渋谷らくごプレビュー&レビュー
2018年 6月8日(金)~12日(火)
開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。
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プレビュー
落語、と一口にいっても、古典一筋の人から、創作をメインとする人、さらには演者の個性によって演出や工夫があり、おなじ芸能でもまるでちがった味わいのものになります。
古典芸能というと、だれがやっても大きな違いはないのだろうと思われてしまいがちですが、そんなことはありません。
落語はどんな個性をも飲み込みながらも、ジャンルとしての輪郭を失いません。そんなことを体験していただける、カオスな会ともなるでしょう。なにが飛び出すかわからないドキドキに溢れる回です。
▽柳亭市童 りゅうてい いちどう
18歳で入門、芸歴8年目、2015年5月二つ目昇進。悪い誘いをうけてラップをはじめ、ついにお寺でラップ公演をおこなう。カラオケの3時間コースを利用して稽古をしているので、受付の店員さんに「3時間コースの人」と顔を覚えられてしまっている。
▽春風亭百栄 しゅんぷうてい ももえ
年を取らない妖精のような存在。静岡県静岡市出身、2008年9月真打ち昇進。
不思議な風貌で、危ないネタをかけつづている。落語協会の野球チームでは、名ピッチャーとして活躍する。
アメリカで寿司職人のバイトをしたことがある。猫が大変お好きという意外は日常生活の様子を見せない。
▽昔昔亭桃太郎 せきせきてい ももたろう
20歳で入門、芸歴53年目、1980年10月真打ち昇進。落語界の破壊者ともいえるべき圧倒的な存在感。読書好きでもあり、知識量も豊富。時間があるときは、高級な服を来て帝国ホテルのロビーでぶらぶらすることでステータスをあげているとのこと。
▽立川寸志 たてかわ すんし
44歳で入門、芸歴7年目、2015年二つ目昇進。2017年渋谷らくごたのしみな二つ目賞受賞。緊張を楽しめる性格。渋谷らくごに出演するときは自分なりのテーマをツイッターで公開する、今回のテーマは「この流れで俺ができることはーーーーーほぼない」
レビュー
柳亭市童(りゅうてい いちどう) 「高砂や」
春風亭百栄(しゅんぷうてい ももえ)「引越しの夢」
昔昔亭桃太郎(せきせきてい ももたろう)「春雨宿」
立川寸志(たてかわ すんし)「井戸の茶碗」
「偶数月のおたのしみ」
無事夏場所も終わり、平和な偶数月。そうです。今月は相撲がないのです。でも、だからと言って相撲ファンは暇しているわけではないのです。今場所の振り返りと来場所の展望を考えるのです。落語も相撲も好きな人は多いと思いますが、贔屓の力士に似た噺家さんを探すのも、偶数月の楽しみ方のおススメです。
柳亭市童さん「高砂や」
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柳亭市童さん
噺家さんで甥っ子にしたいランキング上位の市童さん。登場した瞬間にもう可愛い。でも、可愛い風貌をしてるのに、気安く私なんぞが可愛いとか言ってはいけなさそうなくらい落語は凄い。この後に出てくる噺家さんたちの個性がヤバめなのに対し、真っ向勝負の正統派という個性でぶつかっています。ぱっと見すごく可愛いので、落語の登場人物によくいるヘラヘラ失礼なことを言う憎めない奴がバチっとハマるんですが、貫禄のあるおじさん的なキャラクターもなぜかバチっと合うんですよね。可愛さがどっかいってしまう。市童さんの落語はそんな百面相的な楽しみ方もできてしまう。1つネタを観るたびに、他に観てみたいネタがゴロゴロ。次は何が観れるかなぁ。
春風亭百栄師匠「引っ越しの夢」
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春風亭百栄師匠
そんな玉鷲のように、地球上に存在しているだけで嬉しくなるのが百栄師匠。百栄師匠はそんなにキャラを演じ分けしている感じではないのですが、突き押し相撲だけなのに飽きずに楽しい玉鷲の相撲のように、登場人物の全員がまんま百栄師匠なのが絶妙にいい。けっこう百栄師匠観ていると思っていたんですけど、古典を観たのはこれが初めて。設定はもちろん江戸とか明治とかでしょうけど、百栄師匠の前では時代とかどうでもよくて、新作だ古典だという区別も関係ない。噺の中で時折見せるニタっとした変態っぽい表情がたまらなく、百栄師匠を存分に楽しめました。いや、もっと百栄師匠の古典観てみたいなぁ…。
昔昔亭桃太郎師匠「春雨屋」
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昔昔亭桃太郎師匠
そんなベテランゆえの脱力。桃太郎師匠のボヤきながらお茶を飲む姿はそんな脱力です。ただお茶を飲んでいるだけなのに何故か凄く面白い。で、本編に入るとやっぱり凄い。肩肘張らずに観れるのに引き込まれる。あぁ、これがベテランの技なんだなぁ…と思っていました。思っていたんですけどね。噂に聞いていたツイストが始まりました。ずっとツイッターで何だろうと思ってたんですよ。いや、意味わかんないでしょ。高座とツイスト、ひとつも結びつかない。でも今回ようやく謎が晴れました。もうなんかよくわからないけど、桃太郎師匠素敵すぎることだけは確かです。
立川寸志さん「井戸の茶碗」
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立川寸志さん
横綱の取組ってちょっと真っ直ぐな見方ができなくて、勝てば勝ったで当たり前。それが続けば強さが憎くなり、負けたら負けたで横綱なのにとしょぼくれ、横綱らしくない勝ち方をすれば批判をする。そんなワガママな見方をしてても、千秋楽はただ頂点に立つ者同士の戦いを純粋な気持ちで見られるのです。
寸志さんの「井戸の茶碗」は、例えるならそんな横綱相撲。多分今後「井戸の茶碗」をもっと気楽に楽しめる気がしています。「このネタならこの噺家さん!」って自分にとっての相性がありますが、「井戸の茶碗」は寸志さんでキマリです。
【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」6/9 公演 感想まとめ
写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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