渋谷らくごプレビュー&レビュー
2018年 5月11日(金)~15日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
寄席や落語会、どの順番で入っても、求められる仕事をこなしてお客様を常に満足させつづける匠。どんなに聴いても飽きない、たっぷり聴いても疲れない、ぼんやり聴いてても楽しめる。そんな職人技を繰り広げる三遊亭遊雀師匠が、5月の渋谷らくごのトリで出演してくださいます。
各団体で活躍する注目の二つ目さんが揃いました!鯛好さんは渋谷らくご初出演です。
▽三遊亭鯛好 さんゆうてい たいこう
40歳で入門、芸歴9年目。2013年2月に二つ目昇進。年上の女性がタイプとのことで、八千草薫さんまでストライクゾーンとの噂がある。中日ドラゴンズ好き。ロックがものすごく好きとのこと。
▽柳亭市童 りゅうてい いちどう
18歳で入門、芸歴7年目、2015年5月二つ目昇進。悪い誘いをうけてラップをはじめたが、天才的な才能を発揮しているらしい。カラオケの3時間コースを利用して稽古をしているので、受付の店員さんに「3時間コースの人」と顔を覚えられてしまっている。
▽立川笑二 たてかわ しょうじ
20歳で入門、芸歴7年目、2014年6月に二つ目昇進。沖縄出身の落語家。お酒を飲んでいない日、寝る前に現代文の問題を解いている。飲み会に参加することが多いが、気付くと寝てしまっている。深夜映画館で映画を観ることがおおい。
▽三遊亭遊雀 さんゆうてい ゆうじゃく
23歳で入門、芸歴31年目、2001年9月真打ち昇進。文部科学省のYoutubeチャンネル「かがやく先輩からのメッセージ」に出演。私服がおしゃれ。この時期は半袖Tシャツに、ジーンズ。背が高い。メガネをおでこにかける癖がある。
レビュー
5月15日(火)20:00~22:00 「渋谷らくご」
三遊亭鯛好(さんゆうてい たいこう) 「鈴ヶ森」
柳亭市童(りゅうてい いちどう) 「寝床」
立川笑二(たてかわ しょうじ) 「猫の忠信」
三遊亭遊雀(さんゆうてい ゆうじゃく) 「御神酒徳利」
「どうしようもないわたしが歩いてゐる」
五月はもやもやしている時期である、世間で言うところの五月病という状態であろうか。毎日を丁寧に生きているつもりなのだけれども、どこか自分はこのままではいけないのではないかと藻掻いている、ごぼごぼ。
そんな時期でも、いやそんな時期だからこそ、落語は私の気持ちに寄り添ってくれる。落語に出てくる登場人物は、どいつもこいつもどうしようもない面々ばかりだ。けれどもそんな人々はどこか楽しそうに生きている。彼・彼女たちの物語を味わう時間は、どうしようもない自分も、ただこの世界の片隅で生きていいのだという気持ちになる。
今日も私は渋谷の片隅でそんなもやもやを抱えながら、ふんわりとした椅子に身体を沈めている。出囃子が聞こえてきた、目を開けよう、新しい世界を見よう。
三遊亭鯛好「鈴ヶ森」
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三遊亭鯛好さん
落語に出てくる泥棒は、とんでもない仕事をやってのける大泥棒でも、困っている人を助けてまわる義賊でもない。どこか憎めない身近な泥棒、B級ニュースの登場人物だ。
「鈴ヶ森」に出てくるのも、そんなどうしようもない見習いの泥棒。親分からお前はドジばかりだから泥棒を辞めたほうがいいと言われ、これからは心をいれかえて真面目に悪事に励むと宣言する。やはりどうしようもない。
けれどもそんな泥棒を見捨てるのではなく、じゃあしょうがないと追い剥ぎに一緒に行こうと誘う親分。「ちゃんと戸締りをしろよ、泥棒が入るといけないから」と、親分もなかなかの人物である。この子分にして、この親分あり。
やってくる旅人を脅かすセリフも上手く覚えられず、座ればたけのこが刺さってしまう。あぁどうしようもないなぁ、と笑いながら見ているうちに徐々に気持ちがほぐれてくるのを感じた。
柳亭市童「寝床」
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柳亭市童さん
自分は好きだけれども、周りの人にとって迷惑なことは数多くある。「寝床」に出てくる旦那は義太夫が大好きなのだが、とても下手だ。どうしようもない人であり、かつ権力を持っているとはなかなか困る。
私が思わず共感してしまうのは、そんな旦那が大家の長屋に住む無名の人々だ。なんとかして義太夫に行かなくて済むような理由を、日頃から考えているのではないだろうか。
急に大量の注文が入ったからと断る提灯屋さん。
無尽があるからと断る金物屋さん。
奥さんが臨月だからと断る小間物屋さん。
大量の生揚げとがんもどきを作るからと断る豆腐屋さん。
すぐに嘘だと気付かれてしまっても仕方ないような言い訳で、とりあえず今回はごまかそうとする人々。その言い訳を聴きながら旦那さんは、がっかりしたり、少し疑念を抱いたり、そしてついには怒ってしまう。市童さんの少しずつ変化を加えていく表情を見ていると、そんな旦那の心情が伝わってくるようだ。
奉公人であっても勘弁してほしい気持ちは同じである。「あの旦那、義太夫さえなければねぇ、、、」と普段から話していそうだ。二日酔い・脚気・眼病・屋根から落ちて怪我など、思いつく限りの理由が並ぶ。
それでもあまりに怒ると周りの人は気を遣わなければならない。案外私も周りからはそのように扱われているのではないだろうか、お前は長屋に住む人々ではなく旦那だよと。気をつけよう、うん。でも好きなんだもん。
立川笑二「猫の忠信」
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立川笑二さん
自分もお稽古事の噺をと「猫の忠信」へ。美人のお師匠さんのところに、ひょっとするとあれがなにするのではないか、という大望を抱いて通う次郎吉と六兵衛の二人。実にどうしようもない人たちだ、でもその気持ちは十二分にわかる。そしてその願いは叶わないことも。
そんなある日のこと、お師匠さんと兄貴分の常吉がいちゃついている場面を目撃してしまう。しかも「あったかいお刺身」プレイである。私は『モテキ』に出てくる水の口移しをする場面にかなりグッときたのだが、それよりも数段上のレベルのプレイである。
実際の映像ならばかなりのいちゃつき方だが、頭に浮かぶ映像は気持ち悪さよりもバカバカしくカラッとした雰囲気。笑二さんの人柄がそんなところに表れているのだろう。
そんないちゃいちゃする展開がずっと続くどうしようもない物語なのかと思えば、後半はいったいどういうことなのかとグイグイと展開に引き込まれていく。いったい誰が「ぴょこぴょこ」なのか、でもかわいいぞ「ぴょこぴょこ」。
ホッとするような、ゾッとするような、いい話のようで、どこか不思議な後味の残る物語の世界だった。私の周りにもひょっとして「ぴょこぴょこ」がいるかもしれない、耳を触って確認したほうがいいかもしれない。
三遊亭遊雀「御神酒徳利」
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三遊亭遊雀師匠
家宝にしている葵の紋が入った一対の御神酒徳利、大掃除の最中に危ないからと水瓶のなかに沈めたままうっかり忘れてしまう番頭さん。無くなったと大騒ぎになっても思い出さずに、家に帰って水を飲もうとしたときにハッと思い出す。なかなかのどうしようもない人間である。
素直に謝らずに占いでもって自分の失敗をチャンスに変えようとする姿勢は、これまたなかなかのどうしようもなさである。けれどもあれよあれよと物語は上手い方、上手い方へと転がっていく。
そんな物語の世界へと誘ってくれる遊雀師匠の魅力は、何といっても表情と間合いである。こちらの気持ちがグーッと引っ張られて切れてしまうのではないかというギリギリのところで、パッと放されるような間合いの妙。そこにあのニヤリとするような多様な表情や、こちらが来るであろうと身構えているのとは異なる声色の変化が加わる。
大袈裟で劇的な何かがあるわけではないのに、思わずケラケラと笑ってしまう。そこにあるのはもうお腹いっぱいで疲れてしまったと感じる笑いではなく、いくら食べても別腹でするすると入ってくるような笑いだ。さすがだぜ遊雀師匠。
気持ちのよい夏の始まりの匂いがした夜の渋谷。
四者四様の楽しさを抱えてほあほあした気持ち。
明日も何かいいことがありそうな気配がした。
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「渋谷らくご」5/15 公演 感想まとめ
写真:渋谷らくごスタッフ
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