渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 5月11日(金)~15日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

イラスト

イラスト

5月11日(金)20:00~22:00 立川談吉 玉川太福* 柳亭小痴楽 入船亭扇辰

「渋谷らくご」バラエティに富んだ落語会

ツイート

今月の見どころを表示

プレビュー

◎ニコニコ公式生放送「WOWOWぷらすと」中継あり(http://www.wowow.co.jp/plast/

 楽しそうな落語の世界に触れてみたい。そんなニーズにお応えするのがこの会です。
 緻密な描写で圧倒的な落語の世界に誘ってくれる扇辰師匠の落語にはぜひ触れてもらいたいです!
 ふとしたバカバカしさに気が抜けてリラックスさせてくれる談吉さん、軽くていかにも気持ちを明るくさせてくれる小痴楽さん。
 浪曲の玉川太福さんのエンターテイナーぶりにも注目の会です。

▽立川談吉 たてかわ だんきち
26歳で入門、芸歴10年目、2011年6月二つ目昇進。趣味は、ガンダムのプラモデル。オーガニック中心の生活を心がけていることだが、ツイッターを見る限りポテトチップスやカレー蕎麦などカロリーが高そうなものを食べている印象がある。

▽玉川太福 たまがわ だいふく
1979年8月2日、新潟県新潟市出身、2007年3月入門、2012年日本浪曲協会理事に就任。2017年文化庁芸術祭大衆芸能部門の新人賞を受賞。可愛い水筒をいつも持参していて、楽屋のソファーでリラックスしながら水筒を飲んでいる。靴下が可愛い。

▽柳亭小痴楽 りゅうてい こちらく
16歳で入門、芸歴13年目、2009年11月二つ目昇進。オンライン視聴者討論番組「激論ザムライ!」のファシリテーター。雑誌クイックジャパンにて、「男が憧れる師弟が、ここにあります。」という内容で師弟対談をおこなっている。機械音痴。

▽入船亭扇辰 いりふねてい せんたつ
25歳で入船亭扇橋師匠に入門、現在入門28年目、2002年3月真打昇進。ギターからピアノまで演奏する。今年の年賀はがきで2等賞を獲得。高級蜂蜜を手に入れる。温泉街の射的で、店員さんにほめられるほどの腕前を発揮した。

レビュー

文:香川菜月Twitter:@cntszz (なんでも楽して、ちょっとズルしたい)

立川談吉(たてかわ だんきち) 「阿武松」
玉川太福(たまがわ だいふく)/玉川みね子(たまがわ みねこ) 「石松三十石船」
柳亭小痴楽(りゅうてい こちらく) 「湯屋番」
入船亭扇辰(いりふねてい せんたつ) 「妾馬」

「満点日和」


素敵な落語と浪曲に期待して足を運んだら、期待以上の素敵な落語と浪曲に出会えた。
今日のこと、早く誰かに話したくなる。
そんな日になった。

立川談吉-阿武松

  • 立川談吉さん

    立川談吉さん

左談次師匠が亡くなってから、まだ日も浅いのに、しんみりする事なく会場を笑いでいっぱいにしてくれた。きっと師匠も喜んでいる事でしょう。それはさておき、次のターゲットは誰ですか、談吉さん。立川流のお師匠方、覚悟はよろしいでしょうか。。。

頭に馬鹿がつくほどの大飯食らいの長吉は、沢山米が食べられるからという理由で相撲取りを目指すが、残念なことにそれを理由に相撲部屋を追い出されてしまう。なんてこった。こんな理由じゃ故郷にも帰れない。いっそのこと死んでしまおう。いや待てよ、この手元にあるお金がもったいないからお腹いっぱいご飯を食べてから死ぬことにしよう。
たとえどんな良いことでも、度が過ぎると嫌でも目についてしまう。善悪を決めるのは、相手次第。この長吉が立派な関取になるなんて、知っているのは本人でも周りの人でもなく、談吉さんと、噺を聞いた私たちだけなのです。

玉川太福/玉川みね子-石松三十石船

  • 玉川太福さん・玉川みね子師匠

    玉川太福さん・玉川みね子師匠

ただ、酒を飲み寿司を食って男二人が喋ってる話をこんなに真剣に聞く30分はそうそう無い。そして30分という時間がこんなに短く感じることも、これそうそう無い。
石松と同じ船に乗り合わせた男の話を聞いていると、「チキショウ」なんて言って寝起きの江戸っ子が割って入ってきた。さらには街道一の親分は石松のところの清水次郎長だという。待ってました、やっぱりこういう話は江戸っ子に限るね。なになに。次郎長だけが偉いんじゃなくて?良い子分がいる?いいねえいいねえ。寿司を食いねえ。酒を飲みねえ。江戸の生まれだってね。神田かい。じゃあその子分の中で誰が一番なんだ。一番二番、三番四番目、五番六番、待っても待っても石松の名前は出てこない。ようやくその名を口にしようとする時、大福さんがフェイントのちょうどお時間となりましたと言い、コントのようにガクッと座席から落ちてしまいそうだった。やられました。

船は浮きもの、流れもの。これからまだ続く石松の旅にもう少し揺れていたい名残惜しい時間だった。

柳亭小痴楽-湯屋番

  • 柳亭小痴楽さん

    柳亭小痴楽さん

最初っから最後まで、座布団の上にいる間はいつでも笑っていいですよ。と、そんな気分空気にするのが小痴楽さん。観客からは、息を吐くように笑い声が出てくる。
道楽者の若旦那の役がよく似合う。本当良く似合う。しょうもなければしょうもない程良く似合う。
居候先からも疎まれ、湯屋に奉公に来た若旦那。この仕事もあの仕事も嫌、初日から番台に乗りたいと駄々をこねる。少しの間の留守番で念願の番台に上がるが女湯には誰もいない。ここから若旦那の壮絶な妄想が広がっていく。本人は至って真面目に妄想をしているつもりだろうが、聞いてるこっちはおかしくて仕方ない。あそこまで妄想にのめり込める若旦那の才能、少々羨ましい。


入船亭扇辰-妾馬

  • 入船亭扇辰師匠

    入船亭扇辰師匠

「昔は人間の身分にも階級というものがございまして」
枕をほとんど話さず、扇辰師匠が静かに始めたのは妾馬だった。興奮と緊張でピリつく心の中を、ゆっくり八五郎がその色と世界を広げてゆく。
妹のお鶴が大名の子、しかも男の子を産んだ。これはこれは、大出世だ。八五郎はお呼ばれされた屋敷を尋ねるが、大名への酷い言葉遣いで家老から何度も注意を受ける。無礼な話し方をする八五郎にヒヤヒヤ、でもまたそれが気持ちよくってね。
いつもは飲まない高価な酒に酔い、見つけたお鶴に八五郎は思いの丈をぶつける。後半の娘を思う母の気持ち、妹を思う兄の気持ちが痛いほど伝わる扇辰師匠の演技力に圧倒され、しばらく動けない私がいた。

【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」5/11 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
写真の無断転載・無断利用を禁じます。