渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 4月13日(金)~17日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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4月15日(日)14:00~16:00 三遊亭鳳笑 柳家小せん 立川幸之進 橘家圓太郎

「渋谷らくご」圓太郎シリーズ! いま、圓太郎師匠が熱い!

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プレビュー

 渋谷らくごには毎月出演してくださっている圓太郎師匠。現在55歳、演目数も豊富で、また落語を演じる体力面でももっとも充実した時期です。50歳から60歳は、黄金の10年、60歳から70歳は円熟の10年、70歳から80歳は滋味の10年とでもいいましょうか。しかしこの師匠は100歳くらいまではこの調子でいきそうな……。
 豪放磊落、天衣無縫、やりたい放題の人を聴くのも楽しいものです。いま圓太郎師匠が熱い!
 そんな圓太郎師匠に挑む個性派3名。3人でかかっても、体力的には敵わないかもしれませんが、芸ではどうでしょう!

▽三遊亭鳳笑 さんゆうてい ほうしょう
28歳で入門、芸歴12年目、2010年10月二つ目昇進。石川啄木からアポリネールまで詩集を読む。アメーバブログをやっているが、独特の文体で日々の生活を報告している。最新の記事は「部屋とYシャツとかかしにコーラ」。不穏な空気を放っている。

▽柳家小せん やなぎや こせん
22歳で入門、芸歴21年目、2010年9月真打ち昇進。橘家文蔵師匠と入船亭扇辰師匠と音楽ユニット「三K辰文舎」としても活動中。2年前より念願だった舞台「パタリロ!」を観劇することができ、世界観に浸る。この時期は花粉対策眼鏡を着用する。

▽立川幸之進 たてかわ こうのしん
24歳で入門、芸歴14年目。2004年に二つ目昇進。2017年落語芸術協会で年季があける。札幌スープカレーの素を手に入れて3時間かけて完成させる。最近お酒が弱くなってきたとのこと。飲み会ではハイボールを積極的に飲む。

▽橘家圓太郎 たちばなや えんたろう
19歳で入門、芸歴36年目、1997年3月真打ち昇進。オヤジの小言マシーンぶりは渋谷らくごでも爆笑を生んでいる。ウェブサイトに「ズボンが入らなくなったので少しだけ動いています」とだけ書いてある。トライアスロン3級審判員の資格をもつ。

レビュー

文:月夜乃うさぎTwitter:@tukiusagisann 趣味:茶道 猫のいるカフェ巡り

2018年4月15日(日)14時~16時「渋谷らくご」
三遊亭鳳笑(さんゆうていほうしょう)「子ほめ」
柳家小せん(やなぎやこせん)「崇徳院」
立川幸之進(たてかわこうのしん)「岸柳島」
橘家圓太郎(たちばなやえんたろう)「棒鱈」

春爛漫、春の嵐になりそうな強い風が吹く不安定な気候の日だった。圓太郎師匠に挑む、小せん師匠、鳳笑さん、幸之進さんが登場。圓太郎師匠以外は、初めて拝聴する落語家さんで、4人の醸し出すハーモニーがステキだった。

三遊亭鳳笑さん「子ほめ」

  • 三遊亭鳳笑さん

    三遊亭鳳笑さん

    引き締まった細い身体と大きな瞳にインパクトの強さを感じる鳳笑さん。数年前の画像では春風亭昇々さん風サラサラヘアのイケメンだった。それが激痩せするとは、何か険しくハードな生活を送っているではないかと、見る人の想像を掻き立ててしまう。
 寺山修司原作の映画「ああ、荒野」の強くなるためにハードな練習と減量のあるボクシングの世界を彷彿させる。
相手を瀕死の重傷まで攻めるボクサーと打たれ強く耐えることで相手に存在を残そうとするボクサーが出てくるが、鳳笑さんの芸風はどちらのタイプだろうか。
 まくらではインパクトの強い「拘置所」「職務質問」という題材でジョブを打って来た。
パンチ力の強い言葉を拳の代わりに次々と打って攻めてくる鳳笑さんのまくらから「子ほめ」への流れは見事だ。私は「言葉をあやつる落語家さん」の攻めの闘いを垣間見た気がした。

柳家小せん師匠「崇徳院」

  • 柳家小せん師匠

    柳家小せん師匠

 春の嵐と風の強い今日この頃を表現された、美しい春の表現のまくらから「崇徳院」へ。小せん師匠の高座はなんて美しいのだろうか。春ならではの不安定な気候、華やぐ季節を思いながら、春の崇徳院を水もしたたるお嬢様と若旦那が出会う処をうっとり想像し易い。
 若旦那役も、細身で涼しげな目元の小せん師匠が、か弱そうなしぐさを作るのが、儚げで色っぽい。三K辰文舎というバンドを組んでいるだけあって声もよく通る美声が会場に降り注ぐ。
美しくもこっけいな言葉「瀬をはやみ岩にせかうる滝川の」に、何度も大笑いしながらも、うっとりと聞き入った。渋谷にも春の風が吹いた。

立川幸之進さん「岸柳島」

  • 立川幸之進さん

    立川幸之進さん

 「個性がないのが個性」とご自分の紹介をする幸之進さん。しかし落語家になり、立川流を選んだ時点で、既に個性的で波乱万丈な気がする。その上、幸之進さんは師匠である談幸師匠と共に立川流から落語芸術協会へ移籍し、改めて前座修行を送られた。
穏やかで優しそうな佇まい、人をイジるときの「言っていいのかなあ」の惑い、師匠に付いて移籍、どこか人の好さが伝わってくる。 「岸柳島」も幸之進さんの大きな身長と長い手足がしぐさをダイナミックに見せてさわやかな躍動感を感じた。侍が海に飛び込んで泳いでいるのを思い浮かべ、もう少し暑くなったら海に行く予定を立てようと思った。

橘家圓太郎師匠「棒鱈」

  • 橘家圓太郎師匠

    橘家圓太郎師匠

 圓太郎師匠のお噺に感激することが繰りかえされ、いつしか圓太郎師匠のお名前を拝見するだけで嬉しくなっている。「仕事ができる男」「プロフェッショナル」は、落語家なら高座で、野球選手ならホームランで、パティシエならスイーツで、人に多くの夢と感動を与える毎日なのだと思う。
 今回の圓太郎師匠は、楽屋のお菓子を我慢して召しあがらなかったので本調子ではないとおっしゃっている。トライアスロンで鍛えていらっしゃるお姿と真逆のイメージで可愛らしい。お菓子は何がお好みなのだろうか?圓太郎師匠の好きなお菓子が知りたい! 圓太郎師匠は珍しい演目もお持ちで、何がかかるか予測がつかないのも、聞き手をわくわくさせる。今回は「棒鱈」であった。圓太郎師匠、実は、女性役もステキである。今回でいえば、お客さまとお客さまとの間で卒なくふるまう中居さんの「やり手」ぶりがたまらなかった。プロフェッショナルである。何年前であろうか。少し古い話だが、星野リゾー○ホテルの「おもてなし」について書かれた本が注目を浴びた。2013年ユーキャン新語・流行語でも「おもてなし」がノミネートされたこともあった。こちらの中居さんの「おもてなし」もその時話題になった星野リゾー○ホテルに負けない徹底ぶりである。東京オリンピックに向けて再び星野リゾー○ホテルの接客がテレビで取り上げられているが、「ベロベロ漬け」と言われても、不思議な歌を聴いても、たのしく宴会を盛り上げる仕事ぶりは圓太郎師匠の仕事ぶりに通ずるものを感じる。
そして、落語で圓太郎師匠のお噺に今回も感激してしまった。
「1月は、、、♪、2月は、、、、♪、」という圓太郎師匠の歌声は、しばらく耳に残って何度もリピートされていた。

【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」4/15 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ
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