渋谷らくご

渋谷らくごプレビュー&レビュー

2018年 6月8日(金)~12日(火)

開場=開演30分前 / *浪曲 **講談 / 出演者は予告なく変わることがあります。

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6月10日(日)17:00~19:00 台所おさん 雷門音助 柳家小八 瀧川鯉八

「渋谷らくご」瀧川鯉八を味わう

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プレビュー

◎この公演では、鯉八さんのCDを発売します。

 今月のこの公演から「瀧川鯉八 渋谷らくご名演集」を販売します。その発売を記念して鯉八さんトリ公演。
 創作落語の歴史は、この男の出現によって書き換えられた! 幾多のシーンでインパクトを残し続ける鯉八落語を堪能してください。
 そして、こうした才能の前には、むしろ古典の本格派、個性派を、ということで、おさん師匠、音助さん、小八師匠というホンモノをぶつけてみました。普段揃わないメンバー。渋谷らくごならではの公演です。お楽しみに!

▽台所おさん だいどころおさん
31歳で入門、芸歴17年目、2016年3月真打ち昇進。最近まで、お財布とスイカをもっていなかった。小銭はポケットに押し込んでいたため、ポケットがパンパンに膨らんでいた。曜日感覚を日々失ってしまうようで、ツイッターでの告知がよく間違っている。

▽雷門音助 かみなりもん おとすけ
23歳で入門、芸歴6年目、2016年2月二つ目昇進。私服はチェックシャツを着こなし。レトロで可愛らしい眼鏡をかけている。先日舟漕ぎ体験をしたが、アマチュアとは思えないほどの手付きで櫓を操り船を動かした。

▽柳家小八 やなぎや こはち
25歳で柳家喜多八に入門、芸歴16年目、2017年3月真打ち昇進。最近IQOSからプルームテックに変えた。ファッションにこだわっていて、この時期は白いTシャツを着こなす。高座前はモンスターを飲んで集中する。

▽瀧川鯉八 たきがわ こいはち
24歳で入門、芸歴11年目、2010年二つ目昇進。2017年第三回渋谷らくご大賞「おもしろい二つ目賞」受賞。6月10日(日)17時公演から渋谷らくごオフィシャルCD「瀧川鯉八 渋谷らくご名演集」が販売開始。いいことがあると紹興酒を飲む。

レビュー

文:とも朕 Twitter:@dejidj2016 (シンガポール育ち。最近、落語以外で面白かったイベント:EUフィルムデース、文化庁メディア祭)
6月10日(土) 17時~20時 「渋谷らくご」
台所おさん (だいどころ おさん) 「笑い茸」
雷門音助 (かみなりもん おとすけ) 「三枚起請」
柳家小八 (やなぎや こはち) 「井戸の茶碗」
瀧川鯉八 (たきがわこいはち) 「ぷかぷか」

古典の本格派 VS 創作の個性派
プレビューに「創作落語の歴史は、この男の出現によって書き換えられた!」と紹介された鯉八さん。レジェンドになりつつあります。彼の作品は100年後の古典になるでしょうか?
そして、この方にあえて「古典の本格派、おさん師匠、音助さん、小八師匠をぶつけてみました!」というラインナップ。どんな化学反応が起きるか、超楽しみです。

台所おさん師匠「笑い茸」

  • 台所おさん師匠

    台所おさん師匠

毎月「癒しをお届け」してくださる師匠。今日もいきなり、「いきなりステーキ」の話題でスタートです。以前はドトールコーヒーが頻繁にマクラに登場したとか。難しい政治や時事問題よりも身近な出来事をマクラで話す方が好き、とのこと。既に会場が和んで、クスクス笑いの渦です。
お噺は、生まれてから一度も笑ったことがない仏頂さんが登場(仏頂面の語源でしょうか?)。結婚歴30年で一度も夫の笑顔を見たことがないと心配したおかみさんは、くすぐったり、寄席で覚えた小噺を聞かせたり、色々工夫したけど全てダメ。医者に相談すると笑い茸を煎じてくれます。これを飲まされた仏頂さん、嫌でも笑ってしまう。笑う門には福来る、というので富まで降り注いで来るので、天界が貧しくならないようにお天道様も月も星も負けずに笑う、という何とも絵本のような可愛らしいお噺でした。
おかみさんが仏頂さんをあの手この手で笑わせようとする姿に、今公開中の映画「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています」の榮倉奈々さんを重ねてしまいました。旦那さん思いの妻はけなげですね。癒し系の師匠にぴったりのお噺でした。

雷門音助さん「三枚起請」

  • 雷門音助さん

    雷門音助さん

「夏用に呂の着物を出した途端に今日は寒くなって」と、梅雨の時期は何を着て良いか分からないという音助さん。オシャレで素敵ですが、お風邪をひかれないように。。
さて、お噺のポイントとなる起請文とは、客と遊女との間で交わされた「年季明けに結婚することを約束する」という文書だそうです。擬似的な書類でどれぐらい効力があったのか分かりませんが、それを客に渡すということが「私には貴方だけ❤️」というジェスチャーだったのかもしれません。それを複数の男性に配ってしまうと、大変なことになります。
男3人が同じ花魁から起請文を持っていたことが発覚!ああ、修羅場。「遊女がこれを書くのは客を多く取るためであり、本気にしてはいけなかったのか~」と悔しがります。男達は遊女と対決しに行くのですが、相手はプロ。口の上手い悪女相手に、手玉に取られてあたふたする男達の様子が、とっても可笑しくて見物でした。音助さんのエロ悪い花魁の演技が、ズルそうでワルそうで最高でした!
「江戸にはカラスが多かった」といマクラは「?」でしたが、最後に「なるほどねー」となるサゲでした。

柳家小八師匠「井戸の茶碗」

  • 柳家小八師匠

    柳家小八師匠

ちょっとディーン・フジオカ似の、カッコいい小八師匠。
今日のお噺は、正直者のくず屋さんが登場。マクラでは、くず屋さんや猫の蚤取り屋さんなど現代にはもうない商売の説明がありました。猫の蚤取りは、公開中の映画「蚤取り侍」で阿部寛さんが演じてますね。
さて、正直者のくず屋・清兵衛さんは、長屋で美しい娘に呼び止められ、その父である浪人・卜斎から仏像を200文で買い受けます。その仏像は細川邸の若侍・高木に買い取られたものの、仏像の中から、なんと50両が出てきてしまいます!卜斎も高木も頑として受け取らないのですが、その解決策として渡した茶碗が、さらに「井戸の茶碗」という世の名器で300両になってしまったので大騒ぎ。
登場人物は全員正直、全員善人。まるで「全員悪人」で知られるタケシの映画「アウトレイジ」の真逆ですね。出てくる人が皆、正直で真面目で優しい。そして最後はハッピーエンドで丸く収まります。人が幸せになるお話は大好きです!
印象としては、お客さんの板挟みになって困るクズ屋さんの様子がコミカルで、全体的にポップで軽やかな分かりやすい一席でした!心が和みました。

瀧川鯉八さん「ぷかぷか」

  • 瀧川鯉八さん

    瀧川鯉八さん

「瀧川鯉八 渋谷らくご名演集」CD 発売、おめでとうございます。これから雨の季節、室内での楽しみにグッドタイミングですね。私の好きなお噺「長崎」も収録されてます。先月の渋らくで聴いて、本気で長崎に行ってみたくなりました。
鯉八さんご自身も落語のCDを聴くのがお好きで、特に衝撃を受けたのは、春風亭柳好師匠(川崎の柳好師匠)の「牛ほめ」や「付き馬」だそうです。私も聴いてみたい!CDは一生の宝物になりますね。
さて、鯉八さんの今日のお噺は、「なーんか、良ーいこと、なーいかなー(ラップ調)」と言い続けているだけで大成功(?)しちゃう男が主人公。Happy Go Luckyなサクセス・ストーリーかと思ったら、最後にどんでん返しが!こんな男いそうでいない、突拍子もないけど何か身近な、思い付きそうで思い付かない、こんなお噺を創作できる鯉八さんは天才ですね。
なお、今回のCDには収録されてませんが、鯉八さん作品の中で「ダイナマイト!」というファンキーなお噺が好きです。またいつか演じて頂きたいです(ファンクミュージック付で)!

【この日のお客様の感想】
「渋谷らくご」6/10 公演 感想まとめ

写真:武藤奈緒美Twitter:@naomucyo
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