渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 5月11日(金)~15日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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5月13日(日)17:00~19:00 柳家わさび 橘家文蔵 桂春蝶 瀧川鯉八

「渋谷らくご」爆笑落語会

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プレビュー

 とにかく落語に触れるのならば、最初は笑いたい。そういう人のためにあるような会です。 
 欧州ツアー目前のわさびさん、文蔵師匠は訥々と語るなかに味がにじみ出てくる古典落語、上方落語の春蝶師匠はこれでもかというほどマクラから圧倒してくれます。最後は 渋谷らくご大賞 瀧川鯉八さんが、ほかとは一風変わった現代落語で楽しませます!

▽柳家わさび やなぎや わさび
23歳で入門、芸歴14年目、2008年二つ目昇進。痩せ形で現在の体重は52kg。橘家文蔵師匠と欧州へ落語ツアーをしにいく。文蔵師匠から「5月から6月あたりスケジュール空けておいて」と唐突に言われたので、欧州に行く詳細を知らなかった。

▽橘家文蔵 たちばなや ぶんぞう
24歳で入門、芸歴30年目、2001年真打昇進。ツイッターで、朝ご飯や酒の肴など、日々の料理をつぶやいている。最近つくった料理は「オイスターソース豆板醤ニンニク花山椒使った中華風焼うどん」。5月下旬から1ヶ月間橘家文蔵欧州落語公演ツアーが開催される。

▽桂春蝶 かつら しゅんちょう
19歳で入門、芸歴23年目、2009年8月、父の名「春蝶」を襲名する。積極的にツイートをしている。学生時代の吉岡里帆に落語を教えていた。私服が素敵で、シブラクTシャツも素敵に着こなしてくださる。このゴールデンウィークでは、ご家族で茶摘みをされた。

▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。2017年第三回渋谷らくご大賞「おもしろい二つ目賞」受賞。NHKBSの「六角精児の呑み鉄本線日本旅」にハマっている。ご飯やうどんをたくさん食べても、すぐにパンケーキやパフェを食べたくなる傾向がある。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@dejidj2016 (シンガポール育ち。落語については、まだまだ勉強中。国立演芸場で開催中の展覧会「悪を演る-落語と講談」は面白かったです!)

5月13日(土)17時~19時「渋谷らくご」
柳家わさび(やなぎや わさび) 「黄金の大黒」
桂春蝶(かつら しゅんちょう) 「野崎詣り」
橘家文蔵(たちばなや ぶんぞう) 「馬のす」
瀧川鯉八(たきがわ こいはち) 「長崎」

プレビューの「爆笑落語会~とにかく落語に触れるのならば、最初は笑いたい!」というのを見て、既に興奮して笑ってしまいました。人情噺や怪談も良いけれど、やっぱり落語は爆笑したい!今日は腹筋が痛くなること覚悟です。ヨガの先生によれば、絶世の美女で知られる古代インドの王妃も、美容と健康の為に爆笑していたらしいですよ。

柳家わさびさん「黄金の大黒」

  • 柳家わさびさん

    柳家わさびさん

「石橋を叩いても渡らない」ほど慎重派だという、わさびさん。でも、もうすぐ文蔵師匠と欧州公演に行かれるとのことで、実は結構チャレンジャー?
今日のお噺の舞台は長屋。黄金の大黒様が見つかったお祝いにおよばれした長屋の住民は、一枚の羽織を取り合ったり、大家さん宅では慣れない口上を述べたり大騒ぎ。登場人物は男性ばかりですが、それをメリハリつけて演じ分けるわさびさん。先月「転宅」でエロいお妾さんを演じ、女性の演技は難しいだろうなぁと思ったばかりですが、今回の様に男性ばかりを演じる方がもっと難しそう。でも、脳内でちゃんと熊さんや彦兵衛さんの表情をビジュアル化出来るから面白い。さすがわさびさん。
さて、ヨーロッパの人達は落語をどう感じるでしょう?英語版のチラシに「Ultimate one man comedy 」とあるように、一人の演者が何人もの役を演じ分ける演芸は珍しいかもしれません。演劇のモノローグとも又違って、とても魅力的に感じると思います。
ロルカの詩やフラメンコにハマっている日本人も大勢いるのだから、海外で落語にハマる人が続出するかもしれませんね。日本のどこか地方でフラメンコの会が催されているように、いつかレイキャビクに落研が出来て、アイスランド人だけの落語会が開かれるかもしれません。(既にあったら、ごめんなさい)

桂春蝶師匠「野崎詣り」

  • 桂春蝶師匠

    桂春蝶師匠

マクラから飛ばす春蝶師匠。落語家に旅はつきものとのことで、のっけから旅先でのオモシロ話が炸裂です。漁港での落語会では高座の横でマグロの解体ショーが行われ、沖縄では打ち上げにエセ陰陽師が来て大騒ぎ。ここまでで既に笑いすぎで腹筋が痛くなります。
本編は、5月にぴったりな上方のお噺「野崎詣り」。春団治師匠のネタだそうです。野崎詣りは大阪に実在する伝統行事で、毎年ゴールデンウィーク辺りに開催されるようですよ。
このお祭では互いに悪口を浴びせ合う口喧嘩が恒例、勝ったらその年の運がいいという運試しをするというワイルドさは、さすが大阪。登場人物達が次々に喧嘩をふっかけて行く様子が、もう爆笑モノです。
春蝶師匠は、軽やかな関西弁、テンポ、仕草や表情など総動員で、全力で笑わせて下さいます!後方にいた私には、前方の人々が皆お腹をよじって悶絶し蠢いている様子が見えて、正に笑いの地獄絵図のようでした。もう、堪忍して~(笑)。

橘家文蔵師匠「馬のす」

  • 橘家文蔵師匠

    橘家文蔵師匠

Master Bunzo は欧州公演で英語字幕付き「芝浜」を演じられるそうです。ボテフリやカケトリは英語で何と言うのでしょう?また、ストーリー通りに進めば良いけれど、映画と違ってアドリブの時は?、というのが字幕版の悩ましいところです。
今回のお噺では、お酒を飲みながらのらりくらりと世間話をするくだりで、時事ネタなどのアドリブが炸裂します。こんなところが文蔵師匠、チャーミング!
釣好きの男、テグスがダメになって困っていると馬方が通りかかります。馬を木につないで「ちょっとの間、見張りをお願いします」と頼んで行ってしまいました。馬の尻尾が丈夫そうなので、釣糸代わりに3本頂戴したところに、友達が登場。馬の尻尾を抜いたと聞くと「えれえことをした!馬の尻尾を抜いたらどういうことになるか知らないな~?」と脅します。不安になって、教えてくれと頼むと「酒をご馳走してくれれば教えてやる」と条件をつけます。
ところで、文蔵師匠の「のめる」や「青菜」などを観たことがありますが、師匠のお酒を飲む演技は素晴らしい!今回は「上等の辛口のお酒」に「塩のきいた茹でたての枝豆」!クックッ、プハーとお酒を味わい、ハフハフと枝豆をつまみます。本当に美味しそう。
さて、大谷選手の活躍や麻生財務相とセクハラ事務次官についてダラダラ世間話をしながら、お酒はのみ放題、枝豆は食べ放題。なかなか本題に入らないので男が怒り出すと、「では教えてやる!馬の毛を抜くとな~」。
さて、どんな恐ろしい祟りでしょう?最後は笑いの渦でした!
ちなみに「馬のす」とは「馬尾毛、馬の尻尾の毛。馬巣織、釣糸などに用いる(by 広辞苑)」だそうです。

瀧川鯉八さん「長崎」

  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん

さすが渋谷らくご大賞受賞者。
鯉八さんの「長崎」は名作です!好きな人と旅行に行きたくなります。
ちなみに鯉八さんのお祖父様は今年百歳で大往生。大変なモテ男で彼女が大勢いたそうです(隔世遺伝はある!?)「長崎」に出てくる男性は、お祖父様がモデルでしょうか?こういう優しくひょうきんで可愛らしい人が、一番モテるのかも。。
元カノと以前長崎に来たことを隠せないウッカリ者のモテ男と、嫉妬しながら旅行を楽しむ彼女。不思議なストーリーなのに頭の中でリアルに映像化出来るのが魅力的です。「次の年もまたその次の年も長崎に来よう!」いう二人は、年を取ってどんな夫婦になったのでしょう?と考えたら、韓国映画の「あなた、その川を渡らないで」を思い起こしてしまいました。
聴き終わった後は、私も本当に長崎に行ってみたくなりました!トルコライスやチャンポンも食べてみたい!お噺に出てくる中華街の「江山楼」、思案橋の「ツル茶ん」は、ぐるなびでチェック済み。今夏は本気で長崎旅行を計画しようかな。

雨の日曜日なのに、大入り満員!さすが人気者の力です。今日の演者さん達のお着物は、5月らしく若草色を基調にしたコーデ。爆笑の中にも色気あり。やっぱり落語って、素敵!
わさびさん&文蔵師匠の欧州公演のご成功もお祈り致します!

【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」5/13 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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