渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 4月13日(金)~17日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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4月14日(土)14:00~16:00 雷門音助 柳亭市童 立川こしら 瀧川鯉八

「渋谷らくご」天才 瀧川鯉八がトリをとる会

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プレビュー

 超若手のエース、音助さん、市童さんの激突のあとは、立川流の異分子 こしら師匠と、渋谷らくご大賞 瀧川鯉八さんの競演。
 端正な落語、落語のようななにか。「落語」という定義をも揺るがす獅子たちと、若いのにこんなにしっかりしてる!と感動しちゃう二つ目。必ずや視野の広がる公演です。

▽雷門音助 かみなりもん おとすけ
23歳で入門、芸歴6年目、2016年2月二つ目昇進。私服はチェックシャツを着こなし。レトロで可愛らしい眼鏡をかけている。学生時代は、京都の花街にあるおしゃれなお蕎麦屋さんでバイトをしていたとのこと。好きな食べ物はそばとすあま。

▽柳亭市童 りゅうてい いちどう
18歳で入門、芸歴7年目、2015年5月二つ目昇進。悪い誘いをうけてラップをはじめたが、天才的な才能を発揮しているらしい。カラオケの3時間コースを利用して稽古をしているので、受付の店員さんに「3時間コースの人」と顔を覚えられてしまっている。

▽立川こしら たてかわ こしら
21歳で入門、芸歴21年目、2012年12月真打昇進。フットワークが軽く、日本のみならず海外でも独演会を開催している。朝ご飯をたくさん食べると一日なにも食べないらしい。仮想通貨に詳しく、最近はラジオにも仮想通貨の有識者として出演する。

▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。2017年第三回渋谷らくご大賞「おもしろい二つ目賞」受賞。先日、念願の富山にある純喫茶「ブルートレイン」に行くことができた。ご飯をたくさん食べても、すぐにパンケーキやパフェを食べたくなる傾向がある。

レビュー

文:さかうえかおり Twitter:@Caoleen1022  愛読書:北斗の拳(殉星のシンが好きです)

4月14日(土)14時〜16時「渋谷らくご」
雷門音助(かみなりもん おとすけ)「不動坊」
柳亭市童(りゅうてい いちどう)「竹の水仙」
立川こしら(たてかわ こしら)「長屋の花見」
瀧川鯉八(たきがわ こいはち)「多数決/減点法」

「待ちに待った…!」


 無事大阪場所が終わり、嬉しいニュースがありました。そう、遠藤の小結昇進が決定。どんだけ待ったことか。…どれだけ待ったことか‼︎期待の中大怪我をしたのが丁度3年前の大阪場所。怪我も徐々に治るわけではなく、一進一退を繰り返すのです。痛めているところを庇って別のところを痛めたり、とても時間がかかるのです。調子の良い時は番付が下位だったり、上位にきた時に限って怪我が悪化してたり。ようやく全てが噛み合ったのです。
 落語ってものすごく相性が関わってくると思います。好みや面白いと思うかとかではなく、タイミングの話。好きなのになかなか巡り逢えない噺や、スケジュールが噛み合わない噺家さんなど、相性ってあるな~…と感じることが多いんです。

雷門音助さん「不動坊」

  • 雷門音助さん

    雷門音助さん

 遠藤の何が凄いって、教科書のような基本に忠実な四つ相撲で全く奇をてらったところがないのに唯一無二感が半端ないところです。稽古マワシで東京ドームの3階席から観ても遠藤とわかる自信がある。そのくらい遠藤の型としてハマっています。
 音助さんの落語の第一印象。誤解を恐れずに言えば、奇をてらったところがないので教科書的。だからなのか、なんの抵抗もなく噺がスっと入ってくるんですよね。好き嫌いのフィルターがかからない。でも、遠藤が立合いで取った前ミツを絶対離さない執着心を見せるように、音助さんのいちいち細かい描写のせいで「教科書感=つまらない」という印象を与えず、あーこの噺ずっと聴いていたいなぁ~って思う良い気分になるんです。
 不動坊ってとある噺家さんのばかり聴いていて、ほかの噺家さんのってどんなんだろ?と思っていました。今回ようやく、待ちに待った…!

柳亭市童さん「竹の水仙」

  • 柳亭市童さん

    柳亭市童さん

 遠藤はイケメンイケメン言われていますが、まぁ確かに顔も整っているんですがね、隠岐の海や朝乃山のほうがイケメンだと思うんです。さて遠藤の何がイケメンなのか。分析しました。あんまり力士同士でワチャワチャしているところも見せないしオフショットが少なくミステリアス。隠岐の海と違って独身だし。見た目の華やかさに反して、ストイックなまでに職人感のオーラがあるのです。あくまで私の嗜好と分析ですがね。
噂には凄いと聞いていた市童さん。先々月「紺屋高尾」でようやく聴くことができました。いやほんとに凄かった。貫禄が凄かったんですよ。で、今回。始まった瞬間マクラが左甚五郎っぽい。そんなの楽しみすぎるじゃないですか。落語の上手い下手はたいして判断できないのですが、なんとなく自分の中で設けている基準の一つが、左甚五郎系の噺を聴いてみたいかどうか。だって甚五郎先生かっこいいんだもん。そんな演芸のスター・甚五郎先生をどう演じるか。市童さんに妙な貫禄があるから、一文無しの大酒呑みでやりたい放題だった時でもコイツ何か違うぞ…と甚五郎感があるんです。で、正体明かしたらやっぱり甚五郎先生でしょ。いやゾクゾクするでしょ。甚五郎オーラをまとっているので、日光連れて行って猫彫らせたくなる衝動に駆られました。ほんと甚五郎先生かっこいい…。甚五郎先生待ちに待った…!

立川こしら師匠「長屋の花見」

  • 立川こしら師匠

    立川こしら師匠

 遠藤はとにかくイケメンなんですが、意外と可愛いところもあるんです。数少ないオフショットではお茶目なところを見せたり案外陽気で、本場所中のクールを通り越して不愛想なイメージとは全然違うんですよね。勝ち越しや金星の殊勲インタビューでも多くを語らず表情も緩めず。だからこそオフショットのキャッキャした感じが大変貴重でありがたやありがたや…と拝んでしまうのです。
 そんな遠藤のギャップ萌えのような落語がこしら師匠。ギャップというかもはや創作落語では…と。とにかく知っている落語とは全く違う落語なんです。もちろん、江戸の風が心地よい古典落語は大好きですが、落語のギャップ萌えを味わえるのです。大家のうさん臭さが全く古典落語を聴いている気がしない。次の展開が全く読めない。「長屋の花見」のオリジナルは聴いたことないのですが、まぁ一応あらすじだけは知っていたんです。でも、そんな知識が全く役に立たない。今後の「長屋の花見」はこのこしら師匠のイメージになってしまう恐ろしさです。遠藤のオフショットで心を射抜かれるが如く、こしら師匠に脳天を射抜かれました。この衝撃、待ちに待った…!

瀧川鯉八さん「多数決」「減点法」

  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん

 私の趣味の一つが、好きな力士の出身地探訪。小豆島、七尾、大阪、珠洲、洞爺、福島町、ハワイ…色々行きましたが、リピーターになったのは会津若松と遠藤の出身地・穴水の二か所のみ。会津若松と違い、一般的な旅行で楽しめる穴水のスポットったら遠藤記念館と美味い寿司屋くらいです。ただし、城オタクや歴史好き、鉄道ファンにはついつい熱くなるマニアックなスポットがたくさん。攻めの姿勢で行くと穴水はとても楽しい町なのです。
 自分の想像力がないとなかなか楽しみきれないエンターテイメント・落語。楽しむ気がないとなかなか楽しめない…と言うと、落語を聴いたことがない人に言うと難しく受け取られてしまうんですよね。でも、鯉八さんの落語はちょっと歪んだ日常が舞台のシュールな落語。ちょっとした経験や思い出、好きなことがあると自分の想像力が己のポテンシャル以上の力を発揮するんです。「多数決」も「減点法」もちょっとは経験のある噺。想像力を発揮するよりも、日常的な経験の引き出しが多い人が楽しめる落語だなぁと思い、落語を聴いたことない人におススメの噺家さんを聞かれるとだいたい鯉八さんと答えています。  寿司以外で穴水旅行が楽しめる人は多分鯉八さん大好きだと思います。また逆もしかり。ただし、穴水の寿司が涙が出るほど美味いように、そんな難しい分析しなくたって鯉八さん面白いんですけどね。
 最近鯉八さんとの相性が先述のとおりの意味で悪く、ほんとこの回待ちに待った…!

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「渋谷らくご」4/14 公演 感想まとめ

写真:渋谷らくごスタッフ
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