスト「hide」のコンサートを見た話をしている吉笑さんに対して、友だちの上杉君、ヨネヤン、田所君らが「話の腰を折ったり」「話の腰をさすったり」する話です。普遍的なコミュニケーション不全を扱っているのですが、身体性に着目して昔からある慣用句「話の腰を折る」からさまざまなバリエーションに発展させていくのが吉笑オリジナル。hideというミュージシャンを選ぶセンスもなかなかながら、タイトルの「話の心臓を止める」は「君の膵臓をたべたい」くらいのインパクトです。
リアルな世界が出てくるので、話の構造が前の志ら乃師匠と似ているという見方もできますが、吉笑さんのはAR(拡張現実)の世界なので、実はまったく異なります。非現実世界を見せるVRに対して、ARは現実世界とつながっているもの。吉笑さんはマクラで左談次師匠のお葬式を取り仕切った現実の話をして、そこから接続点を作らずシームレスに創作落語の世界に拡張していきます。テクノロジー的な感覚で落語を創作していく吉笑さんって、今までにない異次元のタイプの落語家さんですね。
林家彦いち-まふぁんど
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林家彦いち師匠
ネタは、落語家が「間」をファンドに預ける話で、「こち亀」のようにどんどんエスカレートしていきます。こちらも主人公は落語家(彦いち)さんですが、見せ方はどちらかというとパラレルワールド的です。
一見難しそうなファンドの話が、落語家の「あれ」に置き換えるだけで大爆笑。仮想通貨の盗難ネタや詐欺ネタも出てきたりで、ストーリーもダイナミック。毎月、高いクオリティのネタを生み出し続ける彦いち師匠には「すごい」という言葉しか思い浮かびません。マクラでGoogle Home(AIスピーカー)について話す、リアルな彦いち師匠も相変わらずぶっとんでいました。
5本の作品はどれも面白かったです。若手もベテランも関係なく「産みの苦しみ」を経てこの舞台に出てきているので、5人の一体感のようなものが伝わってきます。しかし、どのネタも従来の創作落語のワクにはまらない高度なもので、お客さんの反応は大丈夫かと心配してしまうのですが、みなさん笑っていて満足度も高そう。お客さんの感性もシブラク独特ですね。
【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」4/17 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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