渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 4月13日(金)~17日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

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4月14日(土)17:00~19:00 立川寸志 春風亭昇々 柳家わさび 古今亭駒次

「渋谷らくご」注目の二つ目 落語家 大激突!

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プレビュー

 大注目の二つ目が四人そろう回です。
 二つ目さんが見られる公演は都内にもたくさんあるので、渋谷らくごではやってきませんでした。が、真打昇進を控える二つ目さん、そして各団体を代表するような存在の若手が集結できるので、ここで大激突してもらおうと思います。
 真打を見据え、自分らしい落語を確立し、どういう状況においてもお客様を満足させる存在に。そんな高みを目指す四人です。

▽立川寸志 たてかわ すんし
44歳で入門、芸歴7年目、2015年二つ目昇進。2017年渋谷らくご賞「たのしみな二つ目賞」受賞。家で突然歌いだす癖がある。渋谷らくごに出演するときは自分なりのテーマを設定している。今回のテーマは「ストロングスタイル」。

▽春風亭昇々 しゅんぷうてい しょうしょう
1984年11月26日、千葉県松戸市出身。2007年に入門、2011年二つ目昇進。ハーゲンダッツ「栗あずき」味のキャンペーンに抜擢されている。スマホアプリ「将棋ウォーズ」にハマっている。得意な戦法は「原子棒銀」。なかなか2級に上がれない。

▽柳家わさび やなぎや わさび
23歳で入門、芸歴14年目、2008年二つ目昇進。痩せ形で現在の体重は52kg。NHK-BSの「our SPORT!」にレギュラー出演中。いま歯並びの矯正をしているらしい。この夏、橘家文蔵師匠と欧州へ落語ツアーをしにいく。

▽古今亭駒次 ここんてい こまじ
24歳で入門。芸歴15年目、東京都渋谷区出身。鉄道をこよなく愛し、鉄道に関するコラムを執筆するほど。2017年創作らくご「しゃべっちゃいなよ」で創作大賞を受賞。今年の9月に真打ちに昇進することが決定。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@dejidj2016 (シンガポール育ち。落語、音楽、映画好き。春休みは、台湾一周乗り鉄旅行をしてきた)
4月14日(土) 17時~19時 「渋谷らくご」


立川寸志(たてかわ すんし) 「黄金餅」
春風亭昇々(しゅんぷうてい しょうしょう) 「初天神」
柳家わさび(やなぎや わさび) 「転宅」
古今亭駒次(ここんてい こまじ) 「ビール売りの女」

プレビューによると今宵は、「真打を見据え、自分らしい落語を確立し、高みを目指す」大注目の二つ目さん激突。興奮しますね!
確かに皆さんユニーク、ご自身のスタイルを持っておられます。今後それを、どのように発展させて行かれるかが楽しみな方々です!

立川寸志 「黄金餅」

  • 立川寸志さん

    立川寸志さん

開口一番でイキナリ人が死ぬお噺!?
「空気読むのは苦手、立川流ですから」という寸志さん。先月は(天国に旅立たれた)立川左談次師匠の後に「死神」をかけた寸志さん、ああ。。ダークな魅力が満載です。

お噺は、病で伏した男が、貯金をあの世に持って行こうとしたのか?お金をお餅にくるんで食べているのを見た隣人。死後に火葬したホトケさんのお腹から取り出した資金を元に、目黒に黄金餅を開業したそうです。キャー!何とブラック。目黒不動の名物として実在したという黄金餅の黒歴史。こんな怖~い背景があるのですね。
お噺全体を包むダークな雰囲気に惹かれると同時に、お弔いのためにホトケさんを上野から麻布十番の木蓮寺に連れて行く場面で通る旧町名の羅列、木蓮寺の酔っぱらい住職があげる変なお経など、ストリートラップの様なテンポの良さにも引き込まれました!
ディズニー作品「リメンバーミー」が今年度アカデミー賞アニメ部門受賞したように、最近は「あの世」に関して考えさせられるお噺の人気が高まっているのでしょうか。。

春風亭昇々「初天神」

  • 春風亭昇々さん

    春風亭昇々さん

わさびさんによると、楽屋で聴いていて「どんな新作?!」と思ってしまったというほどの「狂気の初天神」。ある意味、これは素晴らしいことです。
あらすじ・サゲも既に知っていて何度も聴いている古典なのに、本当に笑ってしまいました。大人を屈伏させるダーティーな駄々のこね方、団子を欲しがる狂気の叫び!なにこれ、怖い。
さすがポンキッキーズに出演されていたせいか、子供の演技が半端ないです。子供って純粋なだけにやりたい放題、可愛いけど憎たらしい存在なんですね。昇々さんの凄い観察力と表現力が光る一席でした(というか、昇々さんの本能?)

柳家わさび「転宅」

  • 柳家わさびさん

    柳家わさびさん

わさびさんは細身なせいか、マヌケで弱そうなドロボーさんも、一夜にしていなくなる儚げな女性も、キャラ的にお似合いです。

ドロボーのドロスケさん、お妾さん宅に盗みに入るものの、色仕掛けで言いくるめられて逆にお金を取られてしまいます。おまけに、夫婦になる約束までしたのに翌日訪ねると家はもぬけの殻。こんな純情な人がいるとは信じ難いけど、笑いモノにまでされて、ちょっと可哀想。ドロスケさんをまんまと騙した、お妾さんのエロくてズル~い演技は最高でした!

男を手玉にとるエロい悪女といえば「エヴァの匂い」のジャンヌ・モロー、「素直な悪女」のブリジット・バルドー。昔のフランス映画の世界を思い描いてしまいます。
プレビューによると欧州落語ツアーに行かれるというわさびさん。ヨーロッパ人もイチコロの演技を見せて下さると良いですね!

古今亭駒次 「ビール売りの女」

  • 古今亭駒次さん

    古今亭駒次さん

駒次さんといえば、初めて交通新聞社新書の「鉄道落語」を読んだ時は鉄道と落語のマリアージュに驚き、創作大賞受賞作品「十時打ち」を拝聴した時には、鉄道ファンの座席予約にかける熱量に激しく共感してしまいました。なぜなら、私自身も北陸新幹線開通時に、希望の座席を取るべく十時打ちに並んだ事があるからです@東京駅。

今回のお噺では、私達を野球場へと誘って下さいます。スワローズの熱い戦いを背景に、ビールタンクを背負った女達の売り上げバトル。途中、山田選手やバレンティン選手の応援歌合唱もありました(手拍子が揃うまでやめませんよー!とな)

最後は畠山の逆転満塁ホームラン、と同時に登場人物達も素敵な仲直り。誰にでも逆転チャンスがある、というメッセージが込められているような気がしました。冷たいビールが飲みたくなりますね!

このように、今を生きる私達自身の体験を共有できるような新作落語は魅力的です。新作も用意しているとの駒次さん、鉄道落語も又聴きたい!今年9月に真打昇進とのこと。今後のご活躍も楽しみです!

【この日のほかのお客様の感想】
「渋谷らくご」4/14 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ
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